§102 旅行の終わり
翌日。
朝食を食べ終わった後は宿を出払って荷物を船に積み込む。
そしてまだ気温が低い朝は昨日と同様釣りに専念。
魚のアラを寄せ餌に使うカゴ釣りだからか昨日以上に釣れまくる。
クーラーボックス代わりの木箱が目一杯になったところで釣りは終了。
宿の桟橋に係船させてもらって海水浴に。
昨日は採取メインだったから泳ごうと思って新事実が発覚。
俺とヘラ以外の四人は泳いだことが無いそうだ。
そんな訳で波があまりなくそこそこ深い部分で練習開始。
「すぐ足が付いてしまう。それに何も見えない」
「慣れです。慣れれば水中で目を開けられますよ。あまりはっきりとは見えないですけれど」
「でも確かにすぐ足が着いてしまうわよ」
ヘラだけは平泳ぎに近い形で自在に泳いでいる。
「まずは浮く練習からかな。目を瞑っていいから頭を水面下に突っ込んで腰と足を上げる」
「でも私、力を抜いたら全身沈んでしまうんだけれど」
「私もなのだ」
強靱種は海水より比重が重いという新事実が発覚した。
まあ色々やること一刻。
ラインマインとアン先輩、メルは何とか泳げる様になった。
ラインマインとアン先輩は強靱種の体力を活かしたパワー泳法。
バタ足で無理矢理足が沈むのを防ぎ、平泳ぎの水かきで首から上を出す方法だ。
メルは取り敢えず普通にすいすい泳げている。
でも何処となく魔法でチートをしているような気配。
呼吸をする時に必ず目の前の水面が低く平らになっている様に見える。
でもまあいいか、泳げれば。
そして問題はアルだ。
まあある意味予想通りだったけれど。
「最初はあえて呼吸を気にしない事。難しいけれどさ。頭を水面下に思い切り突っ込んで腕で水を思い切りかいて」
「わかった。でも疲れるなこれ」
「水泳は全身運動ですからね。でも慣れると最小限の動きで泳げますわ」
「ヘラは上手だな」
「万が一船から落ちたときのために、小さい頃から練習させられましたから」
なおこの時点で強靱種二人は既に暴走している。
パワーに任せてちょっと遠く百腕くらいある岩まで泳いだり。
そこから波に乗った感じで泳いで戻って来たり。
「あそこまで出来ると楽しいだろうな」
アルがそう羨ましそうに言うくらい。
「何事も練習ですわ」
「同意」
メルは結構自由に泳げている。
それでもあと半刻くらい練習した結果、アルも少しだけ泳げる様には成った。
そんな訳で十腕位はなれた岩場に行ってみたりいろいろやって。
昼ご飯はまたおにぎり買って魚を捌いて刺し盛り。
黒鯛等はウロコを取るのが大変だったけれどやっぱり美味しい。
貝の味噌汁も思った以上に美味しかった。
午後は満潮後の一番早いタイミングで出発。
途中メルの殺人的な運転とかアン先輩の更に危険な模範演技運転とかあったけれど、何とか無事明るいうちにカウフォードに到着。
取り敢えず魚は今夜分を除いて明日まで溶けない量の氷を入れて実験室で保管。
そして食堂開始までに急いで晩ご飯分の魚を捌く。
時間が無いので刺身だけ。
頭料理とかアラ煮とかはまた今度。
夕食の時に食堂へこっそり持って行って、皆で囲んで食べる。
「このためだけでもチャーシにまた行く理由が出来ましたわ」
「そうだね。やっぱりこの刺身美味しいさ」
「同意」
容赦無く食べる女性陣と若干お疲れ気味のアルと。
まあそんないつもと同じ感じでチャーシ旅行は無事終了したのだった。




