## エピソード48(最終章前編)
## エピソード48(最終章前編)
### 「選ばなかった言葉」
公園は、あの日と同じ場所だった。
違うのは、空気の重さだけだった。
季節はもう、春を少し過ぎている。
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恒一はベンチに座っていた。
スマホは手の中にある。
でも、もう何も打っていない。
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夏音は、少し遅れてやってきた。
いつも通りのようで、どこか違う歩き方だった。
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「来てくれて、ありがとうございます」
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小さな声。
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恒一:
「呼び出したのはお前だろ」
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少しだけ笑う。
でも、その笑いは軽くない。
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沈黙。
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風が通り過ぎる。
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夏音はベンチの隣に座る。
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夏音:
「選んでくださいって言いましたよね」
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恒一:
「言ってたな」
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夏音:
「考えました」
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少し間。
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夏音:
「私は、言葉と人の距離を戻そうとしました」
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夏音:
「でもそれは、多分違いました」
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恒一は何も言わない。
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夏音:
「距離は戻せないんだと思います」
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静かな声だった。
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恒一はようやく口を開く。
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恒一:
「じゃあ、何すりゃいいんだよ」
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夏音は少しだけ笑う。
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夏音:
「戻すんじゃなくて」
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夏音:
「“どう持つか”なんだと思います」
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その言葉で、胸の奥が少しだけ動く。
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でも恒一はすぐには答えない。
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長い沈黙。
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そして、スマホを見つめる。
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恒一:
「なあ」
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夏音:
「はい」
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恒一:
「俺さ」
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言葉を探す。
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恒一:
「お前がいないと書けなかった」
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その一言で、空気が止まる。
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でも、続ける。
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恒一:
「でもさ」
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恒一:
「今は、それが怖い」
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夏音は動かない。
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恒一:
「お前がいると、書けなくなる日もある」
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恒一:
「どっちも本当なんだよ」
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風が止まる。
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夏音は静かに言う。
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夏音:
「それが“関係”です」
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その一言で、少しだけ救われる。
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でも同時に、終わりが近いことも分かる。
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## エピソード49(最終話)
### 「君の詩に、救われた」
その夜。
恒一は一人で机に向かっていた。
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書くか、書かないか。
もう迷いはなかった。
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ただ一つの“選択”として、ペンを取る。
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> 言葉は
> 誰かに届くたびに形を変える
>
> それでも
> それが間違いだとは思わない
>
> 誰かがいないと書けなかったし
> 誰かがいると書けなくなる日もあった
>
> それでも
> 俺は書いていた
>
> そしてそれは
> 一人の名前から始まっていた
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ペンを置く。
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スマホを見る。
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最後のメッセージ。
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夏音:
「ありがとう」
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短い。
それだけ。
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恒一はしばらく画面を見つめる。
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恒一:
「お前さ」
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送信。
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夏音:
「はい」
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恒一:
「俺たちって、何だったんだろうな」
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既読。
少し長い沈黙。
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夏音:
「言葉です」
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夏音:
「でも、言葉じゃない時間もありました」
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その一文で、すべてが終わる。
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恒一はスマホを置く。
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窓の外は静かだった。
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何かが終わったというより、
“続き方が変わった”夜だった。
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そして少しだけ分かる。
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この物語は終わるけれど、
言葉はまだどこかで続いている。
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誰かの中で。
どこかの時間で。
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**「君の詩に、救われた」**
それは、最後まで言葉として残ったままだった。




