§84 隠された遺跡
「これでもう大丈夫なのだ」
そう言ったアン先輩について穴の中へ出る。
出口から穴の淵に沿ってぐるっとらせん状に低くなっている。
つまり下へ降りる通路って訳だ。
その通路は穴を一周近くして左側で止まっていた。
ここからはそこがどうなっているかはギリギリで見えない。
「さて、行くのだ」
そんな訳で俺はアン先輩について下へ下へと歩いて行く。
土の高さが身長の五倍以上になったところで終点だった。
目の前に明らかに土では無い、コンクリートっぽい素材で出来た壁がある。
そのうちちょうど扉くらいの大きさの部分がくぼんで中に入れる様になっていた。
もっともくぼみはせいぜい二腕程度。
そして行き止まりに明らかにタッチパネル状のものがついている。
素材も機器もどう見てもここの技術水準のものではない。
「ちょっと待って下さい。これは」
「この前はこれがバレない様にあえて魔法で隠したのだ。色々と面倒な問題が起きそうだからなのだ。よく見ていて欲しいのだ」
アン先輩はそう言って行き止まりの前に立つ。
タッチパネル状の画面に表示が現れた。
『IDとパスワードを入力して下さい。カードキーがあれば翳して下さい』
この国の文字でそう書かれている。
「無論IDもパスワードもわからない。だからこの先には進めないのだ。でもこの文字は確かに私達が使っている文字なのだ。
そうするとこの遺跡は他から落ちてきたものではなくて、この世界の物の可能性が高い。そう私は結論づけたのだ。何か私は間違っているのだろうか」
理屈としては正しい。
たとえこの遺跡の構造が現在のこの世界の技術水準とはかけ離れていても。
それでも。
「俺も先輩の意見に同意します。きっとこれはこの国というかこの世界の物です。製造に要する技術水準があまりに違いますけれど。
念の為その場所を俺と代わって貰っていいですか。確認したいことがあります」
アン先輩が行き止まりから離れる。
タッチパネルの画面が消えた。
それを確認して今度は俺が行き止まりに立つ。
また同じ表示が現れた。
この国の言葉でだ。
「念の為俺が立ってみた場合、表示の言語が変わるか試してみました。
俺はこの国の言葉も使えますが、思考そのものは落ちてくる前の世界の言葉を使っています。なので思考を読み取るタイプなら、そっちの言語が出る筈です。でもこの国の言葉で案内が出てきた。そして翻訳とか言語を変更するボタン等も無い。
なら、この国の国語を使うことを前提に設計されているということでしょう」
「ありがとうなのだ。少しすっきりしたのだ」
先輩はそう言って頷いた。
「それでホクトはこれは何だと思うのだ」
「残念ですがそれはわかりません。ただどういうエネルギー源をつかっているかはわかりませんが、まだこの遺跡の機能は生きている可能性が高いと思います。少なくともここの扉のセキュリティはまだ生きていますから」
アン先輩は頷く。
「私もそう思うのだ。
あと、私は実はこれと似た様な物を過去に見た事があるのだ。カイドーの市庁舎にほど近い七番通り北七東三、バルジヴェル家本家の鍵のかかった地下に確かにあったのだ」
何だって!
でもカイドーの北七東三と言われてもイメージがわかない。
俺は根本的に方向音痴なのだ。
「恐らくホクトが落ちてきた場所の直近なのだ」
それに気づいてかアン先輩が補足してくれた。




