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# エピソード95 ## 「二人だけの約束」

# エピソード95


## 「二人だけの約束」


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誕生日から数日後。


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夏音は毎晩のように例の本を読んでいた。


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恒一からもらった。


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世界に一冊だけの本。


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机の上。


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大切に置かれている。


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ページを開く。


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旅行の思い出。


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初めてのイベント。


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ケンカした日のこと。


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仲直りした夜。


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全部覚えている。


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でも。


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恒一の言葉で読むと。


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少し違って見えた。


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夏音


「本当にずるい……」


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そう呟きながら。


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少し笑った。


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翌日。


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学校。


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恒一は授業を終えたばかりだった。


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大地


「先生!」


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恒一


「なんだ」


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大地


「彼女と別れました?」


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恒一


「なんでだよ」


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大地


「最近機嫌いいから」


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恒一


「意味が分からん」


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美咲


「たぶん幸せなんですよ」


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恒一


「お前ら暇なのか」


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生徒たちは爆笑する。


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そんな日常。


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少し前までは想像できなかった。


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放課後。


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校門の前。


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夏音が待っていた。


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風が吹く。


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夏音の髪が揺れる。


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それを見つけた瞬間。


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恒一は少しだけ笑った。


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夏音


「お疲れ様です」


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恒一


「お疲れ」


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二人は並んで歩く。


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沈黙。


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でも。


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嫌な沈黙じゃない。


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心地いい沈黙。


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しばらく歩いていると。


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夏音が突然立ち止まった。


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恒一


「どうした」


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夏音


「先生」


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少し真面目な顔。


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恒一も立ち止まる。


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夏音


「約束してください」


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恒一


「何を」


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夏音


「これから先」


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少し迷う。


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そして。


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静かに言った。


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夏音


「どんなに忙しくなっても」


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「どんなに有名になっても」


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「ちゃんと話してください」


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恒一


「……」


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夏音


「寂しいの嫌なので」


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少し恥ずかしそうに笑う。


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恒一はその顔を見る。


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そして。


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ゆっくり頷いた。


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恒一


「分かった」


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夏音


「本当ですか」


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恒一


「本当だ」


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夏音


「約束です」


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恒一


「約束」


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小さく指を差し出す。


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夏音


「子供みたいですね」


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恒一


「誰のせいだ」


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夏音は笑う。


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そして。


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そっと小指を絡めた。


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夕暮れの帰り道。


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二人だけの約束。


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たぶん。


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これから先も。


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ケンカする。


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すれ違う。


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悩む。


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でも。


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そのたびに。


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ちゃんと話そう。


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その約束だった。


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その時。


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スマホが鳴る。


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夏音


「?」


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黒川からだった。


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メッセージ。


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> 『重大発表があります』


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二人は顔を見合わせる。


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嫌な予感しかしない。


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そして翌日。


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黒川が持ってきた話は。


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二人の人生を大きく変えることになる。


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### 次回


# エピソード96


## 「東京の出版社」


黒川から告げられる衝撃の提案。


夏音の新刊。


そして恒一の原稿。


二人に大きなチャンスが訪れる――。


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