第二十六話 目覚め
「…………」
「…………」
悠太はゆっくりと目を開けた。
見覚えのない天井。
「……誠人様!」
傍らにいた治療師が駆け寄った。
「お目覚めになられたのですね!」
「…………!」
悠太は勢いよく身体を起こした。
「……何日や、今日!!」
「……え?」
「今日、何日や!?」
突然の問いに、治療師は戸惑った。
「……本日は――」
治療師が日付を告げた。
悠太は息を呑んだ。
四十九日は、すでに過ぎていた。
「…………」
その時だった。
「……誠人様?」
治療師が、悠太の顔を見て動きを止めた。
「……ん?」
「……その、お目が……」
「……目?」
「……片方の瞳の色が……」
治療師が驚いたように呟いた。
悠太は手鏡を受け取り、自分の顔を確認した。
確かに、片方の瞳だけ色が変わっていた。
「…………」
だが、そんなことはどうでもよかった。
悠太は鏡を置き、目を閉じた。
『……欠片?』
「…………」
『……おい、欠片』
返事はない。
『…………』
『……欠片、聞こえてるか?』
いつもなら、すぐに返ってくる声。
しかし――
『……欠片!!』
『……欠片!!』
返事はなかった。
『……おい、欠片』
「…………」
悠太は再び目を閉じ、自分の魂に意識を集中させた。
しかし、何も感じ取れない。
『……欠片……』
何度呼びかけても、返事はなかった。
「…………」
悠太はゆっくりとうつむいた。
「……あかんかったんか……」
あれだけ必死になって、術を使った。
それでも、間に合わなかった。
「…………っ」
悠太は膝の上で拳を握りしめた。
その時――
『……ふっ』
「…………!」
悠太が顔を上げた。
『……お前……』
『……成功です』
「…………」
一瞬、言葉を失った。
そして――
「ほんならさっさと答えろや!!」
『……ふふっ、すみません』
「……ほんまに!!」
悠太は怒ったように言いながら、笑っていた。
『……悠太』
「……なんや!」
『……ありがとうございます』
「…………」
悠太は少しだけ黙ってから、笑った。
「……おう!」
* * *
『……それにしても、本当に成功するとは思いませんでした』
「ほんまにそうやな!」
『教えましたけど、成功する保証はありませんでしたから』
「……ははっ! まあ、成功したからええやん!」
『……ふふっ、そうですね』
二人はしばらく笑い合った。
「……あ、そうや」
『……どうしました?』
「てか、目の色片方ちゃうねんけど」
『…………え?』
「さっき治療師に言われてん」
悠太は手鏡を取り、もう一度自分の顔を確かめた。
「……ほら、片方だけ色変わってるやろ?」
『……これは……』
「……なんや?」
『……もしかすると、僕があなたの魂に入った影響かもしれません』
「……あ、そうなん?」
『……おそらくですが』
「……へぇ」
悠太は鏡を少し近づけた。
「……なんか、かっこええな!」
「ええやん! めっちゃ気に入ったわ!」
『……まったく、あなたという人は……』
悠太は鏡に映る自分を見て、嬉しそうに笑った。




