9、ミラローズの休養
討伐から帰って2週間がたとうとしていた。だが、ミラの魔力が切れる気配がない。今日も元気に王都の図書館で調べ物をしている。討伐から帰ったあの日に魔力をあげ渡した日から、あげていないというのに。
どうしてなのか。医師にも診てもらっているが、特に問題ないと言う。そのことも含めなにか調べている。
ミラの様子は逐一報告を護衛達がしてくれるが、不安でしょうがない。
「⋯⋯殿下、そんなに気になるなら、ミラの様子見てきてください」
「は? なんで⋯⋯」
「もう、顔に出てますよ。見に行って一緒に休憩でもしてきてください」
秘書官であるルーカスは王子殿下の不安な表情に、痺れを切らし、上官ではあるが命令した。そうすればこの不安そうな表情も少しは落ち着くのではと考えて。
彼は無言でスっと立ち上がると、何も言わず出ていった。それから毎日そこに居ると、報告を受ける図書館へ足を運ぶ。そこには熱心に山積みの中の本を読むミラがいた。彼女以外の自分派遣してる護衛と彼女の侍女はすぐに気が付き、頭を下げてくる。が、彼女は気がつかず読み込んでいるようだ。
そのまま気が付かない彼女の横に腰掛け眺めて、声をかけているがなかなか反応しない。とりあえずティータイムの用意をするようにお願いした。
「⋯⋯ミラ、なんか見つかった?」
「⋯⋯見つかりましたよ! ここに、病気のことについてあって、暴走状態の魔力は純度が高く、最低1ヶ月は保つことができるみたいです」
「⋯⋯そういうことね。だから体調悪くなさそうなのか。でも、それはそれで寂しいなぁ」
不安に思ってたからくりは理解した。だけど⋯⋯、王子殿下にとってミラと交わせるキスが何よりの繋がりで、何もないとなると寂しい。
こうなったら、魔力云々じゃなくて普通にすればいいのか。と思い立った彼は彼女の口に触れた。
「⋯⋯え?! で、殿下いつからそこに。というかなぜキスするんですか?!」
「やっぱり気がついてなかった。今、普通に話してたのにな? キスはしたいから。婚約者だろそれくらい、いいよね」
婚約者を存分に使ってしまえば良い。使えるものは使うまでだ。言葉を失って顔を真っ赤にして、目をぱちくりさせる顔があまりに可愛くてもう一度してやろうかと思うがそこは自重して。
「⋯⋯まぁいいよ、ミラ休憩しよう。ティータイムだ」
「殿下も一緒にですか?」
「もちろん。俺と一緒は不満か?」
慌ててミラは首を横に振る。今日も休憩をしていないことがバレている。ティータイムと言う割にはしっかりとご飯が用意されている。ミラはすっかり殿下にバレているから、こんなしっかりとしているのかと思っているが、これは侍女が自ら休まない主人に食べてもらうために用意しただけなのだ。出されたもので察したらしい彼はそれにのっかる。
「ミラはしっかり休んでもらわないとな? 1ヶ月保つとは言ったって、それはしっかり休養しての話しだ。飯もろくに食べずにこんなことしてればそれは、1ヶ月なんて話じゃなくなるぞ」
「あ、、、それは⋯⋯むんっ?」
口を開きかけた彼女の口に押し込まれたのは食べ物だった。
「自分で食べないなら俺が食べさせてあげようか」
「⋯⋯もう食べさせておいて何を言ってるんですか」
ミラの反論に、殿下はフッと気の抜けた声で笑った。護衛の為に近くにいた部下達は驚いていた。彼がそんな笑顔ができるのかと。そのくらい彼女に対する態度が、どれだけ好きなんだろうと物語るほどの違いにただ驚いていた。
1時間以上その光景を見せつけられ、見れば見るほどにコロコロと表情の変わる彼に耐えられなくなるほどに。いい加減にそろそろ⋯⋯と思い始めたその時、扉が“バンッ”と開くと入ってきた人物によって光景が一変した。
「殿下、いい加減戻ってきてください。ミラの可愛い姿見れて満足したでしょう。確認してくれないと困ることがあるんです。殿下の休憩は終わりですよ」
「⋯⋯お兄⋯⋯突然入ってこないでください、びっくりするじゃないですか」
「やぁ、ミラ。文句ならそこにいる殿下に言ってくれ。俺はちょっとミラの顔みて安心してこいって言っただけなのに。あれから何時間たってると思ってるんですか? 殿下」
入ってきた人物は彼の秘書官であり、ミラの双子の兄のルーカスだった。
秘書官の入ってきた途端、殿下の笑顔がスーッと消える。護衛達もいつもの顔に戻ったと怯えに変わる。
「⋯⋯いいところで入ってきやがって。ルーカス、俺の確認しなければならないこととはなんだ。大体の事は、片付けて来たはずだが?」
「⋯⋯えぇ、もちろん。殿下は優秀ですからね? そりゃ片付いてましたよ。しかし、先程国王の遣いより早急に処理して欲しいことがあると言われまして」
なんか空耳のようなつぶやきが聞こえた気がしたが、それは華麗に無視をして要件を伝える。というか、休憩してこいと言ったがこんな長くしてこいとは言ってない!と思う言葉は多少なりとも言葉にしたが、直接言わなかったことを褒めて欲しい。
「⋯⋯わかった、すぐ行く。⋯⋯ミラ、またね。なんかあったら絶対すぐに呼んで」
「⋯⋯はい」
それから、すぐに出ていった2人を見送り、残されたミラは食べかけていた料理を食べ終えると再び本の虫になる。
時間を忘れ本へ没頭し、病気のこと、魔力のことを調べては気になることをまとめそれについても調べを繰り返し行っている。
今後、事件が起こるなんてことはこの時は思ってもみなかった。




