渋沢栄一『論語と算盤』に学ぶ、ブルーオーシャンの創り方(論語と算盤)
小説には流行り廃りがある。プロ・アマ問わず、「このジャンルの流行りはこれだ」となっており、各ジャンルの成長が停滞しているように思う。これは、これから執筆する人に大きく影響を及ぼす。つまり、「自分も流行りを追わなければ読まれない・売れない」と。しかし、安易にその考えに飛びつくのは良くない。今回は、『論語と算盤』を参考図書に持論を展開する。
■今の流行りとは
そもそも、今流行っているのが何か分からなくては話にならない。私が思うに、下記キーワードが流行の中心にいるように感じる。
・成り上がり・チートスキル・追放ざまぁ・スローライフ・悪役令嬢・現代ダンジョン・配信もの・VRゲーム・モキュメンタリーホラー
どうしても、異世界ファンタジーでよく見るキーワードに集中してしまう。他ジャンルとしてミステリーやSFなどがあっても、各小説サイトでの立場が厳しいことを如実に反映している。読者によっては「モキュメンタリーホラー」がどういうものか分からないかもしれない。昔のホラーは直接的だった。つまり、怪異が襲ってくる類だ。それが2020年代前半から、モキュメンタリーホラーが流行りだした。新聞記事やネット掲示板の形式を借りて、実際に存在する不気味な事件のように見せる手法だ。このように、現在の流行りは分かってもらえたかと思う。
■流行り=正義ではない
流行りに乗る理由は大きく二つある。まず、第一に流行っているということはテンプレがあり、一種の作法のようなものがある。つまり、作法を守れば書きやすい、読まれやすいのだ。もう一つは、書籍化を目指すとなると、出版社の顔色を窺う必要があるからだ。出版社は、利益確保のために流行りものしか出版しないのが実情だ。もちろん、慈善事業ではないから、当たり前ではある。ここで、『論語と算盤』の一節を引用したい。
そもそも何かを一所懸命やるためには、競うことが必要になってくる。競うからこそ励みも生まれてくる。いわゆる「競争」とは、勉強や進歩の母なのである。しかしこれは事実である一方、「競争」には善意と悪意の二種類があるように思われる。踏み込んで述べてしまえば、毎日人よりも朝早く起きて、よい工夫をして、知恵と勉強とで他人に打ち克っていくというのは、まさしくよい競争なのだ。しかし一方で、他人のやったことが評判がよいから、これを真似してかすめ取ってやろうと考え、横合いから成果を奪い取ろうとするのは悪い競争に外ならない。
『現代語訳 論語と算盤』ちくま新書
上記の文で言うならば、「悪い競争」が多いように思う。つまり、悪意はないが、「他人のやったことが評判がよい」から真似するということだ。ここで、立ち止まって考えて欲しい。先ほどのキーワードは、異世界ファンタジーなどの特定のジャンルでしか使えないのだろうか。否、他のジャンルにも使えるのだ。
■流行キーワード×異なるジャンル
流行ものばかり書いていると、どうしても没個性的になってしまう。私が提案したいのは「流行キーワード×異なるジャンル」だ。具体的には下記のようなイメージだ。
・ミステリー×スローライフ・ホラー×悪役令嬢・SF×流行キーワード
ミステリーのスローライフものは、実は先行例に近いものがある。それは、「日常の謎もの」だ。これは、基本的に身近な謎を取り扱うので、スローライフ的要素が含まれる。「日常の謎もの」も主要ジャンルだが、書籍化されるミステリーはどうしても殺人事件に偏っている。悪役令嬢は基本的に転生が前提だ。ホラーとは相性が悪く見えるが、ホラー=現実世界という固定概念が邪魔をしているだけで、転生ものがあってもいい。SFは、何でもありなジャンルだ。未来は誰にも分からないのだから、作者の想像次第で、いかようにもなる。転生とは相性が最悪だが、それ以外とは並み以上にはなる。裏を返せば、無難なものしかできないとも言えるだろう。
■まとめ
ここまで見てきたように、小説が埋もれて読まれないのは、飽和状態のレッドオーシャンに乗り込むからでもある。基本的に先行者利益が大きく、追随するものは後手に回る。しかし、流行りを取り入れつつも異なるジャンルで勝負すれば、ブルーオーシャンが広がっているかもしれない。あくまでも、持論である。しかし、大きく的を外してはいないはずだ。固定概念を捨てて、柔軟な考え方を持つべきだろう。




