§93 無事にチャーシの宿到着
アン先輩と本人を除く俺達の意見で更に運転手交代。
アルが今度は運転席についた。
アルはそれほど魔法が使えないし大丈夫かな。
最初はそう思ったけれど思った以上にこの舟を自由に動かしている。
それに運転が他二人と比べてとっても堅実だ。
それでも他の船と比べると段違いに速いけれど。
ヘラの案内で河口をぐるっと回ってから左側の湾奥を目指す。
ここは海だけれども大きい湾になっていて海流の影響を受けない。
内航船もここチャーシからニナまではこの湾内を通る。
そして宿の小さな船着き場に舟をつけた時、ちょうど三の鐘が鳴る音が聞こえた。
二刻かからないでここまで着いてしまったようだ。
思った以上にこの舟は速かった。
アルの魔力と運転でもかなり速度が出る。
もやい綱をボラードに結びつけ荷物を出している間にヘラが宿の方へ。
「部屋の用意はまだだけれど朝食は大丈夫だそうですわ。荷物は預かってくれるそうです。あと舟はそこでいいそうですわ」
そんな訳で荷物を宿に預かってもらい食堂へ。
ここは宿の食堂としてだけではなく一般の人も使うタイプの様だ。
朝食はメニューは一種類だけの模様。
半ばセルフサービスのこの手の安食堂ではよくあるタイプだ。
ただおかずがカウフォードとかなり違っていてテンションが上がる。
「これは魚の干物を焼いたものですね。これは魚のフライ。こっちは大型のお魚のお刺身ですわ。味噌汁の中のこれは海藻です」
日本風に言うと、アジの開き、アジフライ、かつおの刺身という感じだ。
海藻は海苔かアオサという感じ。
もちろん微妙に魚や海藻の種類は違うだろうけれど。
早速新たな味に皆で挑戦する。
まあ俺は日本でも食べた事があるものだけれど。
「うん、このフライは文句無く美味しい!」
「この刺身は食べた事がない味だな。生でも大丈夫なのか」
「新鮮なうちなら問題無いですわ」
「この干物は骨を外すのが面倒だな。でも味はご飯になかなかあうのだ」
「この汁、海の香りがする」
好き嫌いがあまり無い面子なのでしっかり完食。
ただ干物の骨の取り方に多少の上手い下手はあるけれど。
ちなみに文句を言っていたアン先輩は見事に骨と頭と尻尾だけ。
まあ解体に魔法を使ったんだろうけれど。
「本当はこの後お買い物の予定なのですけれど、ちょっとまだ早すぎますね」
何せ予定より二刻も早く着いてしまった。
食事を終えてもう少し経てば四の鐘の時刻という感じ。
店が開く時間まで二刻以上ある。
「とりあえず海に出てみない」
「そうだな」
そんな訳で皆で海へ。
海そのものは基本的に砂浜と少しの岩場という感じ。
何かいるとすれば岩場だよな。
そんな訳で岩場を色々見て見る。
下の方に松葉貝に似たものがついていた。
マイナスドライバーかナイフみたいなものがあると取れるんだけれどな。
素手だとちょっと無理だ。
よくアウトドアに一緒に行く父の友人がこういうのを採るのが好きで、専用ナイフを持っていた。
岩牡蠣とかこういう貝を捕るには便利だって言っていたよな。
ああいうのがあるといいな。
用意していなかったのが悔やまれる。
「ホクト、何をしているの?」
ラインマインに聞かれた。
「いや、この貝を捕ろうとしたんだけれどさ。道具が無いと無理っぽい」
「それって食べられるのかな」
「俺の世界にあった似た様な貝は焼くと結構美味しかったな」
「どういう道具が必要なのだ?」
アン先輩が首を突っ込んできた。
「頑丈な金属製の細いヘラみたいなものです。こういう貝を剥がすのに便利です」




