表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
95/101

# エピソード104 ## 「新人賞の夜」

# エピソード104


## 「新人賞の夜」


---


締切当日。


---


午後十一時二十分。


---


恒一の部屋。


---


静かだった。


---


聞こえるのは。


---


キーボードを叩く音だけ。


---


カタカタカタ――


---


画面には。


---


『79,862文字』


---


あと少し。


---


あと少しで終わる。


---


だが。


---


一番難しいのは最後だった。


---


物語の締め。


---


主人公が最後に何を言うのか。


---


何を選ぶのか。


---


その一行が決まらない。


---


恒一は目を閉じた。


---


考える。


---


考える。


---


考える。


---


そして。


---


ふと。


---


ある顔が浮かんだ。


---


夏音。


---


初めて出会った日。


---


泣きながら原稿を見せてきた少女。


---


夢を諦めかけていた少女。


---


そして今。


---


誰よりも夢に向かって走っている少女。


---


恒一は小さく笑った。


---


「そういうことか」


---


指が動く。


---


最後の文章を書く。


---


そして。


---


画面に表示された。


---


『80,001文字』


---


完成。


---


恒一はしばらく動けなかった。


---


信じられなかった。


---


何年も。


---


何年も書きたかった物語。


---


途中で諦めた夜もある。


---


原稿を閉じた日もある。


---


もう無理だと思った日もある。


---


それでも。


---


今。


---


終わった。


---


その瞬間。


---


スマホが鳴る。


---


夏音だった。


---


『先生!!』


---


メッセージが飛んでくる。


---


『終わりました!!』


---


恒一は思わず笑う。


---


『俺もだ』


---


数秒後。


---


電話がかかってきた。


---


出る。


---


「先生!!」


---


開口一番。


---


大声だった。


---


「終わりましたあああ!!」


---


「知ってる」


---


「完成しました!!」


---


「知ってる」


---


「やりました!!」


---


「知ってるって」


---


夏音は興奮していた。


---


完全に興奮していた。


---


だが。


---


恒一も同じだった。


---


少しだけ。


---


声が震えている。


---


「夏音」


---


「はい」


---


「お疲れ」


---


電話の向こう。


---


少し静かになる。


---


そして。


---


「先生も」


---


優しい声だった。


---


「お疲れさまでした」


---


その言葉だけで。


---


胸が熱くなった。


---


時刻。


---


午後十一時五十五分。


---


締切五分前。


---


二人はそれぞれ。


---


応募フォームを開く。


---


作品名。


---


名前。


---


確認。


---


添付ファイル。


---


問題なし。


---


送信ボタン。


---


あと一回押せば終わる。


---


だが。


---


なぜか指が止まる。


---


怖かった。


---


夢だから。


---


本気だから。


---


結果が怖い。


---


落ちたらどうしよう。


---


笑われたらどうしよう。


---


そんな不安が押し寄せる。


---


その時。


---


電話の向こうで。


---


夏音が言った。


---


「先生」


---


「ん?」


---


「一緒に押しませんか」


---


恒一は笑う。


---


「子供か」


---


「大事なんです」


---


「はいはい」


---


二人は画面を見る。


---


深呼吸。


---


そして。


---


「せーの」


---


カチッ。


---


送信。


---


送信完了。


---


その文字が表示された。


---


終わった。


---


本当に終わった。


---


数秒。


---


二人とも何も言わない。


---


そして。


---


夏音が泣き始めた。


---


「終わったぁ……」


---


安心した涙だった。


---


恒一も目頭が熱くなる。


---


「頑張ったな」


---


「はい……」


---


「本当に頑張った」


---


夏音は何度も頷いた。


---


夜空には星が見えていた。


---


夢への挑戦。


---


その第一歩が。


---


今。


---


確かに刻まれた。


---


結果はまだ分からない。


---


受賞するかも分からない。


---


だけど。


---


挑戦した。


---


逃げなかった。


---


その事実だけは変わらない。


---


そして。


---


二人は知らなかった。


---


数か月後。


---


この新人賞が。


---


二人の運命を大きく動かすことになることを――。


---


### 次回


# エピソード105


## 「結果発表までの日々」


待つことしかできない時間。


焦り。


不安。


そして少しずつ変わっていく恒一と夏音の関係。


運命の発表まで、あと三か月――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ