§85 アン先輩の罪の意識
俺が落ちてきた付近に遺跡があるらしいという事。
この遺跡の場所には遺物がよく落ちてくるという事。
この二つが俺の中で一つの結論に繋がるまでちょっと時間を要した。
「それじゃ、ここに遺物が良く落ちてくるのもカイドーに俺が来てしまったのも」
「おそらく同じ理由なのだ」
俺は自分の中のレマノの記憶を探る。
でもこの遺跡については全く情報は無かった。
「レマノ姉に貰った知識を探っても出てこないと思うのだ。都合が悪い知識は与える時に外す事が出来るのだ」
そういう訳か。
でもアン先輩の今の台詞。
「やっぱり俺の知識のベースがレマノさんのだって気づいていましたか」
「カイドーに落ちてきた他世界人は市長補佐の担当なのだ。それにホクトはレマノ姉が気に入りそうなタイプなのだ」
なるほど。
でもまさかあんな事されたの気づいていないだろうな。
それは流石にちょっとまずい。
やばいやばい。
変な事を考えてしまった。
三.一四一五九二六五三五八九七九……
円周率を唱えて少しだけ平静さを取り戻す。
「とりあえずIDとパスワードがわからないとこれ以上進めませんね」
「そうなのだ。でもホクトはどう思う、この機械は何の為の機械なのだ。何故こんな物があるのだ」
今は何もわかる段階ではない。
でも推測できることはある。
「何の為の機械かはわかりません。でも取り敢えず他の世界からの人や遺物をもたらすのが主な目的では無いと思います。勿論そういった他世界から人や物を引きつけてくる効果はあるんでしょう。でもこれくらいの機械を作れる技術力があるのなら、そんな事をする必要は無い筈です」
アン先輩はふうっとため息をついた。
「それにしても申し訳無いのだ」
「何故謝るんですか」
「ホクトがこの国に落ちてきたのがこれらの機械のせいならば、私が属するバルジヴェル家にも責任があるのだ。少なくとも歴代の市長や補佐役のレマノ姉はこの機械について知っている筈なのだ。
私はずっとそれに気づいていたのだ。でも今日までなかなかこの事を言い出せなかったのだ。言わなければならないと思いつつ今日まで来てしまったのだ」
俺は何となくアン先輩の今の気持ちを理解した。
この場合気にしていないと伝えるだけでは足りないだろう。
だからまずは論理から行こう。
「知っているのとこの機械を操作出来るのとはまた別ですよ。それにこの機械の本来の目的もまだわかりませんしね。この世界に必要なものかもしれないですし」
アン先輩は小さく頷いた。
「ありがとうなのだ」
「そもそもアン先輩に責任は全く無いですから。それに俺自身も今の生活を楽しんでいますしね」
これも事実だ。
不安は親が心配しているだろうという点くらい。
むしろ山下中学に進学するよりこっちの方がずっとましだっただろう。
ちょっと考えて、その辺の事も言っておくことにする。
「元々僕は向こうの世界でも新しく進学するところだったんです。あまり評判の良くない荒れている中学校に。だから結果的にはこっちの世界に来た今の方が楽しいし自分にあっていると思います」
「ホクトほどの学力でも元の世界の上級中学校相当は無理だったのか?」
アン先輩は不思議そうに聞いてくる。
「向こうはこっち程理想的な進学体勢じゃないんですよ。少なくともある程度出来る人間には」
「なにやら向こうは向こうで色々あるようなのだ。でも少し安心したのだ」
「ま、そんなものです。僕にとってはむしろこっちの方が過ごしやすいですよ」
「ありがとうなのだ。正直ホクトに怒鳴られる位は覚悟していたのだ」
ちょっとだけ疑問が生じる。
「でもそれなら何故、この事を俺に言ったんですか」
「ホクトがこの世界に来てしまった原因を知っていて隠すのは卑怯だと思ったのだ」
なるほど。
「なかなか格好いいですよね、先輩は」
「そういう矜持を無くしたら人間終わりなのだ」
うん。
格好いいしやっぱりアン先輩は先輩だなと思う。
だから二人だけだとつい丁寧な話し方をしてしまうのだ。
見かけこそ小学生だけれどさ。




