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【安倍家】第十話 欠片

『まず、今いる場所ですが』

「……うん」

『安倍家という、陰陽師の一族の屋敷です』

「……陰陽師?」

『はい、簡単に言うと霊媒師です。』

悠太は部屋を見回した。

「……めっちゃ金持ちなん?」

『……まあ、そうですね』

「……すご」

『そこじゃないんです』

「いや、だってこの部屋みたらさー」

『…………』

悠太はもう一度、自分の体を見た。

「……で、この身体は?」

『もともとは、僕の身体です』

「……お前の?」

悠太は眉を細めた

『はい』

悠太はゆっくりと手を下ろした。

「ちょい待ち…だいぶ意味わからんけど……ほな、お前はどないなったん?」

『僕も、死にました』

「…………幽霊?」

『まぁ、そんなかんじです。僕の名前は安倍誠人といいます。次期安倍家の当主としてうまれま

した。で陰陽師というのは霊力を使い祓う術者のことをそうよびます。陰陽師の一族の一つがこ

こ安倍家なんです。』

「ほぉ」

『僕は…膨大な霊力を持って生まれました。でも、僕には、うまく扱えなかったんです。宝の持

ち腐れってやつです。』

「……ふーん」

『僕は死んだ時のことはあまり覚えてないですが』

誠人は何かを隠すようにそう言った。

悠太は黙って聞いていた。

『僕は殺されてそして、安倍家の当主が禁術を使ったんです』

「……禁術ってなん?」

『廻生』

悠太は顔を上げた。

『死者の魂に干渉する術です』

「…………」

『その術で集められた魂の中から、あなたの魂がこの身体に宿りました』

「……俺は生き返ったん?」

『正確には、転生したということです』

「…………んー」

『あなたの魂が、僕の身体に入ったんです』

悠太は自分の胸元を見つめた。

「……で、お前は?」

『僕の魂は、ほとんど失われました』

「ほとんどってなんや?」

『僕の霊力は、生きていたころから、この器に少しずつ蓄積していたんです』

『それに、僕の中には、消えずに残った強い想いがありました』

『廻生で魂のほとんどが失われても、その霊力と想いが結びついて、わずかな意識が残ったんだ

と思います』

「……それがお前?」

『はい』

『魂の破片、といったところでしょうか』

「……破片?」

『そうです』

悠太は少し考え込んだ。

「……ほな、お前のこと欠片って呼ぶわ」

『……え?』

『いや、僕の名前はさきほどいいました』

「そやっけ?」

『僕の話きいてましたか?』

「……でも欠片の方が分かりやすいやん」

『…………』

「決まりな!」

『まぁいいです。……』

悠太は少しだけ笑った。

だが、すぐに表情を戻した。

「……なあ、欠片」

『なんですか?』

「……俺がここにおるってことは、元の俺の身体は……」

『……』

「…………」

悠太は天井を見上げた。

「……わからんよな」

声は小さかった。

それから、しばらく何も言わなかった。

* * *

部屋の外から、足音が聞こえた。

悠太は顔を上げた。

扉が開く。

「……若様!」

一人の男が入ってきた。

悠太は目を丸くした。

「……え?」

「お目覚めになられたのですね!」

男は急いで頭を下げた。

「すぐに当主様へご報告いたします!」

「……ちょ、ちょい待って!」

しかし男は、すでに部屋を出ていった。

「…………」

悠太は扉を見つめた。

「……なんや、あいつ」

『屋敷の者ですよ』

「いや、それは分かるけど……」

悠太は首を傾げた。

「……若様って誰?」

『あなたです』

「……俺?」

『はい』

悠太はもう一度、部屋を見回した。

「……マジか」

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