# エピソード105 ## 「結果発表までの日々」
# エピソード105
## 「結果発表までの日々」
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新人賞に応募してから一週間。
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恒一は気付いた。
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「暇だ……」
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本当に暇だった。
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締切前は毎日原稿。
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寝ても覚めても原稿。
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夢の中でも原稿。
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そんな生活だった。
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それが突然終わった。
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仕事が終わる。
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帰宅する。
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机に座る。
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そして。
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「何しよう」
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完全に燃え尽きていた。
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その頃。
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夏音も同じだった。
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『先生』
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『暇です』
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『俺もだ』
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『助けてください』
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『俺も助けてほしい』
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二人とも重症だった。
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しかし。
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時間が経つにつれ。
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少しずつ不安が顔を出し始める。
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応募から一か月後。
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学校帰り。
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図書室。
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夏音は本を開いていた。
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だが。
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全然読めていない。
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「どうした?」
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恒一が聞く。
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夏音は苦笑した。
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「結果が気になって」
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「まだ早いだろ」
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「分かってます」
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分かっている。
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でも気になる。
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受賞したら。
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落ちたら。
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色んな未来が頭をよぎる。
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恒一も実は同じだった。
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夜になると。
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つい新人賞のことを考えてしまう。
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スマホを見る。
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メールを確認する。
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何も来ていない。
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当たり前なのに。
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何度も確認してしまう。
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そして。
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二か月後。
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ある日。
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黒川から電話が来た。
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恒一は心臓が止まりそうになった。
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「もしもし!?」
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黒川は少し驚く。
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「元気ですね」
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「結果ですか!?」
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「違います」
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「違うんですか」
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一気に力が抜けた。
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黒川は笑った。
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珍しく笑った。
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「まだです」
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「ただ」
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「一つ言っておきます」
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恒一は息を飲む。
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「はい」
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「結果がどうであれ」
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「今回の挑戦には価値があります」
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静かな声だった。
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編集者として。
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本心から言っている声。
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「ありがとうございます」
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恒一はそう答えた。
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電話を切った後。
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少しだけ肩の力が抜けた。
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その夜。
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夏音にもその話を伝えた。
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すると。
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しばらく沈黙。
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そして。
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『黒川さん』
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『優しいですね』
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『ああ』
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『でも』
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『私』
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メッセージが続く。
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『やっぱり受賞したいです』
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恒一は笑った。
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『俺もだ』
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『絶対です』
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『絶対だな』
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その言葉に。
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嘘はなかった。
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そして。
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三か月目。
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秋。
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木々が少し色付き始める頃。
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ある日の放課後。
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図書室。
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夏音は窓際で原稿を書いていた。
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恒一は仕事をしていた。
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いつも通りの時間。
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いつも通りの日常。
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だけど。
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何かが少し違っていた。
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二人は気付いている。
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一緒にいる時間が。
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以前より増えていることに。
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自然と隣にいることに。
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それが当たり前になり始めていることに。
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夏音がふと顔を上げる。
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「先生」
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「ん?」
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「結果発表の日」
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「うん」
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「もし」
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少しだけ笑う。
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「受賞してもしなくても」
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「一緒にいてくださいね」
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恒一は驚いた。
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だが。
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すぐに笑う。
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「約束しただろ」
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夏祭りの夜。
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あの日の約束。
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夏音も思い出したのか。
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嬉しそうに笑った。
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「そうでした」
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窓の外。
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秋風が吹く。
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そして。
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運命の日は。
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もうすぐそこまで来ていた――。
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### 次回
# エピソード106
## 「運命の電話」
新人賞結果発表当日。
鳴り響く一本の電話。
その瞬間。
二人の人生が大きく動き出す――。




