第二十四話 分家四人の葛藤
悠太が去ったあと。
四人は、しばらくその場に立ち尽くしていた。
「…………」
「……考えてみて、か」
一人がぽつりと呟いた。
「……驚いたな」
「ああ。まさか、あんなことを言われるとは思わなかった」
本家からお付きに指名されれば、従うしかない。
それが当たり前だった。
「……本当に、変わったお方だな」
普段から発言の少ない一人は、その言葉にひそかに頷いた。最初に「よろしく」と言葉を返され
た日から、どこか違うと思っていた。
「そうだな」
再び、沈黙が訪れる。
やがて、一人が口を開いた。
「……お前たちは、どう思う?」
「…………」
「誠人様のことは信頼している」
「……俺もだ」
「命を救っていただいたことも、一度や二度じゃない」
四人は、それぞれに頷いた。
「……だが」
その一言に、全員が顔を上げた。
「……覚えているだろう。俺たちと同期だった、あいつのことを」
「…………」
「……ああ」
誰もが覚えていた。
優秀な術師だった。
同期の中でも頭一つ抜けた実力を持ち、将来を期待されていた。
そして、本家のお付きに選ばれた。
だが、その才能を妬んだ主人によって、昇進の道を閉ざされ――最後には、すべてを失った。
「……あいつほどの実力があっても、ああなったんだ」
「…………」
「お付きになれば、俺たちの人生は主人次第になる」
「……分かっている」
「誠人様を疑っているわけじゃない。ただ……」
言葉が途切れた。
しばらくして、別の一人が口を開いた。
「……俺は、誠人様があのようなことをするとは思えない」
「……ああ。それは俺も同じだ」
「だが、先のことまでは分からない」
「…………」
四人は黙り込んだ。
やがて、一人が小さく笑った。
「……それにしても」
「……ん?」
「考えてみて、だなんてな」
「…………」
誰も答えなかった。
答えるまでもなかった。
「……不思議なお方だ」
「……ああ」
四人は、悠太の去った方へ目を向けた。
「……とにかく、よく考えよう」
「そうだな」
「……せっかく、考えることを許してくださったんだ」
「…………」
四人は静かに頷いた。




