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31.騎士たちもびっくりの戦力

 今回の討伐の激戦地――魔物の森。そこは国に隣接する森で多くの魔物が生息している。

 これまで大型の魔物の軍勢に、国へと流れないよう、騎士たちは、満身創痍になりながら、肉体的にも精神的にも疲労困憊になりながら防衛戦を繰り広げていた。

 防御が崩れようとしていた。誰もが最悪の結末を覚悟し、絶望に呑まれかけた、その時だった。

 馬の蹄の音と共に、戦場に馬を駆った二人の男が姿を現した。

「――っ、ノア殿下だ。ルーカス殿もいるぞ⋯⋯!」

「これで救われる⋯⋯っ!」

 二人の姿を視界に捉えた瞬間、騎士たちの間から、安堵と歓喜の声が響き渡った。

 国内随一の魔力を持つノア殿下と、その隣に並び立つ最強の相棒ルーカス。国中に認められている【最強の二人】が来てくれた。それだけで、絶望に満ちていた戦場の空気が一瞬にしてひっくり返る。

 ノアは馬から降り立ちながら、騎士たちの援助のために防衛魔法を使う。

 その隣で、ルーカスもまた完璧なタイミングで援助している。ノアの横に並び立つ。

「ルーカス行くぞ」

「あぁ、」

 短く、けれど互いへの絶対的なリスペクトと信頼のすべてが詰まった言葉を交わし、二人は同時に動き出した。

 ノアは国内随一の圧倒的な魔力を解き放つ。

 溢れる魔力で自らにも、近くにいる騎士たちにも身を守る魔法かけつつ、圧倒的な攻撃魔法で魔物を次々と倒されていく。

「――っ、⋯⋯あ」

 強さを前にして、先ほどまで死に物狂いで戦っていた騎士たちは、手にした剣を握り直すことすら忘れ、ただただ呆然と「見守る」ことしかできない程の圧倒的な2人の世界だった。

 しかし、魔物の数が多すぎた。

 攻撃魔法に、防衛魔法、などの多数の魔法をあちこち使い底なしの膨大な魔力を一気に引き出しすぎたせいで、ノアの体内の魔力バランスが揺らぎ、魔力暴走を起こしかける前兆が現れる。

(⋯⋯クソ、やっぱり一度にこれだけの魔力を引き出すと、持っていかれる⋯⋯っ!)

 ノア自身、その危険な前兆ははっきりと分かっていた。何年もノア自身魔力をコントロールすることができなかった学生時代から一番近くで戦いを見てきた相棒のルーカスもまた、その暴走の前兆をなんとなく察知していた。

 背後から、ルーカスが得意とする「鎮静化魔法」をノアにかける。魔法が全身を包み込んだ。

「言っただろ、暴走はさせないって」

 低く、けれど絶対的な頼もしさを持ったルーカスの声がノアの耳元に届く。

 ミラへ『心配するな、今度はノアを暴走させないから。約束だ』と誓った言葉を、ルーカスは戦場で見事に有言実行してみせたのだ。ルーカスの鎮静化魔法によって、ノアの暴走しかけた膨大な魔力は一瞬にして美しく凪ぎ、完璧にコントロールされた。

 攻撃の威力は国随一でも、無効化や鎮静化といった繊謝な制御魔法だけは使えないノアにとって、多くの魔力を使うこの時こそルーカスの援助が、何よりも心強く、ありがたい存在だった。

「⋯⋯サンキュ、ルーカス」

「あぁ、思う存分いけ」

 その言葉に不敵に口端を上げ、先程よりも安心して放つことのできる魔力をルーカスの言葉通り思う存分に力を発揮させる。

「さすが相棒だ⋯⋯!援助が完璧すぎる!」

「これぞ、国の最高戦力⋯⋯!」

「さすがの連携だっ!」

「見ろ⋯⋯! 魔物の群れが消し飛んでいくぞ」

 二人のあまりにも息の合った神がかり的な連携に、見守ることしかできなかった騎士たちの間から、今度は凄まじい熱狂の称賛が沸き起こる。

 反動を恐れる必要すらなくなった国内随一の王子は、これ以上ない不敵な笑みを浮かべ、さらにその規格外な魔力を爆発させる。

「⋯⋯おぉぉー⋯すごい」

「よし、全部倒したな。⋯⋯さぁ、帰るぞ」

 一秒でも早くミラの元へ帰りたいノアは、本当にそのまま馬に飛び乗って即座に帰ろうと踵を返す。そんな親友のあまりの往生際の悪さに、ルーカスは凄まじいジト目を向けると、ガシッとその衣服を掴んで引き留めた。

「おい待てバカ王子。他の騎士たちに後処理を任せないでもらえます? 事後処理やるまで殿下の仕事ですよね。わかってて逃げないでもらえます? 」

「⋯⋯お前、敬語使っている風を装いながら、俺をバカ呼ばわれするとは⋯⋯やめろ。あと、敬語なくせに言ってるトーンが怖いんだよ」

「気のせいですよ、ノア殿下。これ以上迷惑かける前に仕事をしてください。早くしないと帰れません。ミラにも会えませんね」

「チッ⋯⋯、義兄さんが酷い。バカ呼ばわれだし、帰らしてくれないなんてなぁー」

 戦場で神がかり的な無双を見せつけたはずの国内随一の最高戦力は、ブツブツと文句を言うのだった。

「義兄さん言うんじゃねぇ! ⋯⋯帰りたいのなら早く仕事してください」

 結局最後は相棒であり、義兄あにに冷笑を向けられながら後処理を不満げに眉間に皺を寄せ、渋々と手は動かしつつもふざけた口調で喋りながらしっかりと仕事をするのだった。そんな彼に呆れつつルーカスも手伝うのだった。

「⋯⋯おい、見ろよ、あの二人」

「ノア殿下に平気であんな口の利き方ができるのは、世界中でルーカス殿だけだな⋯⋯」

「まさに『唯一無二の相棒』だ。さすがルーカス殿⋯⋯」

 遠巻きに離れた場所にて処理をしながら、そんな二人のやり取りを眺めていた周囲の騎士たちは戦場での異次元な強さとのギャップを感じ唖然とする。そんなノア殿下を完璧にコントロールできるルーカスの有能さと二人の特別な絆に、生暖かいリスペクトの視線を送るのだった。

 しかし口は動かしても手元は信じられない速さでの処理をする。そのためあっという間に帰路に着くことができたのだった。

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