§83 アン先輩のお誘い
昼食を食べて寮に戻る帰り、売店の横辺りだった。
「ホクト、今暇か」
いきなり声をかけられた。
でも俺はこの声は知っている。
「アン先輩、どうしたんですか」
「実はちょっと相談事があるのだ」
何だろう。
「何か新しい機械でも見つかったんですか」
「それに近い事なのだ。魔法杖は今持っているか」
「一応持っています」
バックの横に何時でも出せる様に入れてある。
「念の為充填しておくのだ」
先輩は俺から杖を受け取り、充填して返した。
「何事ですか」
何か起こりそうなのだろうか。
「まあ、実際に見た方が早いのだ。邪魔がはいらなければなのだが、私がこの話を始めた事を邪魔しないのならおそらく邪魔は入らないのだ」
何だろう。
いつもと違う感じだ。
「それはアルとかヘラには言えない話なんですか」
それも気になる。
「あの二人はこの国の住民だから話していいか自信が無いのだ。ホクトは元は他の世界の人間だから第三者的な目で見る事が出来ると思うのだ」
どういう意味だろう。
「まるでこの国をどうにかしそうな感じですね」
「その可能性もあるのだ」
それはかなり大事だ。
「でもまだそこまで辿り着けていないのだ。まだ文字通りの入口で止まっている状態なのだ。まずは見てからなのだ」
アン先輩は歩き始める。
何処に向かっているかは途中でわかった。
実験棟だ。
「実験室ですか、それとも下ですか」
「下の方なのだ」
つまりこの前の穴の中という訳か。
そう言えば気になる事がある。
あそこは遺跡だと聞いた気がするけれど、それらしき物は見かけなかった。
発見したのは他の世界から落ちてきたらしい遺物だけだ。
肝心の遺跡は姿を見ていない。
遺跡は既に発掘調査を終え穴以外の痕跡が無くなったのだろうか。
それとも……
階段下で魔法を解除して下に降りる。
「念の為上の欺瞞魔法を元に戻しておくのだ」
人払いを兼ねてという事だろう。
階段を降りながら俺は聞いてみる。
「遺跡はまだ現存するんですか」
「現存するのだ。でも入る事が出来ないのだ」
「鍵がかかっているのですか」
「それを含め、見て考えてホクト自身の感想を教えて欲しいのだ」
うん、わからない。
とにかく実際に見て見るしかないらしい。
長い階段が終わって道が水平になる。
しばらく歩いて最後の角を曲がった先でアン先輩は立ち止まった。
もう前には外というか穴の中が見える。
「魔法で少し土を動かすのだ」
前方で砂埃が立つ。
だけれどこっちの通路までは入ってこなかった。
「今回は埃が来ませんね」
「私も学習したのだ」
なるほど。




