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進学先は異世界でした ~俺の異世界学園生活記  作者: 於田縫紀
#16 ある便利道具の顛末

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§87 俺もそろそろ気になりだした

 さて。

 最近朝、顔を洗う際に気になる事がある。

 どうも髭が生えてきたような気がするのだ。

 ここには日本の様に性能のいい鏡は無い。

 でも触ればわかる。


 この国の男性の大人のほとんどは髭をある程度伸ばしている。

 でもそれは髭剃りというものが無いからではないかと俺は思う。

 危険そうな刃丸出しのカミソリはあるけれどあんなのを顔で使う自信は無い。

 髭剃りの結果スカーフェイスになってしまったら最悪だ。

 俺は安全カミソリが欲しいのだ。


 そんな訳で俺は市販のカミソリと自室で描いた下手なスケッチを持って朝食へ。

 男子が女子寮の誰かと連絡を取る手段は通常これくらいしか無い。

 個別放送の魔法が使えれば別だけれども。

 実際それほど待つまでも無かった。

 アン先輩が眠いぞという顔で食堂にやってきた。

 朝食のお盆を取って歩いているところに声をかける。

「アン先輩、おはようございます」

「おはようなのだ。何かあるのか?」

「実は食事後にお願いが」

 そんな感じで食後に実験室へ。


「なるほど、危なくない方法で髭を剃るカミソリか」

 俺の書いた図面を見て理解してくれた様だ。

「でも何故ここに刃が二枚必要なのだ?」

「一枚目が髭を剃ると同時に延ばした処を更に剃るという構造です」

 つまり日本でお馴染み二枚刃の髭剃りだ。


「俺の器用さだと普通のカミソリで安全に髭を剃る自信が無いんです。俺が前にいた世界ではこのタイプのカミソリが安価に普及していました。これなら横に滑らさない限り肌を切る可能性は低いですから」

「確かにこれなら一定の角度で刃が肌に当たるのだ」


 そんな訳で作成開始。

 これくらいの工作なんてアン先輩なら楽勝だ。

 素材選びにちょっと時間をかけただけで、物そのものは魔法であっという間に作り上げる。

 見た目は間違いなく二枚刃の髭剃り。

 本体は木製という微妙に高級な雰囲気の仕様だ。

 まあここにはプラスチックという素材が無いだけなのだけれど。


 ちょっと怖いが早速実験。

 実験室の流しに水を流し、石鹸を泡立てて左腕の毛が生えているところに塗る。

 流石にいきなり顔で挑戦する勇気は無かった。

 でも傷にならずにちゃんと剃れる。


 そんな訳で今度こそ顔に挑戦。

 手で触ってみて髭の生えている辺りを剃ってみる。

「うん、いい感じで剃れます。それにしても済みません、何かこんな個人的な物を造らせて」


「いや、これはこれで色々と活用できそうなのだ」

 アン先輩はにやりとした。

「取り敢えずメルとヘラ、あとラインマインを呼ぶのだ」


「どうやって」

「ホクトは魔力があれば個別放送魔法を使えるはずなのだ。その手の魔法はレマノ姉の得意中の得意なのだ」


 そう言えばそんな事も出来るんだよな。

 自分でも時々魔法を使えるのを忘れていたりする。


「それでどういう風に呼び出しますか?」

「メル宛てだけでいいのだ。『アンが何か呼んでいるから暇なら皆で来て欲しいのだ』で充分なのだ。一応魔法杖を充填しておくのだ」


 魔力を充填して貰って俺は魔法杖を受け取る。

『メルすまない。アン先輩が何か呼んでいる。暇だったら皆連れてきてくれ』


『わかった』

 すぐに返答が返ってきた。

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