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実技試験

 合図が来た! 俺は、詠唱を始める。

 この勝負は、詠唱をいち早く完了させ魔法を発動したチームが勝つと言っても過言ではない。


「初級魔法 ウィンド・バリア」


 俺は戦場の右側に壁を作る役目だ。正面に、風の障壁を建てる。

 指輪を通し、魔力が発散され正面に高さ三メートルほどの竜巻を起こした。そして、俺が両手を振り竜巻を横に広げていく。


「フロイ。後、二メートルぐらい広げて!」


 フィアの空間認識を頼りに壁を作った。


「ナイスよ! ここからは、私の仕事ね。この草原がどれくらいの範囲かきっちり調べるわ」


 そう言って、草原を駆け出した彼女は、左手を前に出し進んでいく。


「あまり、行きすぎるなよ。失格になるぞ」


 横には、俺の相棒アストが立っている。

 アストは、試験が始まると左側に風の障壁を作っていた。


「フィアの調査が終わるまでは、二人で耐えるしかないな」


 その時、正面の風に異変が起きた。

 風が弱まっている箇所が三つ出てきたのだ。

 

「来たか。俺が、左の二人を相手するから右を頼む」


 そう言って、アストは風の方へ走っていた。





 相棒と別れた俺は、対戦相手の迎撃態勢に入る。

 この試験で使える魔法は全部で三つ。一つは、さっき使用した防御魔法。二つは、場外に押し出すための妨害魔法。そして、残りの一つは浮遊魔法となる。

 基本は、この三つの魔法で戦うのだが……


「フロイ! 悪いが、この勝負勝たせてもらう」


 来た! 相手は、中間試験で成績上位だったザイムか。負けてられないな。


「いいや、勝つのは俺達だ」


 ザイムは、こちらに近づくと魔法の詠唱を始めた。おそらく省略詠唱で妨害魔法を打ってくるだろう。そこまでは、織り込み済みだ。


「フライ・フーン」


 ザイムの右手から、無数の細長いブロックが現れ、こちらに向かって飛んでくる。

 それに対し俺は、右手を振るとその場に立ち尽くした。


「もう諦めたのか? 弱気だな」


 フロイの振る舞いを好機と捉えたのだろう。さらに、追撃を加えようと詠唱を始めたその時だった。

 彼の後ろにあったはずの、風の障壁が消えていた。

 そして、障壁は小さな竜巻になりザイムを襲った。


「なに! 壁を崩しただと」


 竜巻はザイムに突撃すると、彼を草原の端まで吹き飛ばした。


 そして、俺はその間に、放たれたフライ・フーンを右手にジャンプして冷静にかわし、ザイムが吹き飛んだ方まで走り出す。

 その間にも、詠唱を始める。


「初級魔法 ワール・フロー」


 詠唱を完了させると、俺はおよそ二メートルほど浮かび上がった。


「横幅、十六! フロイ、三! アスト、六!」


 フィアからの合図だ。この合図で、草原の広さと自分達が端からどのくらいの距離なのかを掴んだ。ナイスタイミング!


 空中で魔法の詠唱をする。俺は、距離を基に調整した攻撃魔法 フライ・フーンを唱えた。

 そして、地面に着地すると再度同じ魔法を唱えた。


「射出」


 空中で唱えた魔法と、地上に降りた瞬間に唱えた魔法が同時に放たれる。


 これが、俺の戦法。一人二脚戦法。一人で二つの事を成すという意味だ。


「クッ やられた」


 ザイムは悔しそうな顔をして、地面に拳を叩きつけると魔法を喰らい、吹き飛んでいった。


「チーム番号 四番、一名脱落」


 脳内に声が響くと、草原は静まり返った。


「まずは、一人。次は、アストの元へ」

 俺は、相棒の元へ向かうべく走り出した。





 そして、砂埃の立つ戦場を見つけると加勢しようとしたが……


「その必要はないぜ。もう戦いは、済んでるからな」


 砂埃が晴れると、そこに立っていたのはアストただ一人だった。


「敵の二人は?」


 不敵な笑みを浮かべた相棒は、浅く深呼吸をして言った。


「場外だ。つまり、勝ったぜ」





 一回戦を突破した俺達は、その後も順調に駒を進めていき、決勝まで来た。


「決勝の相手は、ノエル達か。温存していた隠し玉、全部出し切るぞ」


 アストは、手を合わせ自信満々に言った。

 ノエル達は、間違いなく勝ち進んでくると予測していた。中間試験では、一回戦の相手だったザイムと同じく成績上位であったノエルとリーアムは警戒しなければならない。

 彼らの弱点は、性格だ。常に、他人を見下している彼らは友達がいない。だから、三人一組を作ると一人は連携も取れない寄せ集めをメンバーに入れる事になる。

 その弱点を生かし、さっさと寄せ集めの一人を倒して人数有利を作るという作戦だ。


「予定通りいこう」


 俺は、そう言って試合へと向かった。





「試験始め!」


 試合は、先ほどまでと変わり夕暮れから夜中の草原となった。


「暗いな。月は出ているが、視認性を上げる魔法も使えないし、かなり戦いづらそうだ」


「でも、やることは変わんないさ。予定通りいくぞ、フロイ、フィア」


 ここまで、戦ってきた中で草原の広さは変わらないとわかっている。慎重にいけば……


「よう。お利口さん達。呆気なく負けてもらうぜ!」


 ノエルが、いきなり一人でこちらに向かってきた。

 予想外の行動だが、一人で来たならこちらが人数有利を取れる。


「初級魔法 ワール・フロー」


 まずは、浮遊魔法を相手に飛ばして進路妨害をする。その後、三人で妨害魔法を使って場外に吹き飛ばす。


「待て! ターゲットが来た!」


 ノエルの後ろから突如、単騎で迫りくる少年が一人。

 マール君か。気の毒だけれど、倒させてもらうよ。

 予定を変え、ノエルからマールに狙いを切り替える。浮遊魔法となる魔力の塊を飛ばすと、マールは宙に浮いた。


「今だ! フィア頼む」


 後は、実践で魔法を使うのが苦手な彼女でも問題なく倒せるだろう。

 こうなれば、俺とアストの二人でノエルと戦って……


「待って。異常あり!」


 フィアの方を見ると、彼女の元にリーアムが迫っているのだ。

 まさか! マールを盾に、後ろからこちらに来ていたのか。夜の草原という特性を生かされた。


「フライ・フーン」


 リーアムは、省略詠唱で魔法を唱えるとフィアに向かい放った。


「ごめーん。やられるわ、これ」


 そう言い残し、妨害魔法を食らい吹き飛ぶフィア。


「チーム番号 七番、一名脱落」





 辺りを見回す。フィアから妨害魔法を食らい、吹き飛ばされ場外となったマール。フィアを吹き飛ばし、次は俺に狙いを付けたのか、こちらに迫りくるリーアム。アストの防御魔法を搔い潜り、こちらに来るノエル。

 防御魔法を外し、次の一手を打つべく詠唱を始めているアスト。

 ただ、立ち尽くしているだけの俺。


 人数有利を取れる試合だと思っていたが、結果的に五分の形となった。

 そして、次は俺だ。このままだと、二対一の状況を作られ落とされる。


「ここで負けてちゃ、俺は変わらない。ここで、勝って変わるんだ!」

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