§44 船の中にて
船室には窓が無いし天井も低い。
でも甲板には基本出入りは禁止。
明るさもいくつかある明かり取りの穴からだけなので結構暗い。
昼間ならもう少し明るいのだろうけれども。
まだ少しでも明るいうちにお弁当を食べておくことにした。
六人の中央に弁当箱を並べる。
どのお弁当も主食の御飯は大きいおにぎり二個。
日本のコンビニで売られている大きなおにぎりより更に二回り大きい代物だ。
それに焼き鳥や卵焼きやかまぼこ等のおかずがついている感じ。
おかずの数が少ないわりに大きめなのは揺れる船上でも食べやすいようにだろう。
早速皆で食べ始める。
おにぎりもおかずも人がかじったのを気にせず食べるというスタイルだ。
間接キスという奴だがもういい加減俺も慣れてきた。
そんな訳でラインマインが食べた後のおにぎりをいただく。
中は甘辛く煮た鶏肉のそぼろだった。
「なかなか美味しいな」
「そうだね」
アルやメル、ヘラも元気を取り戻したようで思い切りよくぱくついている。
そんな訳でおにぎりもおかずも圧倒言う間に消えて行った。
俺は全部でおにぎり一個分と焼き鳥一片、卵焼きくらいしか食べていないのに。
まあ俺自身もそれで充分お腹いっぱいという感じなのだけれど。
さて、片付けたらもう寝るしか無い。
カードゲーム等も一応持ってきている。
俺が元の世界の物をコピーしヘラの家で発売したものだけれど。
異世界なんだから商品化権とかは気にしなくていいだろう。
ちなみにウノじゃなく『壱』、オセロじゃなく『白黒』だ。
でも、暗すぎてそれを楽しむ雰囲気でも無い。
そんな訳で。
「寝るか」
バックから着替えの包みを出して枕代わりにして横になる。
先頭側からアル、メル、アン先輩、ヘラ、ラインマイン、俺という順。
「それにしてもこの船、揺れないね」
ラインマインがそんな事を言う。
確かにそう言われればそうだ。
揺れを全く感じない。
「そういう魔法」
便利だな、魔法って。
そんな訳で、仮眠というか実際は熟睡タイム。
時間的にも夜だし、昼間結構歩いたので疲れているし。
割と簡単に眠りに落ちた。
◇◇◇
何か寝苦しい夢を見たような気がする。
起きて最初に気づいたのは、何か重くて温かくて柔らかい感触。
それが何か気づいた瞬間、俺は金縛り状態になった。
ラインマインだ。
思い切り俺に抱きついた態勢で、しかも半身乗り上げているに近い状態。
どうもこいつはあまり寝相が宜しくない模様。
なるほど、これは確かに寝苦しい夢を見るよな。
なんて落ち着いて考えられる状態じゃ無い。
言っておくが、この国だってこの体勢はアウトだ。
回りが暗くてこの格好が他から見えないのが幸いって感じだ。
ついでに言うと俺的にもアウトだ。
健全な青少年としては色々厳しい。
そんな訳で色々やばい感じになる前に脱出する事に決定。
取り敢えず腕を押しのけてと。
空いている左腕で腰の辺りを支えて、ゆっくり俺の身体を横に引き抜く。
うっ、この右腕で感じる柔らかい感触は。
でもそんな事を気にしてはいけない。
意識するとやばいから。
でも確かに柔らかい。
そしてラインマインはちょっと発育がいいな。
そんな訳で苦闘すること数分。
何とか脱出に成功。
ラインマインの寝息は変わらない。
どうやら起こさずに済んだようだ。
問題は今の移動で色々な感触を味わってしまった俺の方。
わざとじゃないんだ、勿論。
でも確かに残る色々な感触。
おかげで俺はなかなか眠れない。




