§68 走れ!カウフォードへ!
昔誰かが言いました。
家に着くまでが遠足です。
その言葉の意味を噛みしめているのは誰だろう。
アルか、メルか、ヘラか。
それとも俺か。
サカイの港へは予定通り早朝に到着した。
俺達はそれぞれ行きより大きく重い荷物を背負って歩き始める。
一応疲労低減の魔法はかけた。
アン先輩が補給してくれる事を了解してくれたからだ。
それでも荷物は重いしカウフォードは遠い。
十二離の距離は伊達じゃ無い。
「疲労低減魔法もあるし行きより涼しいし、少しは楽だよね」
誰よりも荷物が多いのに一番楽な感じのラインマインがそんな事を言う。
「何なら走って帰ってもいいのだ」
同じく荷物がとんでもなく多いのに楽そうなアン先輩。
残りの面々は返事をする余裕が無い。
サカイからカウフォードまではゆるいゆるい登りだ。
その傾斜を感じるくらいまで疲れてしまっている。
寝たのが船の中で布団やベッドより安眠できていないのも原因のひとつかな。
風が吹くと足取りがふらつく。
それくらいふらふらな状態。
疲労低減魔法四回、つまり二刻かけてやっとあの水場に到着。
強靱種の二人以外は倒れ込むように休憩所へ。
「ここから歩いて一刻半だったよな」
「行きはね。でもこのペースだともう少しかかるかも」
アルあたりはもう限界だ。
誰だアルのザックに余分な荷物を詰めたの。
まあそう言っても始まらない。
「何ならカウフォードに向かう荷馬車で空いているのがあるか、聞いてみる?」
ラインマインがそう提案。
「頼む……」
「お願いしますわ」
「同じく」
アル、ヘラ、メルからそんな返事。
この三人はもう限界だろう。
ラインマインが羨ましい程軽やかな動きで休憩中の荷馬車と交渉を始める。
俺達は動けずにただ待っている。
アン先輩だけは余裕そうに売店で買った団子を食べているけれど。
そして。
「三人までなら荷物込みで大丈夫だって」
ラインマインの声が聞こえた。
三人か。
そういう事は俺が歩きだな。
まあ仕方無い。
アル達三人にこれ以上歩けというのは無理だ。
「じゃあアル、メル、ヘラ、載せてもらいな」
「いいのかホクト」
「僕は何とか歩けるし大丈夫。アン先輩がいれば色々魔法も使えるし」
本当はあまり大丈夫な気はしない。
でもあの三人よりはましだろう。
そう自分に言い聞かせる。
「じゃあ悪い」
「すみません」
「ごめん」
三人はラインマインやアン先輩に荷物を持って貰いつつよろよろと荷馬車へ。
さて、仕方無い。
取り敢えず水場で水を飲んで顔を洗ってと。
頑張って歩くかと気合いを入れていたらアン先輩がにやりと笑って口を開く。
「どうせ疲れるなら短時間で行った方がいいのだ。筋力強化魔法を使えるのならガンガンに重ねかけすると強靱種並に走れるのだ。前に誰かが言っていたのだ」
本当かなと思って考えてみる。
でもレマノの知識の中にはそんな情報は無い。
「魔力は充填するのでやってみるのだ」
なら仕方無い、やってみるか。
『筋力強化!』
『筋力強化!』
「ほい充填」
アン先輩が杖を奪って魔力を充填して返してくれる。
『筋力強化!』
『筋力強化!』
お、何か身体が軽くなったような気がするぞ。
「四回もかければ充分だと思うのだ。それでは小走りペースで、半刻程度でカウフォードまで走るのだ!」
おいおい。
でもアン先輩が走り出してしまった。
仕方無く俺とラインマインも荷物を背負って後を追う。
アン先輩も強靱種本来の全力で走っている訳では無い。
荷物無しならいつもの俺でもついていける程度の速さだ。
「これなら魔法が切れる前にカウフォードに到着するのだ」
「でもホクト、大丈夫」
うーん、これならばだ。
「何とか走れそうだ」
ザックの背負い紐等をきつめに引いて調整。
身体に極力密着させる。
あとは荷物と身体がぶれないようにして手と足でバランスをとって走れば大丈夫。
わかれば案外簡単だ。
「確かにこれなら連続して走れそうだ」
「そうなのだ。強靱種が荷物を持って走る時もこんな感じで走るのだ」
「実際はもうすこし速度を出すけれどね」
そんな訳で速めのランニングくらいの速さでカウフォードを目指す。




