番外編1 男たちの密会
男同士の深夜の本音の話はルーカスが、ただアルトの話を聞いてあげただけではなかった。
昼間に散々ノロケ話聞かされたノアの話を、ミラの病気のことや馴れ初めは黙っとくことにして、普段のノロケ話を誇張されてもスケールのでかくならない程度に話していた。
「⋯⋯ねぇリュカ、聞いてもいい?」
「ぅん? 何をですか?」
「⋯⋯兄上のことです、ミラローズ嬢に執着してるのが信じられなくて」
超重たい話をしていたのに途中でそれた問いかけに、(本当にこいつは兄が大好きだなー。気になってるのか、あの溺愛を)ルーカスは心の中で思いながら問に答えてあげることにした。
「⋯⋯アレは執着というか溺愛じゃないか? 俺がミラのことを守ってたのにさ、ちょっと『大切な理由』があって近づけたらあれだもんなぁ」
「⋯⋯えぇー、リュカってもしかして妹のこと溺愛してたの? だから今まで知らなかったの僕」
「⋯⋯そういう事だ。まぁ、それは置いといてノアのことだろ。アレはもう重症だ、『ミラが、ミラが』って何かと話してくるんだ。もちろんちゃんと仕事はこなすぞ。口を開けばミラのことしか言わない。聞きあきるくらい」
ノアの溺愛エピソードをポロポロと話し始めると止まらなくなっていく。それだけ溜まっていたのだろうか。
「この前のお茶会だって言い出したのは、ノアだ。ずっと引きこもってるミラを外に出してあげるのが目的と言いつつミラとゆっくりしたかった。それだけだ」
言い出したらとまることを知らないくらいに溜まっていた惚気は当たり障りのない程度に軽くはなしていく。
「こないだは、朝から凄まじいスピードで公務の書類を片付けてるなと思ったら、『今日はミラに会える日だから』っ言うんだぞ? そして早々に片付けて本当に行きやがった」
「⋯ぶふっ⋯⋯! 兄上はミラローズに会うためにスピードをあげるの? 優秀な脳の無駄遣い」
アルトは凭れていた、壁から床にしゃがみ込むようにお腹を抱え大笑いした。
「それだけじゃないぞ。休憩がてらに抜け出して会いにいたかと思えば、戻ってきて頼んでもないのに報告が始まるんだ。『後ろから近づいて脅かしたら、本気で怒るミラが可愛い』とか『未だにキスだけで真っ赤になって照れちゃうのが可愛い』だとか」
「⋯⋯そんなこと言うの? 兄なのに?」
「あぁ、ミラの可愛いさが分からないのか!?って言うだぞ? 可愛いことなんて俺がいちばん知ってるわ!って何度心の中で叫んでたことか」
「叫んでたって笑 ルーカスも面白すぎるよ」
アルトは目尻に涙を浮かべながら、未だ肩を震わせている。
「でも、ルーカスもそんな毎日惚気聞かされたら限界超えるよね」
「本当にね、俺の胃が⋯⋯まぁ〜⋯⋯あそこまで、あいつが執着するなんて俺も思わなかったんだよなぁ〜。あいつのこと舐めてたわ」
ルーカスは遠い目をしながら呟く。
「ルーカスもそう思うくらいって、知らないだけでなにかあったとかではないの?」
「いや、あいつは事細かくはなしてくるぞ? 会った時のことからこうだああだと1から100まで全てを」
「兄上が? 信じられないよ」
「これがまじで。俺と2人になったタイミングとかだとブツブツと話すぞ」
アルトのことは弟のようで、友達のような感覚になるルーカスは他に話せない愚痴がポロッと出すぎてしまうようだった。
「へぇ〜⋯あの、冷徹なはずの兄上がねー」
アルトはしばらく顎に手を当てて考え込んでいたが、なにか納得したように、不敵な笑みを浮かべて床から立ち上がった。
「じゃあね! リュカ! 次こそは、僕の優秀さを兄上に見せつけてやるから!」
「はいはい、お手柔らかにお願いしますね」
タタタ、と足取り軽く去っていくアルトの背中を見送りながら、ルーカスは静かにこめかみを押さえた。
(ミラ⋯⋯お前の旦那(予定)も、その弟も、俺にとっては手強すぎるぞ。俺はこれから毎日、この兄弟のクソデカ感情に耐えなきゃならないのか⋯⋯誰か俺も助けてくれ――)
思わず心の中で悲鳴を上げる。だが、すぐに愛しい妹の顔が脳裏をよぎり、自嘲気味に息を吐き出した。
(⋯⋯まぁ、そんなことをミラに言っても、あいつのことだ『私がなんとかするわ!』って自分の魔法を使って、また魔力を減らすだけだし、絶対に頼めないけどな)
ルーカスは深夜の静寂の中、明日の激務(と、また始まるであろう王子たちの板挟み)に備えて、深く、深いため息を一つ吐き出すのだった。
これは17話の王子殿下の本音の回。
ルーカスのノアののろけを暴露しちゃった話ですね、
だから最後はし17話と同じセリフで終わってんのは許してね。笑




