38.過保護包囲網
ミラローズのご懐妊が、わかってから周囲の過保護包囲網がこれまで以上に王城全体へと広がった。
ルーカスは婚姻前まで、続けていたミラの様子を見て去っていく、あの朝の日課を再開させるようになった。
「⋯⋯ミラ、おはよう。体調は大丈夫?」
「リュカ、おはようございます。⋯⋯大丈夫です」
「⋯⋯うん。本当に今日は大丈夫そうだな」
ノアはルーカスの訪問時は、1番警戒心MAXだった双子が故になのか、ミラの体調を正確に読み取る。そして少しでも悪そうだとノアをキレさせる行動や言動をしては怒らせて暴走させて、その魔力を鎮静化させて「はい、さっさとそれをあげろ」といい楽しそうに去っていくからだ。
ミラのために毎日来るのはルーカスだけではない。侍女クロエも毎日来て様子を見て身だしなみ整えることはもちろん、お茶にする気を使ってくれているらしい。
他にも国王陛下や王妃様までもが気を使ってくれているようで最高級のクッションだとかを、山ほど運び込んでくれている。王妃様に至っては服にまでこだわって送り届けてくれている。
王城内も気を使いムード一色のようで、ミラの為に食事も栄養価の高いものだったり、食べれないとかの対策まで行われる程の徹底ぶり。
部屋から出ることなく整えるられる居室内で過ごす日々だ。
「う〜、いくらなんでも皆さんの過保護が凄すぎますわ」
嬉しさの悲鳴をあげつつも毎日の過保護に苦笑を漏らすのだった。
「みんなミラに元気でいて欲しいからだ。ありがたく受け取っておけ」
そう言うノアに至っても今まで通りの過保護っぷりで、毎日一度は口付けをしてくれて、隣から絶対離れようとしないのだった。
だが、そんな王城の包囲網のなか突如として不穏な知らせがやってくる。
国を脅かしかねない強さの魔物の群れが出現したというのだ。その一報に、国一番の魔力を持つノアが出動せざるを得という。
国王陛下もその強さにノアを使わざる追えないと判断し、「ノア、離れたくないのは重々承知だか、この国の平和と安全のために行ってきてくれ。お前にしかやれない。ルーカスと一緒に行ってきてくれ」と2人を呼び出して直々にお願いをしたのだった。
準備を行うなか「なぜ今なんだ! 」と魔物に対して怒りを顕にし、『冷徹王子』の顔になっていた。
「まぁまぁ、さっさとそのままの勢いで倒しに行こうか」
ルーカスは楽しそうにノアを戦場へと引っ張って行く。
魔物を目の前にしたルーカスとノア。
ルーカスはちょっと楽しそうにノアを煽って、「クソッ!」と漏らしながらもノアは魔物たちに怒りをぶつけるようにブワッと最大の魔力を放ち暴走し、次々とあっという間に倒してしまうのだった。
「⋯⋯はい、おつかれー。ほらいい魔力提供出来そうですよ、殿下」
魔物を倒し終えると、暴走する程の魔力で疲れ、意識を失いそうになるノアをガシッと支えその魔力を鎮静化させた。昂ぶっているまま鎮めているだけなので、かなり濃密なのができているだろう。
そのままルーカスへ身を預けしばし帰るまでは休息する。目をつぶり、そのまま身を預ける。意識を失ったまま帰れば、ミラへ余計な心配をかけることになるので、そこはルーカスもわかってはいるだろう。
王城に着くと、ルーカスに起こされて、「ほら、さっさと行ってこい」と先に送れ出された。ノアは苦笑を漏らし、急ぎ足でミラノ元へ戻った。
ノアが戻ると部屋での定位置になっているソファに腰掛けてクロエと話しながら待っていた。
ノアを認めるとクロエは一礼し部屋を後にした。
「ノア様、おかえりなさい」
「⋯⋯うん。ただいま、ミラ」
愛おしそうにノアは、目を細めると、腕の中へと引き寄せた。そしてルーカスに鎮められただけの昂った魔力をミラへ口付けをして何度も深く流し込んでいく。
「ん⋯⋯っ、⋯⋯ふぁ⋯⋯っ」
いつもの優しい口付けとは違う、奥底に染み渡る圧倒的な満腹感のある魔力の温かさ。
頬を染めながらもノアの背中へ手を回し身を任せて限界まで流し込まれる魔力を受け取った。
その後、多くの魔力を流し込まれた深い口付けに、ミラは少し肩で息をしつつノアに身を預け、ノアもまた、このまま寝てしまいたいくらいには疲れているので、ミラへ身を預けるようにしつつ、しっかりとミラを支えて静寂なでも幸せな時間を過ごしていた。
――そこへ“トントン”と扉を叩く音が響く。
扉が“ガチャ”って開き、王城の専属医が顔をだした。定期的に見に来てくれる、医師はすぐにミラの診察を行ってくれる。
魔力の測定をすぐに行って、ミラの魔力の核と、小さな命をじっくり精査した医師は、うんうん、と頷き、パッと明るい顔で言う。
「⋯⋯素晴らしいです! かなりいい魔力を流し込めたんですね! それも1度ではなさそうです!」
「⋯⋯俺の暴走した魔力を前にあげた時に、長い期間安定していたので。それに近い状態のものをあげれば、濃度が上がることがわかりました。なのでさっきも⋯⋯」
「⋯⋯うんうん。そのノア殿下の濃密な魔力のおかげで、ミラローズ妃殿下の魔力の核も、お腹の子も驚く程に安定しております。当分は何も心配いらないで健やかに育ちますよ!」
「⋯⋯良かった⋯⋯、本当によかった⋯⋯」
医師の言葉聞いて、張り詰めていた肩の力が抜け、安心したようにノアは微笑み、ミラをギュッと抱き寄せた。
医師はその微笑ましい光景を見にして、クスッと笑い、「それでは、失礼いたしました」と一礼し、退出して行った。
それを見届けたノアは、ソファからミラを抱き上げベッドへ優しく下ろし、額へキスをひとつして愛おしげに髪を梳いた。
「⋯⋯ノア様、もしかしてさっきのは暴走した魔力だったんですね? もう! ノア様こそ、身体は大丈夫なんですか」
「⋯⋯フッ⋯⋯、ミラには敵わないなぁ。気がついちゃうか⋯⋯、大丈夫だよ、でも、少し眠いんだ、一緒に寝ようか」
前に心配してくれたミラに、さっきの暴走は言わないつもりだったのに気が付かれてしまった。
それでも、心配してくれる彼女の優しさに、愛おしさが勝る。
ギュッと抱き寄せてノアも横になる。
ふたりはそのまま眠りについた。
そんなふたりを、微笑ましく眺めて帰る、訪問者が多数いた、ことはふたりは知らない。




