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【連載完結】後悔しても遅いです。捨てられ令嬢の私は、一途な運命の人と幸せになりますので、さようなら。  作者: 逆立ちハムスター


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そして永遠の愛を誓って

グランツ帝国での穏やかで満ち足りた日々が始まってから、およそ一ヶ月が過ぎた頃。

帝都の公爵邸の応接室にて、私とユリウス様は、酷く見窄らしい姿をした二人の男と対峙していた。


「……セレナ。頼む、どうか戻ってきてくれ……っ! お前がいないと、何もかもが駄目なんだ!!」


かつては輝くような金髪と傲慢な自信に満ちていたエルミナージュ王国の第一王太子、レオンハルト殿下。そしてその隣で、幽鬼のように頬をこけさせた私の実父、ヴァレンタイン公爵。

二人は今、帝国のふかふかな絨毯に額を擦り付け、私に向かって必死に命乞いのような懇願を繰り返していた。


「顔をお上げください、レオンハルト『元』殿下。帝国の土を汚されては困りますわ」


私が冷ややかにそう告げると、彼はビクッと肩を震わせて顔を上げた。

そう、彼はもはや王太子ではない。セレナという実務の要を失い、帝国を完全に敵に回したエルミナージュ王国は、わずか一ヶ月で経済破綻を引き起こした。その全責任を負わされる形で、彼は王太子から廃嫡され、平民以下の罪人として裁かれる寸前なのだという。


「元だなんて言うな! 私が王太子に戻るには、お前の力が必要なんだ! リリアのやつは、国庫が空だと知るや否や、金目のものを持ち出して他国の豪商と逃げやがった……! あんな性悪女に騙されていた私が愚かだった! 私は、お前だけを愛していると今ならわかるんだ!」


なりふり構わず叫ぶレオンハルト。

横では父も「セレナ、愛する娘よ! ヴァレンタイン家を救ってくれ! このままでは私は反逆罪で処刑されてしまう!」と泣き喚いている。


かつての私であれば、彼らの無様な姿に少しは同情したかもしれない。

けれど今の私の心には、さざ波一つ立たなかった。ただ、道端に落ちている石ころを見るような、完全な無関心があるだけだ。


「……おかしなことを仰いますね」


私は扇を優雅に開き、口元を隠してふふっと笑った。


「私が婚約破棄を言い渡されたあの夜、皆様は仰いましたよね。『お前のような冷酷で血も涙もない女はいらない』『これまでの公爵家の功績に免じて許してやる』と。私は皆様のご期待に応え、すべてを置いて立ち去っただけですわ。それの何が不満だというのでしょうか?」


「そ、それは……っ! 私が間違っていた! だから、どうか……!」


「それに」と、私は扇をピシャリと閉じて、彼らの言葉を遮った。

「私があなたの元へ戻るなど、天地がひっくり返ってもあり得ません。なぜなら私は今、世界で一番幸せなのですから」


私の左手には、眩い光を放つ『星の誓い』のダイヤモンドが輝いている。

それを見た瞬間、レオンハルトの顔が絶望に歪んだ。


「気安く私の妻に話しかけるな、下衆が」


ずっと私の隣で静観していたユリウス様が、氷のような低い声で告げた。

途端に、応接室の空気が物理的に凍りつく。レオンハルトと父は、その圧倒的な覇気と殺気に悲鳴すら上げられず、カエルが蛇に睨まれたように床に這いつくばった。


「貴様らがどの面を下げてここへ来たのかは知らんが、エルミナージュ王国はすでに我が帝国への莫大な負債を抱え、実質的な属国として解体されることが決定している。貴様らの国王は、己の保身のために貴様ら二人を帝国への『貢ぎ物』として差し出したのだぞ。自覚がないのか?」


「なっ……!? 父上が、私を……!?」

「そんな、馬鹿な……!」


「貴様らには、帝国の北の果てにある魔石鉱山で、一生をかけて労働で借金を返済してもらう。私の愛する妻をあそこまで追い詰めたのだ。死ぬまで休めるなどと思うな」


ユリウス様が指を鳴らすと、控えていた帝国の近衛兵たちが雪崩れ込んできて、絶望に叫ぶ二人を両脇から抱え上げ、無慈悲に引きずり出していった。

「セレナァァァ! 助けてくれぇぇぇ!」という哀れな叫び声は、分厚い扉が閉まると同時に完全に途絶えた。


静寂が戻った応接室。

私は小さく息を吐き、ソファに深くもたれかかった。


「……終わったね、セレナ」

ユリウス様が、先ほどの冷酷な表情から一転、春の陽だまりのような優しい笑顔を向けて私を抱き寄せた。


「はい。これで本当に、私を縛っていた過去はすべて清算されましたわ」


「彼らの顔を見て、心が痛んだりはしなかったかい?」


心配そうに私の髪を撫でるユリウス様に、私は彼の大きな胸にすり寄るようにして微笑んだ。


「まったく。だって私の心はもう、ユリウス様への愛でいっぱいで、過去の嫌な思い出が入る隙間なんて一ミリもありませんもの」


「……っ! セレナ、君という人は本当に……!」


ユリウス様は顔を真っ赤にして、まるで宝物を扱うように私をきつく、優しく抱きしめた。

帝国中から恐れられる最強の魔剣士が、私の一言でこんなにも可愛らしく照れてしまう。その事実が、私の心をたまらなく甘く満たしていく。


「来月には、帝都の大聖堂で結婚式だ。世界中の賓客を招いて、君がどれほど美しく、私がどれほど君を愛しているかを見せつけてやらなければね」

「ふふっ、お手柔らかにお願いしますね。あまり大掛かりすぎると、私が緊張してしまいますから」


「駄目だ。君には、これまでの人生で受け取れなかった分の幸せを、何千倍、何万倍にして受け取ってもらう義務がある。覚悟しておくことだね、私の愛しい人」


そう言って、ユリウス様は私の顎をそっと持ち上げ、誓いの口づけを落とした。

甘く、優しく、そして決して離さないという強い意志が込められたキス。


窓の外では、帝都の美しい青空がどこまでも広がっている。

かつての私は、誰かに捨てられることを恐れ、必死に自分の価値を証明しようと足掻いていた。けれど今は違う。

私はありのままの自分でいるだけで、この胸を満たす愛を与えられ、そして与えることができるのだから。愛すべき未来に向かって、いざ。

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