チュートリアルって大事よね 2
「はい、じゃあ魔物が出るまでさっき研修動画で見た探索する時の注意をどうぞ」
どうぞって、まあそんなに何個もなかったけど。
ここに来る前に研修として見せられた動画自体が、なんと十五分程度だった。
その後鑑定結果を見せてもらった。
山崎葵:ヤマザキアオイ
年齢:二十五歳
レベル:二十五
魔法使いレベル:五
体力:六百二十五
魔力:三百
称号:なんの日ダンジョン初入場者、なんの日ダンジョン魔物初討伐者、なんの日ダンジョン初ボス討伐者
特別スキル:鑑定、アイテムボックス、各属性魔法
一般スキル:身体能力向上(現在二十五倍)上限五十
習得魔法:生活魔法(水、火、洗浄)
使用武器:魔道草刈り機
保持武器:草刈り鎌、片手斧
使用防具:厚手のシャツ、デニム、長靴、軍手、腕カバー、厚手の靴下、下着、日焼けカバー、麦わら帽子
ちなみに、私の鑑定だと特典の情報が詳しく出るけどこれは普通の鑑定の人が見ても出ないのもあるらしいから武器防具の能力が高くなってる以外は話していない。
なんの日ダンジョン初入場特典
この称号を持っている人が魔物を狩った際に、二分の一の確率で望みの食べ物がドロップ、その際魔物のドロップは通常通り
なんの日ダンジョンのみ、毎回ドロップ品あり(他の人は十回に一回ドロップ)
なんの日ダンジョンのみ、ランダムで二から百倍の経験値増大
ボス部屋の魔法陣では質問可能、同じボス部屋での質問は一日一度
魔道草刈り機(なんの日ダンジョンの魔物初討伐祝いに魔道具化)
魔素を燃料にして動く、自動刃こぼれ修復、自動刃研ぎ、自動修復(モーターなど永久使用可能)
ダンジョンの外では使用者の魔力か元の通り燃料で動く。
ボス初討伐お祝い:ボス初討伐に使用した武器防具すべて防御力と自動修復と清潔、及び保持武器は使用者のレベルアップと共に強化、使用者と同等のレベルで攻撃力および防御力向
なんの日ダンジョンだけ毎回ドロップ品があるとか、ランダムとはいえ経験値増大は凄いと思う。
まあ、自動修復も凄いか、草刈り機って結構すぐに調子悪くなるし、これ実は地味に助かる。農作業の相棒という意味でも探索者としてもだ。
「はい、では周囲を警戒しつつどうぞ」
「初めて行くダンジョンは、下調べをします」
うちのダンジョンはそれ出来ないけど、あ、でもボス部屋で次の階層の魔物とかの情報貰えばいいや。
だって質問一日一回できるんだもんね。
「武具防具傷薬は必ず準備し、ダンジョンに入ります」
農作業の恰好でダンジョンボスとも戦った、と言うか力ごり押しで刈ったけど。
自分のレベルと一緒に武具防具が強化されるんだから、周囲の目を気にしさえしなければ問題無し、使える使える。
清潔の機能がついたお陰で、洗濯不要で綺麗な状態を維持できるんだからありがたいよね。
ちなみに、那智さんは革のよろい? 胴体の部分と肩のあたりを硬そうな革で守っているようなものを分厚そうなツナギの上につけていて、足元は革のブーツ、それから革の手袋、武器は槍だ。
ダンジョン協会が持っているマジックバッグも腰につけていて、その他にボディバッグを持っている。
私、アイテムボックスに全部詰めてきてるから、ダンジョン内は武器だけ持って後は無いと言ったら最低限の用意はボディバッグか何かに入れておいた方が良いと教えられたから、ネットで買わなきゃ。
売店には大きなバッグしか売ってなかったんだよね。
「最低限の携帯食料と水は必ず準備します。水は一日から三日分の準備をします」
携帯食料も水も持ってないって言ったら、支部の売店で初心者セットを三日分買わされた。
後、錬金術スキルの人が作った傷薬と解毒剤と麻痺解除薬も一本ずつ。薬は飲んでも傷にかけても良くて、私が買ったのは下級のものだけど、上級のものだと傷薬と言いながら骨折でも大やけどでもすぐに治るんだって。
出も食事に関しては私水出せるし、食料ならジャガイモも小麦粉もアイテムボックスに入っているし、鉄板とフライヤーとオーブンも包丁も入ってる。
紙皿と紙コップとお箸とか、そういうのも一式入ってるんだけど、ダンジョン内で一人で料理して食べることは絶対にないらしい。
私、ボス部屋でジャガイモの時も小麦の時も料理してお腹いっぱい食べたよ。
ボス部屋は例外かな? だってボスを討伐した後は他の魔物出ないもんね。
「魔物と戦う時、どんなに怖くても目をそらさない、目を閉じない」
これは大事だね、怖くて目閉じたりしそう。
魔物って見たことないしなあ、大丈夫かな。これが一番不安だ。
「ダンジョン内で大声を出さない」
これは大事なんだろうな、自分で魔物を呼んでるようなものだしね。
でもジェットコースター乗った時みたいに、自分でどうしようもなく悲鳴が出ちゃうってことはあるようねえ。
「魔物と戦っている自分以外の探索者に、理由なく近づかない。近づく場合は助けが必要か確認する」
これ、うちのダンジョンさんだとしばらく体験できなさそうだよね、一年私一人なんてことだってあるだろうし、家族が上手く覚醒すれば違うかもだけど。どうなるのかなあ。
やっぱりまずは弟の誕生日の時にこっそりと試してみる、だよね。
「魔物を狩り損ねて逃げる場合、魔物を他の探索者になすりつける行為は絶対にしてはいけない。他探索者の獲物を奪う、怪我を負わせる荷物を奪うなどの行為は絶対に禁止」
そんなのされるのもするのも怖いよ、絶対にしないよ。
「ダンジョン内の異変は大至急ダンジョン協会に知らせる。一人で対応しようとしない」
これでラストだったかな、何か抜けてたかな?
「山崎さん、記憶力がいいのはいいことだが、周囲への確認を忘れてる」
「え、あ、すみません」
「謝る必要はないから、魔物来てるからまずは俺が見本を見せるよ」
そう言うと、那智さんは槍を構える。
え、魔物どこ? と私がきょろきょろしつつ那智さんを見ていたら、彼は急に数歩前に踏み出したと思ったら次の瞬間槍を何かに突き刺した。
「え」
一瞬過ぎてよく確認できなかったけど、今のなんだろゴールディンレトリバーぐらいの大きさはあったよね、でも耳が長かった気がする。
え、あれもしかして兎だった? 魔鼠と魔兎が出るとは聞いてはいたけどあんな大きいの?
「ドロップ品はこれ、魔石だよ。あ、次の魔物が来る準備して」
準備と言われて、草刈り機のスィッチを入れる。
すると、ういぃぃんとモーター音がする。
「モーターの音は仕方がないか、あんまり本当は良くないんだよなあ。ほらこっちに走ってくるあれは魔鼠だよ。あいつらはまっすぐ獲物に向かい走ってくるから、草刈り機の場合は……そうだなもう少し低い位置に刃先が来るように構えて待ってるだけでいい」
「え、まっすぐ向かってくる? えええっ」
鼠って、鼠の大きさじゃないよ。あれ柴犬くらいの大きさあるよっ。
「騒がない、ちゃんと見て、腰を落として衝撃に備える」
「は、はいぃぃっ」
うそぉっ。本当にまっすぐ来たっ。
草刈り機ちゃん信じてるからね、君はできる子だ!
「しっかり構えて、刃先が魔鼠に当たったのが分かったらそのまま払いのけるんだ」
「しっかり構えて、払いのけるっ!」
それ草刈り機の動きじゃないよっ。
「ひぃぃっ」
ガツンという衝撃の後、草刈り機のハンドルをぐいぃっとひねり上げる。
「と、とんだっ」
首、首がぽーんて、ぽーんて飛んだよっ。
「こ、これでいいの?」
緊張しすぎて心臓バクバクしてるし、ぜーはーぜーはーと荒い息を吐く。
魔鼠は、首が飛んだ瞬間体も頭も霧散してしまった。
グロい状態にならずに消えてくれるのは、すっごくありがたい。
後に残ったのは、地面に落ちた小さな牙っぽいのとビー玉ぐらいの大きさの赤い石。
「これってドロップ品?」
よかった、魔鼠の肉なんてドロップしなくて。
鑑定すると魔鼠の牙と魔鼠の魔石と出たから、触らずにアイテムボックスに収納してしまう。
「魔鼠の牙って何かに使えるの?」
草刈り機のスイッチを切り、那智さんに尋ねると「その牙と魔石は屑魔石扱いだな」と悲しい返事が返ってくる。
屑魔石扱いというのは、単体では何も使えない。屑魔石は砕いて粉にして錬金術スキルを持っている人が加工すると、キャンプとかに使える燃料になるらしい。
魔法の道具、いわゆる魔道具はそれなりの大きさの魔石でなければ使えないらしく、屑魔石ではそういうのには使えないのだ。
「なんだあ」
「ちなみに、買い取り額はどちらも十円だ」
屑魔石は買い取り額も安い、そんな話を聞くと余計にがっかりする。
草刈り機はダンジョン内の魔素を燃料に動くし、私は近くに住んでるからからいいけどそうじゃなきゃ稼ぎにきて出費の方が多くなりそうだ。
「このダンジョン一層目と二層目は、魔鼠と魔兎が出るんだったよね。それで、那智さんが狩ったのが魔兎」
「そう、研修で入るのは二層目まで、このダンジョンは二十層目まであるが、金になるのは十層目以上の階層だな」
「そこまで一日で行けるもの?」
「一日では無理だな。ここは各階層にボス部屋があるから、ボスを討伐出来れば次からはそのボス部屋の前に飛べる」
「飛べるって、つまり最初にボスと戦わないといけないってこと?」
それ楽勝ならともかく、辛勝とかになる相手なら行ってすぐ大変なことになるってことなんじゃないのかなあ。




