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7、魔物討伐

 静かな森とは言い難いが、静けさのある森。ここが魔物の森と呼ばれていることは、国のものは誰もが知っている。そんな森に王子殿下とその部隊近衛騎士団は来ていた。基本は誰も寄り付かない森だが、来たのには理由があった。

 遡ること1週間前。

「⋯⋯殿下、失礼致します。秘書官殿と合わせて国王陛下がお呼びです」

「わかった。すぐに行く」

 執務室でいつものように書類を片付けていた所に、国王の付き人が来た。彼がここに来るのは大抵国王の呼び出しのときた。至急とは言わないが、大抵呼び出しは早急に方をつけたいことだということはわかっている。

 国王陛下の元へリュカを連れて、急いだ。

「おぉ、来たかノア〜」

「⋯⋯何の用ですか? 僕になにか頼みたいことでもあるのですか?」

「話が早くて助かるよ〜。明日から魔物の討伐に行ってくれる〜? なんか不穏な魔物がいるらしくて。かなり大きく強いらしい」

 この国王陛下の軽さにはいつも思う。「そんなんでいいのか」と。けどやる時はやるらしいこの男、自分の父親だとはなんとも言えない感情になる。

「⋯⋯国王陛下、明日からは無理です。生憎、ミラローズに魔力提供してから行かないと、僕のいない所で苦しむとは後味悪いんで、2日は時間をください」

「⋯⋯随分仮の婚約者に執着⋯⋯まぁいいか、2日だけだから。それ以上は待たない。本当は即行ってどうにかして欲しいくらいだから」

「わかりました。ありがとうございます。」

 礼を言って立ち去った。それからはミラローズに会える日を楽しみにしていた。だから、護衛からのミラの報告を楽しみにした。

 詳細な討伐の期間を知らされたのは、ミラに魔力をあげに行った前日。そこからはもう怒涛のようで昼間は仕事を片付け、夕方にはミラへ魔力を渡して説明して薬も置いてきた。

 それから現在、森の入口付近に建てているテントの中で、噂の魔物とやらの動向を伺っている。その外で自分付きの近衛騎士団が、見張っているのだがやる気が低迷しているようだ。それもそのはずでなかなか現れない魔物に自分たちだけで対処できる程では、なんの意味があるのかと思い始めているようだ。

「⋯⋯1週間そろそろ経ちますけど、現れませんね。魔物とやらは国王陛下のいたずらだったりして」

「⋯⋯イタズラにしては度が過ぎる」

「ですよね〜、もういっそ殿下が囮になりません? 魔力解放して」

「⋯⋯おい、それ上官に言う言葉か」

 呑気なことを言っているのもまた、外の連中と同様に怠け始めた秘書官である。今はそれとどうするか話し合っていたところだと言うのに何を言い出すか。

「だって、国王陛下は直々に殿下に頼むということはそれほどの魔力が必要と判断したということ。現れないならいっそ囮になればいい」

「⋯⋯簡単に言ってくれるな? 魔力解放したらどうなるのかわかってていってるのか?」

「⋯⋯そんときはその時ですよ〜。俺の魔力をお忘れですか? どうにかしてあげますよ。と言うかそれを見越しての俺じゃないんですかね〜?」

 魔力解放なんてしたら暴走しかねない魔力は抑えられない。だが、そうでもしないと帰れないのだとすると、待っててくれるミラをこれ以上待たせる訳には行かない。出発してから3日以上とうに過ぎている。そろそろ彼女の体調も怪しくなる頃だろう。

「⋯⋯では、行きましょうか。殿下」

 返事は返してないが、何かを察したらしい秘書官は全てを見透かしたような笑いを浮かべながら言った。その様子にイラッとして言い返そうと口を開きかけたその時、秘書官の開けかけたドアの向こうで悲鳴のような声が聞こえたと思うと同時に1人の騎士開けられた扉の前で叫んだ。

「で、殿下! で、 出ました! 俺たちではどうにもできないデカイやつが!!」

 出てみればそこに居たのは、規格外のデカイ魔物。想像以上にビビってしまったのは確か。だが、そんなことは言ってられなかった。騎士団が追い詰められ、負傷者もで始めていた。冷静に魔力で倒そうとしていたのに想像以上のことにパニックになっている騎士団。

 出てすぐに応戦し始めるが一筋縄でいかず、ただ負傷者の出る目の前の光景に魔力が湧き上がっていくのを感じた。暴走するとは思ったものの止められはしない。それに気がついたのか、秘書官が叫んだ。

「そいつから⋯⋯殿下から離れろ!! 」

 魔物ではなく、「殿下」と言った。戦っていた騎士団が「えっ?」と振り向いて、油断しかけたその時だ。魔物は攻撃を仕掛けていた。

「早く、離れろって言ってんだ!!」

 魔物に近づく王子殿下に対し、ハッとしたように王子殿下から距離を取り始めた騎士団達。必然的に魔物からも距離をとっていく。そのおかげもあってか、攻撃は彼らには当たっていない。攻撃は暴走仕掛けている殿下が受けているが、そこは魔力を使い多少はカバーしつつも、こっちからも攻撃魔法を放ち、傷ついても攻撃魔法全振りで魔物をあっという間に無効化させたのだった。そして、暴走状態のままとどめを刺してしまう。あれだけ騎士団が手をこまねいていたというのに。

「⋯うわぁっすげー⋯ほんとに一人で倒してしまったよ、俺たちが叶わない相手を」

「⋯⋯関心してるとこ悪いけど、殿下を無効化するから、あとよろしくな」

 騎士団に声をかけると、ルーカスは王子殿下へ魔法を放つ。それは暴走する魔力を無効化する力。あらゆる攻撃魔法を無効化し、暴走状態をも無効化する力。

「⋯⋯⋯おつかれ、ノア。ゆっくり休んで」

 無効化した、殿下は崩れ落ち秘書官の手によって抱きとめられた。

「⋯⋯⋯ありがとう、リュカ」

 聞こえるか聞こえないかのような小さい声でボソッと言った殿下の呟きは、しっかりとリュカの耳には届いていた。目を閉じて身を預ける彼にリュカはため息をつく。

「⋯⋯こんな怪我してさぁー、俺がミラに怒られるんだけど。まぁ、でも、殿下も怒られてくださいね」

 もう聞いていないであろう殿下を支えたまま、そんな呟きを漏らしつつも道のりは長い帰宅路につくのだった。

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