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28.正式な婚姻

国王陛下の承諾を得て、婚姻は事実上の婚姻関係――夫婦となった、翌日。


王太子執務室では、新王太子のアルトと、昨日からずっと百面相するルーカスが、手は止めずに動かし、完璧に処理されていく。

――だが、ルーカスの脳内は激しく大荒れしていた。

(クソッ、あの婚姻前にやらかすようなアイツとミラが⋯⋯、あぁー、でも〜ミラが病気が落ち着いていられて幸せに生きていけるならそれでいし⋯⋯いや、でも納得いかねぇ!!)

荒れた頭でもしっかりと書類は完璧処理し、冷静沈着なルーカスの顔はずっと昨日から百面相を繰り返している。

「⋯⋯ねぇ、ルーカス」

「⋯⋯っ、なんですか。アルト殿下」

「書類は僕についてくるくらい完璧に処理してくれるけど、ずっと昨日から百面相してるよ。もういい加減認めようよ。妹心配なのはわかるけど。兄上のあの重すぎる愛はもう誰にも止められないんだからさ、諦めて集中しようよ」

我慢しきれずくすくすと笑いながら、しかしペンは止めずに動かしながら百面相のルーカスへ言う。

「わかってますよっ⋯⋯仕事は完璧にやってるでしょう」

ルーカスは仏頂面のまま答える。

頭ではわかっているのだ。2人が幸せになるならこれ以上なことはない。⋯⋯ない、けど昨日ノアのやらかしを見たあとでは、兄としての感情が追いついてこず、激しく揺れ動いていたのだった。


そんな風にルーカスが葛藤を繰り広げていた、まさに同じ頃。

ノアはは王都近郊の魔物の森と呼ばれる場所で、ものすごい不機嫌な顔で、手にした剣を一振した。それだけで、小規模な魔物の群れは強大な魔力をまとったその一振で一瞬にして散り散りにしつつも、不満を漏らしていた。

「クソッ! なんでこんな雑魚の為に、俺がミラから離れないとならないんだ⋯⋯っ!」

国政書類の仕事は解放されたノアであったが、その見返りとして、国随一の魔力の持ち主である彼が最高戦力であることに変わりなく、ちょっとした魔物発生(ノアからしたらかなりの雑魚)でも前線に駆り出されてしまうようになったのだった。

片時も離さずにいたいノアにとってこの数時間の離別すらも惜しい。ノアは「1秒でも早く、ミラの元へ帰ってやる!」ということを胸に、周囲に控える騎士達が唖然とする目にも止まらぬ速さで、魔物を蹂躙し、秒殺していくのだった。


一方、そんなノアが席を外しているために、いつもより少し静かな図書館でミラは静かに、いつの間にかミラ専用のになった読書スペースで本を読んでいた。

「――ミラお姉様!!」

「しゃ⋯⋯シャルロット様?!」

突然、飛び込んできた、シャルロット。

ノアがいないと知った上での絶妙なタイミング良く姿を現し、嬉しそうなキラキラした顔でミラに万遍の笑みを向けている。

「婚姻を決めたとお聞きしましたわ! おめでとうございます! アル様が、全て引き受けたからですね! だから、早くノア様が動くとは、素晴らしいですわ!」

「⋯⋯えっ、いや、あの、気が早いです! シャルロット様⋯⋯っ!」

「早くないですわ! 国王陛下の承諾を得ているんですから、事実上の夫婦です!⋯⋯って、あら? お姉様その首元の暑くないですか?」

首元まで隠れるドレスを着ているミラ。今の季節に首元を隠す服は暑いだがしかし⋯⋯。

「いや、あの、大丈夫ですわ⋯⋯っ!」

慌てるミラになにかあるとは思ったシャルロットは、隠しているとはいえ、隠しきれずにちょっとだけ見えてしまっているそれ(消えない独占欲の痕)をしっかり見つけてしまった。

「⋯⋯ふふふ、なるほど。ノア様は手が本当に早いですわね」

真っ赤になりアタフタするミラにシャルロットは理解して悪戯ぽく笑った。

「⋯⋯うぅー⋯⋯ノア様のバカっ⋯⋯」

「そんなに赤くなられて、本当に可愛らしいですこと! ノア様が国法破りしかけてまで、婚姻を早めた気持ちが、よーくわかりましたわ」

未来の妹のあまりに直球の温かい祝福に顔を赤らめながらも胸の奥にじんわりと幸せな熱さに満たされたのだった。



それからしばらくして、正式な婚姻が結ばれた。

あれほど荒れていたルーカスもノアの婚姻の前にやらかしちゃったバカが、ちゃんと大切にしたいっと言う切実な気持ちを大事にしていることも、惚気られながら『我慢』をするのを近くで見ていために『こいつになら妹を任せられる』と確かな信頼に変わっていったのだった。

大勢の祝福に包まれながら、執り行われた正式な婚姻の儀。

純白のドレスに身を包むミラは、『減少の病』が落ち着いていることもあり、赤く頬を染めながらも輝かしい笑顔で幸せそうに笑っていた。

「これで、ずっと一緒だね。ミラ」

「はい! よろしくお願いします」

もう誰の目を気にする必要のない夫婦の誓いのキスが交わされた。

その夜ノアの我慢の限界が終わりを告げ、理性は爆発し、あの『キス以上方法』とやらを熱烈に実践するのだった。

(あー、あいつ本当に式が終わった途端、あの本の方法をやりやがったな)

離れた場所で双子の感なのか式の夜、ミラの魔力が安定するような気がして、式のの終わった途端に限界突破したノアの行動を読みとっていた。

ルーカスは、絶対に本人たちの前では口にしてやらないけれど、静かにこめかみを押さえ、心の中でそっと、けれど深く微笑むようにして呟いた。

(あぁー、俺のミラが本格的にノアに取られた〜。これでもうノアはミラを離さないな。絶対幸せにしてくれよ、俺の妹を。)

親友のあまりにもブレない、解き放たれた愛の深さに呆れつつも、最愛の妹の命は救われ、世界一幸せに愛されているその確かな事実に、ルーカスは深夜の静寂の中、深いため息と共に、親友と妹への心からの祝福を胸に刻むのだった。

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