表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
82/101

# エピソード91 ## 「夏音、教師になる」②

# エピソード91


## 「夏音、教師になる」②


---


教室が爆発した。


---


「えっ!?」


「誰!?」


「先生の彼女!?」


「マジかよ!!」


---


一瞬で大騒ぎになる。


---


恒一は頭を押さえた。


---


「お前ら落ち着け」


---


誰も落ち着かない。


---


大地は机を叩いて立ち上がる。


---


「先生!!」


---


「なんだ」


---


「本当に彼女いるんですか!?」


---


「いる」


---


教室がさらに騒がしくなった。


---


「認めた!!」


「認めたぞ!!」


「事件だ!!」


---


夏音は完全に固まっていた。


---


(帰りたい……)


---


人生で何度目かの感情だった。


---


その時。


---


前の席から美咲が立ち上がる。


---


「先生」


---


「なんだ」


---


「朝倉先生って彼女いたんですね」


---


「いたら悪いか」


---


「いえ」


---


美咲は真面目な顔で言った。


---


「一生独身かと思ってました」


---


教室爆笑。


---


「おい」


---


恒一のツッコミも笑いに消える。


---


その様子を見て。


---


夏音は少しだけ笑った。


---


---


やっぱり。


---


恒一は学校で人気者だった。


---


厳しすぎず。


---


優しすぎず。


---


生徒とちゃんと向き合う。


---


そんな教師。


---


---


「みんな静かに」


---


恒一の声が響く。


---


すると。


---


不思議なくらい教室が静かになった。


---


夏音は少し驚く。


---


さっきまで大騒ぎだったのに。


---


---


「今日は特別授業だ」


---


恒一は黒板に名前を書く。


---


チョークの音。


---


白い文字。


---


## 夏音先生


---


教室がざわつく。


---


---


「作家さんだ」


---


恒一がそう紹介した瞬間。


---


空気が変わった。


---


---


「え?」


---


「作家?」


---


「本出してるの?」


---


---


夏音は少し緊張しながら前に立つ。


---


たくさんの視線。


---


イベント会場とは違う。


---


読者じゃない。


---


中学生。


---


だからこそ緊張する。


---


---


「はじめまして」


---


声が少し震えた。


---


---


「夏音です」


---


---


静かだった。


---


---


「今日は」


---


---


少し息を吸う。


---


---


「言葉について話しに来ました」


---


---


教室は静かに聞いている。


---


---


その時。


---


夏音はふと後ろを見る。


---


---


教室の後ろ。


---


恒一がいた。


---


腕を組みながら。


---


少しだけ笑っている。


---


---


大丈夫。


---


---


その顔を見て思った。


---


---


私は一人じゃない。


---


---


そして。


---


夏音は話し始めた。


---


好きな本の話。


---


子供の頃の話。


---


言葉が嫌いだった時期の話。


---


言葉に救われた日の話。


---


---


気付けば。


---


生徒たちは真剣に聞いていた。


---


---


大地ですら寝ていない。


---


これは奇跡だった。


---


---


授業の終わり。


---


夏音は最後に言った。


---


---


「みんなは」


---


---


少し教室を見渡す。


---


---


「自分の言葉を大事にしてください」


---


---


「上手じゃなくてもいいんです」


---


---


「伝えようとすることが大切だから」


---


---


静かな教室。


---


---


誰もふざけない。


---


---


その空気に。


---


夏音自身が驚いていた。


---


---


そして。


---


授業終了のチャイムが鳴る。


---


キーンコーンカーンコーン。


---


---


拍手が起こった。


---


---


一人。


---


また一人。


---


---


やがて教室全体が拍手に包まれる。


---


---


夏音の目が少し潤む。


---


---


その瞬間。


---


後ろから声が聞こえた。


---


---


恒一。


---


---


「よく頑張ったな」


---


---


小さな声。


---


でも。


---


誰よりも嬉しい言葉だった。


---


---


夏音は少し笑う。


---


---


「先生」


---


---


「ん?」


---


---


「ずるいです」


---


---


恒一は苦笑した。


---


---


教室の窓からは。


---


初夏の青空が見えていた。


---


そして。


---


この日から。


---


夏音は生徒たちにとっても、


少し特別な人になるのだった。


---


### 次回


# エピソード92


## 「放課後のサイン会」


授業終了後。


生徒たちが夏音を囲む。


そして美咲が放った一言で、

恒一は人生最大級の赤面をする――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ