第二十二 変わりゆく日々
それから数日。
悠太は再び、修行と任務を繰り返す日々を送っていた。
「……よっしゃ!」
ダンッ!
地面を蹴った悠太が、一瞬で前方へ加速する。
途中で身体をひねり、反対方向へ。
タッ!
指定された位置で、ぴたりと足を止めた。
「……どうや!」
「いいですね。だいぶ安定してきました」
指導役が頷いた。
「ただ、空中での霊力放出は、まだ少し不安定ですね」
「……あー、あれな!」
『……この前も、着地に失敗していましたからね』
『……もうちょいやってんけどなぁ』
『無理に放出量を増やさないでくださいよ』
『分かってるって!』
悠太は笑いながら、もう一度構えた。
* * *
別の日。
山林での討伐任務。
「……右から来ます!」
分家の術師が声を上げた。
「おっけー!」
悠太は足に霊力を流した。
――ダンッ!
妖怪の攻撃をかわし、素早く側面へ回り込む。
「拘束!」
放たれた符が妖怪を捉えた。
以前なら、必要以上の霊力を流し込んでいた。
だが、今は違う。
妖怪の動きを止めるのに必要な量だけを流す。
「……よし!」
後方の術師が続けて祓いの符を放った。
妖怪が光に包まれ、消えていく。
「……討伐完了です」
「お疲れさん!」
悠太は笑って振り向いた。
しかし、すぐに周囲へ目を向ける。
『……ほかには?』
『……今のところ、気配はありません』
『……おっけー』
念のため周辺を確認し、全員で帰路についた。
* * *
安倍家では、悠太以外の術師たちも鍛錬を続けていた。
「結界、展開!」
三人の分家術師が符を構える。
光の壁が形成される。
「……移動するぞ!」
「了解!」
三人は結界を維持したまま、ゆっくりと動き始めた。
以前は数歩進むだけでも乱れていた結界が、今では安定している。
その少し離れた場所では、以前負傷していたもう一人の分家も、拘束術の訓練を再開していた。
「……おっ!」
通りかかった悠太が足を止める。
「めっちゃすごっ」
「……誠人様!」
四人が振り向いた。
「……いえ、まだまだです」
「いやいや!全然ちゃうやん!」
「……ありがとうございます」
悠太はニッと笑った。
「俺も負けてられへんな!」
四人の表情が、わずかに緩んだ。
* * *
そんなある日のこと。
討伐任務から戻った悠太は、屋敷の廊下を歩いていた。
「……あー、腹減ったぁ」
『……今日は随分と動きましたからね』
『……晩飯なんやろな』
『……それは私には分かりません』
『……レバーは嫌やなぁ』
そんな話をしていたときだった。
前方から、二人の術師が歩いてきた。
「……そういえば、あの方のお付きが替わるそうだ」
「……またか?どれだけの…」
「ああ。今度は分家から二名、選ばれたらしい」
「……そうか」
「誠人様!」
二人は悠太に頭を下げた。
二人は、そのまま悠太の横を通り過ぎていった。
「…………」
悠太は少し首を傾げた。
『……なあ、欠片』
『何ですか?』
『……お付きってなんなん?』
『……お付き、ですか?』
『うん。さっき言うてたやつ』
『本家の術師に付き従い、任務などを補佐する者のことです』
『……へぇ』
『基本的には分家から選ばれます』
『……そうなんや』
悠太は少し考えた。
『……ほな、いつも一緒に行動すんの?』
『任務に同行することも多いですね。身の回りの世話や護衛を任される場合もあります』
『……なるほどなぁ』
悠太は再び歩き始めた。
『……なんか、相棒みたいな感じなんやな』
『……少し違う気もしますが』
『……え、ちゃうん?』
『お付きには、安倍家の中でも決められた役割がありますから』
『……ふーん』
悠太は廊下の向こうを見た。
『……まあ、一緒に動くんやったら、あいつらがええなぁ』
『……そうですね』
「……よっしゃ、飯や飯!」
悠太は足早に自室へ向かった。
欠片は、それ以上何も言わなかった。
* * *
その翌日も。
また、その翌日も。
悠太は修行と任務を繰り返した。
五芒陣をより少ない霊力で形成する訓練。
足への霊力強化と、空中でのわずかな方向転換。
そして、実際の妖怪との戦闘。
少しずつ。
けれど確実に、悠太は力をつけていた。
同じように、安倍家の術師たちもまた、それぞれの修行を続けていた。




