§216 エピローグ あるいは次のプロローグ
学年末試験も無事終了。
ヘラとラインマインは躍進の十一番と十二番。
メルは安定の七番。
でもやっぱりアルが一番で俺が二番だったのはちょっと悔しい。
アン先輩はあっさりカウフォード学園の上位高等学校に合格。
春合宿にもしっかりついてきた。
なお春合宿の舞台はあのラインマインと二人で行った島。
なお今まで開発した物の他、折りたたみ出来るテーブルとイスも作成して使用。
この辺はヘラに頼まれたものでは無いけれど結果的には便利だったので、結局またヘラの実家に持込。
キャンプ用として以上に会議用や集会用として使えるのではないかとの事だ。
軽くて小さくなるので。
そう言えばヘラも魔法が使えるようになった。
ただ俺達の魔法とはあまりに性質が違う魔法だ。
物の原価を知る魔法とか帳簿を間違えずに計算する魔法とか。
算術の試験はこの魔法のおかげで満点だったそうだ。
「もう少し夢がある魔法が使えてもいいと思いますわ」
とはヘラの言い分だ。
俺達は実にヘラらしい魔法だなとただただ呆れるだけだったけれど。
さて、そうこうしているうちに二月も終わり三月に。
今年は既に校内の各掲示板に部員募集のポスターを貼ってある。
さらに今日の午後行われた新入生相手のオリエンテーションで技術研究会の説明をしてきたところだ。
なお説明はアルとヘラによって行われた。
こういうもっともらしい説明とかさせるのはこの二人が適役だ。
そして今は放課後、いつもの実験室で新入生が来ないかなと待っているところ。
「去年儲けた金額をプレゼンすれば絶対に集まったのに」
「今年も稼げるかはわからないだろう。既に色々便利道具を作ってしまったしさ」
「それにあんまり集まっても活動に困るしさ。舟も十人ちょっとで定員だし」
「取り敢えず新人歓迎合宿やって、魔法道具作りを教えてってところかな」
「あと少しずつヒントを出して遺跡の謎を解かせないとな。上手くやれば使える魔法使いが増えるし」
そんな事を言いながら新人が来るのを今か今かと待っている状況。
昨年作った作品類も教室の後ろに並べて陳列している。
いつ新人が来てもすぐ説明できるように。
なおもし来なかった場合や見学だけの場合に備え、フライヤーも用意してある。
あまりに誰も来ないようなら新入生相手に配布する予定だ。
「まあ今日は入学式にオリエンテーションだろ。そんなにすぐに研究会を覗きにくるかな、普通」
「昨年の事を考えると当分待たないと駄目かもね」
「でも今日のオリエンテーションでは結構反応は良かったぞ。新入生が並んでいる後ろから浮遊機でヘラが現れる演出はかなり反響があったし」
「でも天井こすりそうで結構怖かったわ、あれ」
そんな話をしている時だ。
メルがこっちを向いて目配せする。
俺達もすぐ気づいた。
今実験棟に新入生が三人程入った。
そして階段を登ってくる。
「来た、かな」
小さい声でラインマイン。
「多分ね」
ヘラがそう言って頷く。
お茶の用意も既に出来ている。
あの湯沸かし器で新入生自身の手で沸かしてもらう予定だ。
お茶の葉っぱは取り敢えずそこそこいいのを仕入れておいた。
お茶菓子の饅頭とせんべいもスタンバイしている。
ふと思う。
昨年の一昨日に俺はこの国に来たんだよな。
レマノさんと色々あってこの学校に入学して。
ラインマインやヘラ、アルとメルと知り合って。
アン先輩にこの部屋に荷物運びの要領で連れてこられて。
この面子と色々作ったりあちこちへ行ったり。
絶対に日本に帰れないことに気づいて絶望した時もあったな。
でも今ではこの場所が一番俺にとってしっくりくる。
今の俺の居場所はきっとここだ。
ラインマインも隣にいてくれるしさ。
まもなく新入生がやってくる。
俺達はアン先輩のように後輩を色々導いてやれるかな。
色々な事を経験させてやれるかな。
不安はまだまだ山ほどある。
きっと期待と同じくらいに。
トントン、トン。
実験室の扉がノックされる。
「どうぞ」
ラインマインがそう応えて、そして扉が開く。




