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6、ミラローズの想い

 婚約者の噂も広まって、護衛も付いているミラは、王城へ出入りすることも多くなった。調子の良い日は図書館へ足を向けることが多くなった。自分の病気を知るためにと、王子殿下の魔力過多を知るためだ。色々な本を読んで自分の病気を知っていかなければ、この先長く無いかもしれない人生は王子なしでも生きていけるのかも、調べたいと思ったからなのだ。もし仮に王子殿下に正式な婚約者が現れた場合自分は身を引くことになる。そうなった時に生きていける方法を探さなければならない。と考えているからだ。王子殿下の魔力過多についても調べているのは純粋に気になるというのが半分、もし自分が貰い続けることで影響があるのか気になるからだ。

「⋯⋯ミラ様、休憩しませんか? お茶にしましょう」

「ありがとう、クロエ。持ってきてくれたの? でもいいの? こんな場所で」

「いいみたいですよ、ね、護衛さん」

「はい。王子殿下よりミラ様が休んでくれるならそれで良いと言われておりますので」

 王子殿下にも、ここにこもりっきりで休んでないことは護衛を通して伝わっているようだ。なんだか、過保護にされているような気がすると思うミラであった。だが、素直に休むことにした。本を閉じて端に寄せてお茶のできる状態に整えた。きっとこれで休まないとまた休んでないことはすぐに伝わってしまうから。

「ミラ様、素直ですね? いつもは聞かないことが多いというのに。王子殿下と聞くと、わかりやすいくらい素直になりますね〜」

「⋯⋯何されるか分からないんだもん! ちゃんと素直に聞いておかないと!」

「今はいないですよ?」

「い、いなくても護衛さん通して伝わっちゃうんでしょ?! それなら聞いておかないと」

 侍女クロエはわかりやすいくらいに『王子殿下』という言葉に反応するミラローズの顔が恋する乙女の顔だと感じていた。恋する乙女で、キスをして魔力供給する仲だとしても最近の2人の関係は変わってきていると感じている。

 焦ったミラの顔が可愛く感じ、侍女はクスクスと笑う。するとむくれた顔もまた可愛いなと思う。彼女に仕えられて幸せだなと侍女は思う。


 護衛の1人が、王子殿下の元へ報告に戻っていた。

「王子殿下、今日の報告よろしいですか」

「⋯⋯あぁ、なんかあったのか?」

「今日は侍女の言うことを聞いて休んでおりました。王子殿下と聞くとミラ様は休むと侍女が言ったことで焦ってるようでしたが、楽しそうにお二人で話されていました」

 なんだか、自分がつけている護衛なのにそういう楽しそうだったとか聞くと腹ただしくなる。

「⋯⋯ミラがしっかり休みながらやってるならいいや。それで他は?」

 護衛が一部始終を事細かく話す言葉に楽しそうに話やがってと思ってしまう。「⋯⋯以上です!」とそうそうに戻っていく護衛が出てい行った扉を見つめていると、隣からクスクスと笑う声が聞こえてくる。

「⋯⋯なんだよ、リュカ」

「いやー、だってノアって、ミラのこと結構好きだよな? なんかくっつけたの俺だし嬉しくてな〜」

「⋯⋯何言ってんだ。俺はただ⋯」

「⋯⋯ただなんだよ? 照れてんのか? ノアって意外と乙女?」

「おい」ムカついて反論するが、楽しそうに笑うリュカは腹を抱えて笑い出している。余計に腹ただしい。

「⋯⋯ミラのところに行ってくる。笑ってないであとは頼んだからな」

 席から立ち上がり、扉の方へ歩いた。

「あ、逃げんのか? 仕事はどうした」

「⋯⋯やったよ、だから行くんだろ。見てみろ。あとは頼んだからな」

 そうもちろん今日の分こ自分の仕事は終わらせている。なんなら明日の分くらいは普通に終わってる。

 今日は、ミラはこっちの部屋にいるはずだ。3日に1度は王城へ泊まっている。それが今日なはずだから。

 ミラの部屋の前までやってくると、楽しげな会話らしき声が微かに聞こえた。“コンコン”と軽く扉をノックすると侍女の方が出てくる。

「ほら、王子殿下じゃないですか〜。では、殿下失礼致します、ミラ様また何かあったら呼んでくださいね」

 クロエは王子殿下へ会釈し、部屋の外へ出ていった。意味深な言葉を放って言った為に彼も不思議に思ったようだ。

「⋯⋯ミラ、何話してたんだ? 俺のことだよな」

「いや、そのなんでもないですよ!」

「なんでもないってことはないだろ。言わないなら、お仕置な」

 楽しそうな顔をして「お仕置」と言って近づいてくる王子殿下にミラは慌ててしまう。何してくるのか分からない彼のことだ話さないと、想像しただけで怖くなった。

「あの! 王子殿下が、すぐくるって話です! 護衛さんが報告に行ってから一番に来るのは殿下だってクロエが言ったんです。けど、他の人がなにかの用事で先来ることも有り得るよって。そしたら、クロエが王子殿下が先来ることにかけるって言ってたら、来たので」

「⋯⋯何を賭けなんかしてるんだ。それにしてもここに居て俺以外に誰が来ると言うんだ?」

「リュカだって有り得るかもしれないじゃないですか」

「リュカは俺の秘書官だし、よっぽどの事がない限りは俺よりも先に行かせない」

「私のお兄ちゃんなのに? よっぽどって、私になにかあった時とかそういう事ですか? そうなったら、ノア様も来ますよね?」

 何故か自信満々に聞いてしまったミラは、恥ずかしくなって顔を隠すように手で覆ってしまう。するとその手は剥がされ何故か笑顔の王子殿下によって剥がされキスをされた。

「⋯⋯そうだな? 俺も来るな、それもリュカに先に行かせたくないな」

「な、なんですか。まるで⋯⋯」

 ミラは言いかけて慌てて口を閉じた。言ってはいけないような気がして。

「まるで何?」

「あ、いやなんでもないです! 今は言いたくないです!」

 表情を歪ませ、「ふーん」と納得いかないといった声で答えた、彼はそのまま勢いでキスをした。今度はただ魔力を与えるためだけのキスだ。ミラはいきなりのことで、びっくりするが、流れ混んでくる魔力に彼に身を任せることにした。いつもより長くされる事に違和感を感じながらも受け取っていく。

「⋯⋯ミラ、明日から1週間補充してやれない。だから多めにあげたから」

「なんかあるんですか?」

「あぁ、1週間公務で出かけるんだ。だから補充してやれない。あぁ、あとこれ、魔力を一時的補ってくれる薬だ。最初診断受けた時貰っただろ? それ使うのはどうしてもって時にしろよ」

 そう言われ、横に寝転がった彼はそのまま眠りについた。いつもなら帰っていくのに何故?と思いながらも人の温もりの温かさに彼女もそのまま眠りについた。

 次の日の朝、ミラが起きた時には殿下の姿はもうなかった。

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