俺達の魔法
ここで、隠し玉を切る。
「いくぞ。ガリ勉君。大人しくしてろよ!」
ノエルは、詠唱をすると宙に浮かび上がり、空中で妨害魔法を唱えた。俺の策である一人二脚戦法を使おうとしているのだ。
しかし、その技には弱みがある。俺の隠し玉は、刺さるぞ。
俺は、右手をノエルの方に向けた。そして、心の中でフライ・フーンと唱えた。
そう、無詠唱で魔法を放とうとしているのだ。無詠唱は、難易度が高い。だから、今から撃つ妨害魔法はおそらく威力が落ちる。
でも、それでいい。
ノエルに向かい放たれる魔力の塊。
「な! まさか、無詠唱か?」
驚きを見せたノエルは、空中で体制を崩し、地面に転げ落ちた。
こうなれば、俺の勝ちだ。
「お前の敗因は、相手を見くびった事だ。フライ・フーン」
俺の唱えた魔法は、ノエルに衝突し吹き飛ばした。
そして、そこに少し遅れてやってきたリーアム。
「くそ! お前はここで終わりだ。フライ・フーン」
リーアムの放った魔法が飛んでくる。俺は、交わす暇もなく衝突し吹き飛んだ。
後は、任せた。アストなら勝ってくれる。
ここで、脱落だと思った……
その時、小さな竜巻がこちらに迫ってきた。竜巻は、俺の背後に回り込むと、吹き飛ぶ威力を受け止めて殺した。
そして、俺は地面に着地する事が出来た。しかし、上手くいかず転げ落ちてしまった。
「一緒に勝たなくちゃ、意味が無いんだよ。そうだろ? 相棒」
アストは、そう言って背中を見せた。
俺は、一瞬泣きそうになったが感情を抑えて立ち上がる。
「ああ。一緒に勝とうぜ。相棒!」
俺は、アストの横に並び立つと敵を見据えた。
リーアムも、こちらを見て言った。
「まさか、二人がかりで襲ってきたりしないよな? 男なら、そんなことしないよな?」
俺達は、顔を見合わせた。そして、二人で笑った。
その後、笑いが収まると言った。
「「俺達は、二人でここまで来たんだ。悪いが、最後まで一緒だぜ」」
魔法を唱える。俺は、妨害魔法 フライ・フーン。アストは、防御魔法 ウィンド・バリアを唱えた。
そして、俺達の放った魔法はリーアムに向かうにつれて、一つに合わさった。
「「合成魔法 フラインド・フーア」」
これは、無詠唱と並びもう一つの隠し玉にあたる物。
魔法として放たれた魔力の塊が合わさることで、生まれる新なる魔法。
竜巻を引き起こす防御魔法と、人間を吹き飛ばすほどの威力を持った妨害魔法が合わさり、完成した圧倒的威力と速度の竜巻を放つ魔法だ。
リーアムに直撃した合成魔法は、突風を生み出し彼を、瞬きする間に場外へと吹き飛ばした。
脳内に直接響き渡る声。
「チーム番号 七番の優勝だ。おめでとう」
その言葉と状況で、ようやく理解した俺達は喜びを分かち合った。
「やったな。優勝……出来たな」
俺の前に出てきたアストの右手。俺も、右手を突きだした。
「ああ。アスト、お前のおかげだよ」
固く握手し、俺達は勝利の喜びに浸った。
試験は全て終わり、時間は流れた。そして、九月に入り結果が発表された。
「結果の張り紙、見るぞ。覚悟はいいな?」
「ああ、大丈夫だよ。アストこそ、負けて失神するなよ?」
前期期末試験の成績上位三十名の名前と順位が張り出される校舎の入り口に向かった。
そして、結果を見る。上から目を通していく。
一位……二位……三位と流れていき……
「あった!」
先に、声を上げたのはアストだった。
「俺の順位は、八位! フロイは、九位だな。俺の勝ちだ!」
「くそ。負けた……」
俺は、負けた現実を受け止め落ち込んだ。
「まあまあ。一個差じゃん。五分みたいなもんよ」
フィアが俺を励ましくれた。でも、やっぱり悔しかった。
「気が早いが、学年末試験も勝負しないか?」
「いいぜ、フロイ。二連勝してやるよ」
俺達は次の勝負を見据え、魔法学に励むのだった。
十月十日。俺達は、いつも通り魔法学の参考書を基に実験をしていた所、大きな発見をした。
「フロイ、この上級魔法を合わせたらどうなるんだ? 本には、書いてないんだ」
アストから渡された本を見る。確かに、合成魔法の進化の過程はここで止まっている。
「わからないな。実際にやってみるか」
アストに安全の為、数歩離れてもらい、俺は魔法を唱えた。
「上級魔法 ブリリアント・レイ」
机の上に置かれている魔法陣に魔力の塊が衝突した。
そして、まばゆい光を放ち新たなる魔法陣となった。
「これって……」
俺達は、驚きを隠せず机へと歩み寄った。
「ああ。間違いない。未発見の、魔法陣だ」
俺達は、二人の叶えたい夢の一つだった新しい魔法陣を作る事を、たった今達成した。
すぐさま実験室を飛び出し、放課後のホーム教室にいた皆に知らせた。
すると、話はすぐさま広がり、翌日には学校中に知れ渡った。
俺達は、有頂天になった。まだ、十五の学生が未発見の魔法陣を発見したんだ。
そもそも、今回見つけた種類の魔法陣は、体に術式を刻み込む物だ。一度使用すれば、魔法陣は壊れてしまう。そして、使用者に一生刻まれる。
その魔法陣は、相手の体力と魔力を一定量、体外に放出させるというものだ。発動条件は、利き手で相手の素肌に触れるというもの。魔法陣の名は、ドレインと名づけた。
この魔法陣は強力だ。だから、貴重に管理しなければならない。もし、魔法陣が奪われるなんて事があったら一大事だ。
二人で話し合った末、王都の魔法管理局に預ける日が来るまでの二日間は、担任のオリヴァー先生に預ける事にした。
「先生。管理をお願いします」
俺達は、先生に頭を下げた。
「任せてください。それにしても誇らしいよ。僕の持つホームから、こんなに素晴らしい生徒が出てさ」
俺達は、魔法陣を無事に預けられ安堵した。
「この魔法陣どうするよ。俺とフロイ、どっちが使う?」
「あの上級魔法を混ぜようって、提案したアストが先に使いなよ」
「まあ、その時が来たら考えればいいか」
俺達は一度実験室に戻った後、寮に帰った。




