【安倍家】第十一話 安倍家
しばらくして、部屋に数人の人間が入ってきた。
先頭には、厳しい顔つきの男がいた。
悠太は寝台に座ったまま、その男を見上げた。
「…………」
男も悠太を見つめていた。
「……目覚めたか」
「……あ、はい」
「身体の具合はどうだ」
「……なんか、ちょっとだるめかな」
男は悠太の返事を聞くと、そばにいた術師へ視線を向けた。
「確認しろ」
「はい」
術師が悠太の腕に触れる。
目を閉じ、何かを確かめ始めた。
悠太は不思議そうに見ていた。
「……なんや?」
「霊力の状態を確認しております」
「……ああ、…?」
悠太は欠片へ問いかける。
(……なあ、これ何されとんの?)
『霊力を調べています』
(……なんかされんの?)
『痛くありません』
やがて術師が顔を上げた。
「……霊力は安定しています」
男が目を細めた。
「……そうか」
「ただ、身体への負担がまだ大きいようです」
「…………」
男は悠太へ視線を戻した。
「これからお前には、陰陽術を習得してもらう」
「……はい?」
「この器には、それだけの力がある」
悠太は少し考えた。
「……陰陽術って、妖怪倒すやつ?」
「そうだ」
「なんでおれが」
悠太の表情が変わった。
「てか、俺つかわれへんけど?」
男は短く答えた。
「使えるようになれ」
「…………」
「安倍家の後継者としてな」
そう言い残し、男は部屋を出ていった。
ほかの術師たちも、その後を追う。
扉が閉まった。
「…………」
悠太はしばらく黙っていた。
「……なんや、あのおっさん」
『安倍家の当主です』
「そんなこと言われてもなんでおれが陰陽師にならなあかんのや?」
『断れば別の魂をさがされますよ』
「……ん?」
『この体に適合する魂が見つかれば貴方はまた死にます』
「な、なんでや!」
『それほどこの器…この力は莫大なんです。だから、いまは従ってください。…それに力をつけ
れば守れるものもふえますよ』
悠太は寝台へ倒れ込んだ。
「……守れるものか…」
『はい』
欠片は小さく息をついた。
遅かれ早かれ悠太は殺されてしまう…それまでには…
欠片は決意した
* * *
その日の夕方。
悠太は窓のそばに立っていた。
広い庭。
長い廊下。
遠くに見える、いくつもの建物。
見たこともない景色だった。
「…………」
(……シスター)
悠太は窓枠に手を置いた。
(……みんな)
今頃、どうしているのだろう。
助かったのだろうか。
それとも――。
悠太は目を閉じた。
『……悠太さん』
「……ん?」
『今は、身体を休めてください』
「…………」
「……なあ」
『はい』
「……俺、いつ外に出られるようになるん?」
『……いずれは』
「……ほな」
悠太は窓の外を見た。
「……俺の家(孤児院)…いって確認せなあかん」
欠片は、すぐには答えなかった。
『……そうですね』
悠太は小さく頷いた。




