§70 次の活動の必要装備
「昨日とかは何か食べたか」
「水、は、飲ん、だ」
俺以上に悲惨な状態だったようだ。
今日来てよかった。
動きがあまりに悲惨なので背負っていたバックから魔法杖を取り出す。
「軽治療の魔法をかけるぞ。何もしないよりましだろ」
簡単な魔法だから呪文も特に必要ない。
それでもきっちり魔法一回分は消費するけれど。
アルがほっと息をついたのが聞こえた。
「かなり楽になった。ありがとう」
そう言ってゆっくりと床から起き上がる。
俺は手にしていた紙袋をテーブル上に出す。
「まあ食え。おにぎりと牛乳を持ってきた」
「すまん。それにしても体質ながら情けない」
「いや、俺も今朝まで動けない状態だったしさ」
そう言えば自分に治療魔法かけておけばもうすこし復活も早かったかな。
まあ今頃気づいても後の祭りだけれど。
アルはゆっくり牛乳を口にし、それからおにぎりを食べ始める。
「やっぱり何かを食べると落ち着くな。治療魔法のおかげも大きいと思うけれど」
「メル達が連絡が取れないと心配していたぞ」
「魔法で連絡が来ていたのはわかっていた。でも全身が動ける状態じゃ無かった。金縛りに遭ったような感じだった」
うん、わかる。
俺も理由こそ違え昨日は同じような状況だったからさ。
アルはおにぎり二個を平らげ紙パックの牛乳を飲みきってふうっと息をつく。
「それにしても済まない。本当に助かった。やっと人間に戻れた感じだ」
それまではゾンビだったのだろうか。
でもこの世界にゾンビという概念は……無い様だな。
まあ気持ちはわからんでもない。
さて、本題に入るか。
「それでさ、アン先輩を始めいつもの皆さんからお誘いだ。昼食の時に今後の活動について話し合おうってさ。今度は遺物等の発掘だそうだ。どうもこの近くでそう言う物が良く出てくる穴場をアン先輩が知っているらしい」
「何か面白そうだな」
アル、のってきた。
「それで詳細は?」
「七の鐘の後、食堂で昼食を食べながら相談。どうする、行けるか?」
何せさっきの状態を見ているから無理にとは言えない。
今でも手に震えがあったり本調子じゃないのは明白だし。
「いや、大分楽になった。昼に食堂くらいなら大丈夫だろう」
「それじゃ七の鐘で食堂だな」
「ああ」
本当に大丈夫だろうか。
まだかなりふらふらしているし。
でもまあ、昼に来ないようならまた様子を見に来ればいいか。
一時を争う様な状態では無いし。
「それじゃまたな」
「ああ。本当に助かった。ありがとう」
俺はそんな訳でアルの部屋から出る。
◇◇◇
そんな訳でお昼の食堂。
アルも無事に到着していた。
あの後、シルダで手に入れた魔法の本で治療魔法を練習。
何とか使える様になったので自分にかけまくってきたとの事だ。
アルは魔力を一応持っているから、回復を待ちながらなら何回でも魔法を使える。
それにしてもその為に短時間で治療魔法をマスターしたのか。
流石学年の最優等生。
取り敢えず俺の魔法杖をアン先輩に充填して貰っておく。
あの後俺自身にも治療魔法を一回使ったので残り一回になっていたから。
まあそのおかげで何とか普通に動ける様になったけれど。
「それにしても実質二発という制限はきついな」
ついつい愚痴を言ってしまう。
「贅沢を言わないのだ。魔法を使えない人だって普通に多いのだ」
魔力と腕力双方が反則レベルな方にそう言われてしまった。
「そうですわ。私も使えませんですし」
「私もだよ」
この二人はまあ、魔法が使えないからしょうがないな。
「でもラインマインは私よりいいと思いますわ。その分力があるし、その気になればアムへもカイドーへもその日のうちに行ける体力もありますから」
ヘラの台詞は確かにもっともだ。
「魔法も万能でない。むしろ日常で使える事はあまりない。ホクトの適応具合が異常なだけ」
メルはそんな事を言う。
確かに俺はレマノの知識があるから、魔力さえあれば相当高度な魔法も使える。
でも実質二発限定と比べるとメルの方がよっぽどいいと思うのだけれど。
でも何か話がかなりわき道にそれてきたなあ。
まあ元は俺のせいだけれど。
「それはともかく、発掘って何処でどんな感じなんだ」
そんな訳で強引に話を戻す。
「場所は秘密、まずは必要な装備からなのだ。
○ 汚れてもかまわない服上下
○ 汚れた物を入れても大丈夫な袋
○ 両手が自由になる背負えるバッグ
○ シルダで手に入れた魔法ライト
あと、大きめのシャベルは実験室の戸棚に入れてあるのを使うのだ。
他に魔法杖とか必要そうな物は各自適当に判断して持ってくるのだ」




