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読まれる小説・noteの書き方のコツは名著に学べ/多忙な書き手のための3分で分かる執筆術  作者: 雨宮 徹


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人物描写は、読者への配慮を忘れるな(涼宮ハルヒの憂鬱)

「登場人物の描写をどうすればいいか分からない」という経験をした人も多いだろう。私もそうだ。そんな時に役立つのが『涼宮ハルヒの憂鬱』だ。今回は、「登場人物の描写」を扱う。



■涼宮ハルヒは、どう描かれているか



早速、『涼宮ハルヒの憂鬱』で、登場時にどのような表現がされているか引用する。


長くて真っ直ぐな黒い髪にカチューシャつけて、クラス全員の視線を傲然と受け止める顔はこの上なく整った目鼻立ち、意志の強そうな大きくて黒い目を異常に長いまつげが縁取り、薄桃色の唇を固く引き結んだ女。

『涼宮ハルヒの憂鬱』角川スニーカー文庫



第一印象は、「一文が長い」だろう。今の時代は「短文にしよう」が主流だ。当時と事情は違うが、こちらの書き方の方が良い。具体的にどこがいいか。短文を意識するならば「クラス全員の視線を傲然と~」の傲然との部分はサクッと切り捨てられるだろう。さらに言えば「異常に長いまつげが縁取り」もなく、「薄桃色の」という描写もないかもしれない。今風に書き直すと、こうではなかろうか。



「長くて真っ直ぐな黒い髪にカチューシャをつけている。クラス全員の視線を受け止める顔は整っている。意志の強そうな目で、唇を固く引き結んでいた」



現代風に書いたが、これが正解とは限らない。しかし、こちらだと読者の頭の中で映像化されない。つまり、「美人で意志が強いのだろう」で終わってしまうのだ。現在、書籍化される場合は、メディアミックスが前提になることもある。すると、漫画やアニメにする時のイメージが湧く方が有利だというのが持論だ。




■描写を長く、最後に一言で



先ほどの例だけでは、ピンとこないかもしれない。次は、長門有希の場合だ。



白い肌に感情の欠落した顔、機械のように動く指。(中略)身も蓋もない言い方をすれば、早い話がいわゆる神秘的な無表情系ってやつ。

『涼宮ハルヒの憂鬱』角川スニーカー文庫



途中を省略したが、先ほどの例のようにイメージしやすい描写が続いた。そして、最後に一言で「無表情系」でまとめてしまう。これならば、読者が詳しい外見を読み飛ばしても問題ないだろう。作者は、そこまで計算して書いたように思われる。あくまでも、個人の推測だ。




■では、現代の主流は?



『涼宮ハルヒの憂鬱』は、2003年に発売されている。20年以上も前の作品だ。では、最近の作品はどうか。手元にある『銀河放浪ふたり旅』の第一巻を参考にしてみる。



部屋の真ん中に座っていたのは、二足歩行の人物だった。地球人と比べると体毛がかなり多いが、思っていたよりかなり人間に近い姿をしている。顔立ちは人間のそれに近いが、その顔も含めて全身を体毛に覆われている。

『銀河放浪ふたり旅』電撃文庫



『涼宮ハルヒの憂鬱』と異なり、短文で書かれている。これは宇宙人の描写だからこそ、簡潔なのだろう。あれこれ説明すると、読者に負担がかかり、離脱してしまう。描写の過多も時には問題になるのだ。作者は、それを理解した上で、このような形を採用しているのだろう。「体毛が多い宇宙人」については、シーンごとに特徴を小出しにしている。



怒りの感情を発露すると、リティミエレの体毛は逆立つ。

『銀河放浪ふたり旅』電撃文庫



これにより「今後は、体毛の描写をすれば、喜怒哀楽が伝わる」というギミックを組み込んでいる。別の宇宙人は、下記のような描写だ。



宇宙くらげ。そんな表現が、カイトの頭の中を駆け巡る。代表ことテラポㇻパネシオは、地球でいうクラゲに酷似した生物だった。触腕の先まで換算すれば、カイトと同じくらいの体長だ。百八十センチ前後。なんというか、でかい。

『銀河放浪ふたり旅』電撃文庫



今回は「宇宙くらげ」という言葉で読者に一発で分かる工夫がされている。先ほどの『涼宮ハルヒの憂鬱』とは逆だ。本作が手抜きというつもりはない。むしろ、逆に手が込んでおり、見本にすべきだ。結論から入り、詳細に分け入っていく。これが現代の人物描写の一例だ。




■まとめ



二冊を取り挙げたが、どちらにも言えるのは「一言でまとめる力」だ。力というより、「読者への配慮」という方が正しいかもしれない。作者が設定を長々と書かずに、スパッとまとめる。今後は、このような手法が主流になっていくに違いないだろう。

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