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18.ご令嬢のお茶会への招待状

「ミラ様、シャルロット様からの招待状が届いたみたいです」

 侍女のクロエが、ピンク色の可愛らしい手紙をトレイに乗せて持ってきた。

「シャルロット様から? そっか、普通は社交界の場を設けるべきものだものね」

 招待状を受け取りながら、ミラローズはふっと微笑んだ。

 ソレント公爵家の家紋が押された封蝋を丁寧にはがし、中にあった厚手の便箋を開くと、そこにはお洒落な飾り文字でこう綴られていた。


『親愛なるミラローズ様。

 先日はアル様が大変不躾な態度をとってしまい、本当に申し訳ありませんでした。

 今度は男性陣には一切秘密で、令嬢だけで小さなお茶会を開きたいと存じます。

 場所は王宮の秘密の庭園にて。未来の王太子妃候補としての社交の実践を兼ねた、女の子たちだけの内緒の集まりです。

 ミラローズ様とゆっくりお話しできるのを、心より楽しみにしております。

 ぜひお越しくださいませ。 ――シャルロット・ソレント』


 ミラローズが第一王子ノアの婚約者という次期王太子妃候補の座についたのは、あくまで彼女の病気――魔力が減り続ける不治の病の治療という、特殊で切実な事情のためだ。身分としての本来の格、そして次期王太子妃としての序列を言うならば、第一王子の婚約者であるミラローズの方が当然上である。

 しかし、それまでノアには一切婚約者がおらず、第二王子アルトたちが長く魔法学校へ留学していたこともあって、正式な婚約者として「先に」実務的な王太子妃教育を施され、社交の実践(お茶会の主宰など)を積んでいたのは、公爵令嬢シャルロットのほうだった。

 だからこそ、ミラローズはこの招待状が、未来の王室を背負う令嬢同士の『正式な社交のお誘い』であることを正しく理解した。

「令嬢たちだけのお茶会……先日お会いしてからシャルロット様とお話してみたかったので、私、行ってみたいです」

 手紙を胸に抱きしめ、ミラローズはわざと、少しだけ声を張り上げてそう呟いた。

 もちろん、誰もいないはずの図書館で、誰かに向かって話しかけているわけではない。ミラローズは、自分のすぐ近くの陰に、ノアの手配した優秀な護衛が気配を消して潜んでいることを完璧に知っていた――

(こうして呟いておけば、優秀な護衛の人が、すぐにノア様とお兄ちゃんに報告してくれるはず⋯⋯)

 もし自分から直接二人に相談すれば、過保護な彼らは「危ない」「ここで僕たちとお茶をしよう」と、全力で引き止めてくるに決まっている。だが、護衛の報告を通じて「開催場所が王宮内の秘密の庭園であること」が事前に二人に伝われば、頭の良い二人は「王宮内なら安全だし、まぁ良しとするか」と、自分たちで納得して折れてくれるはず。

 そこまで計算した、ミラローズの可愛らしい作戦だった。

 そしてミラの狙い通り、彼女の呟きを聞き逃さなかった護衛は、すぐさまノアとルーカスの元へとその情報を伝達した――。

 報告を聞いたノアとルーカスは、過去の事件を思い出して一瞬身構えたものの、開催場所が王宮内の秘密の庭園だと知ると、お互いに視線を交わして「まぁ、良しとするか」と納得した。

「場所がこの王宮内ってことなら、何かあっても俺たち一瞬で駆けつけられますし、今回は行かせてやりましょう。シャルロット嬢の王太子妃教育を兼ねたお茶会なら、今後のための公式な社交ですし、まぁ良しとするべきです。それに、俺たち男とばっかりお茶してるより、女の子同士の方が楽しいでしょうしね。たまには息抜きをさせてやりましょう」

「うん、ルーカスの言う通りだね。私の目の届く範囲なら、万が一ミラローズに何かあっても一瞬で行ける。城内のお茶会ってことだし、反対する理由もないか。……まぁ、良しとしよう」

 自分たちの絶対的な支配下である王宮内という事実、そして未来の王太子妃候補同士の正式な社交という大義名分に、二人は大人の余裕を持って快く許可を出すことにしたのだった。

 後ほど、二人の元へ「行っていいですか?」とはにかみながら聞きにきたミラに、ノアとルーカスは「絶対に魔法は使わないこと」を使わないことと条件をだし、何度も念を押した送り出す。

 一方のミラは、「ふふ、ありがとうございます!」と、初めての『女の子だけの時間』への喜びで胸を弾ませ、秘密の庭園へと向かうのだった。


 ミラローズは王宮の奥にある庭園に到着した。

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