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今日はなんの日、食べ物ダンジョンできました  作者: 木嶋うめ香


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ep.6 探索者登録とか色々手続きとか 5

 頭を抱える二人を見ている間も、私は粛々とベルトコンベアにジャガイモと小麦粉を流し続ける。

 こういうコツコツと何かを続ける仕事は、私の得意分野だ。

 そうでないと経理なんて出来ないと思う。

 計算ソフトや、帳簿ソフトがあるとはいえ、経理って数字と向き合うのが仕事だ。

 でも数字だけでなく、社内の人とのやり取りもある。

 私が勤める会社は、社員五十名程度で派遣さんが五人前後たまに入れ替わりながら勤務してる工場だ。

 以前東京で務めていた会社は卸業をしていたところだったけれど、今は工場の経理事務なのでだいぶ仕事の内容が違う。

 経理がメインの仕事だけど、若干総務の方の仕事も引き受けている。

 なにせ総務人事諸々を引き受けている人と私の二人の部署だから、私経理だけしかやりませんは通じないのだ。

 こじんまりと経営している田舎の会社それが私の勤務している会社で、ハローワークの求人票にアットホームな会社です。と書かれていたが本当にそんな感じだ。

 なにせ社員の付き合いが密だし、プライベートなんてうっかり話したら次の日には社内中に広まる。

 春には花見があり、夏には暑気払いがあり、秋には芋煮会と言う名のバーベキュー、冬は忘年会と年に四回は必ず社内行事として飲み会がある。

 うちの会社の凄いところはそれを金曜日の午後にやるところで、都合が合えば社員の家族も参加できるし参加費は全額会社持ちだったりする。

 勤め始めてそんなに強制飲み会があるのかとおののいたけれど、田舎独特の人付き合いの濃さが社員全員の考え方の根底にあるようで、皆当然という顔で参加している。

 まあね、冠婚葬祭があれば当然近所同士呼び呼ばれするし、地域の行事も多いし男性なんて殆どが消防団に入って活動する土地柄だから、会社の飲み会なんてただで飲み食いできる最高! って感じなのかもしれない。

 私は以前の会社と違い過ぎて、最初は戸惑った。

 でもすぐに慣れた、というかそういう感覚を思い出したと言ってもいい。

 なにせ同級生が皆幼馴染みたいな環境で育ったのだから、濃い人付き合いなんて昔からなのだ。

 勿論そういうのが苦手と思う人もいる、そういう人は大学進学とか就職をして町や村を出ていく。

 そして出ていった先で、周囲の干渉がない生活って楽だなと思いつつ生きていく。

 まあ、どちらの生活もいい所も悪い所もある。

 悪い所に目をつぶりそこで生きることを選ぶか、自分には合わないと出ていくかなんだと思う。

 私は外に出て、恋愛でボロボロになって田舎に戻って来た。

 私の場合は田舎に不満があって出たのではなく、なんとなく専門学校に通って就職を決めただけなので戻ることに躊躇いが無かったのかもしれない。

 そんなわけで田舎に戻り傷心を優しい家族に慰められて、就活して働きだしたわけだ。

 会社はダンジョン協会支部があるこの市とは反対方向にある町にあり、家からは車で二十分程度かかる場所にある。

 私の家がある町がだいぶ田舎なら、会社がある町はちょっと田舎程度に田舎だ。

 私が通っていた高校はこの町にあり、高校時代は自転車で一時間弱かけて通学していた。なにせ公共の交通機関があって無いようなところだから自転車通学は必須だったのだ。

 お陰で高校生の頃の私の体は今よりだいぶ引き締まっていたと思う、大人になると車が必須になるし近くでも車を使うから今の体形はだいぶ怠けている。

 でも田舎なんてそういうものだ、成人済の家族の分だけ車があり、それ以外に軽トラがある。

 そうじゃないと田舎では生活できない。

 運転免許は、高校卒業の年に絶対に取る。なぜならそれが田舎暮らしには絶対に必要だからだ。

 あと飲みに行くのも車を使うから、運転代行だけは何社もある。これも田舎あるあるかもしれない。


「あ、中力粉が終わったので、ここはパン粉流していきますね。それともジャガイモ先にしますか? これが一番多いみたいでまだまだありますが、本当に全部買い取りしていただいて大丈夫ですか?」


 田舎についてつらつらと考えながらベルトコンベアに流していると、アイテムボックス内の中力粉がなくなった。

 私が流すものを切り替えると馬場班長さんに伝えると、馬場班長さんは苦笑いをして私を見ていた。

 なんだろ、私やらかした自覚はあるけれど、苦笑いしてる理由はそれと違う気がする。


「山崎さんはなんて言うか、しっかり会社勤めしている方なんですね」

「どういう意味でしょう」

「いえ、効率を考えてくださっているなと、それだけでなくこちらが取引相手だとちゃんと認識して動いてくださっているなと思いましてね」


 どういう意味なのか分からなくて首を傾げていると、那智さんが馬場班長さんと同じく苦笑いしながら頷いている。


「専業の探索者に多いんだがな、買い取りはどんなものでもしてもらえる。売っている方が偉いという考えが透けて見える態度の人間が多いんだよ」

「どういうことか分からないのですが」


 売っている方が偉いなんて、どうやったら考えられるのか意味が分からないからそう言えば二人は大きなため息を吐く。


「覚醒者って少ないからな。俺も馬場班長も一応覚醒してるが専業ではない」

「はい」


 那智さんも覚醒者だったのか、そうすると親子で覚醒したんだ。


「覚醒者でなければダンジョンに入って魔物は狩れない。でも魔物もダンジョン産の野菜やその他諸々も人気があってどれだけ買い取っても足りないくらいだ」

「え、そうなんだ。じゃあ私安心して沢山刈ってもいいんだね」


 それは嬉しい情報だと喜ぶと、那智さんは違う意味な感じでため息を吐く。

 あれ?


「需要と供給のバランスが悪くて、いくらでも供給して欲しい状態だとしたら、供給者は自分が偉いと思い始めるもんらしい」

「なるほど?」


 なるほどと言いながら、どうしてそこで供給者が偉いとなるか分からない。

 工場って、そういうところ厳しいからね。

 部品の納期が厳しくて生産が滞るとかだと、取引先にひたすら頭を下げなくてはいけなくなる。

 ちなみに、部品の会社が横柄な態度を取るかと言えばそんなことはない、ひたすら納期が厳しくて申し訳ないという状況で、こちらも何とか無理をお願いしてとなる。


「分かってないな。山崎さんが今大量に買い取りに出している小麦とジャガイモは、本部が日本中から搔き集めても依頼が達成できなくて塩漬け案件になってるものなんだよ」


 塩漬け案件って、達成できずに長期間放置してるってやつだよね。

 それが解消になるなら、私も安心して大量に売れるよ。

 だって、迷惑にならないってことだもんね。


「山崎さん、なんかにこにこしてる理由を聞いても?」

「え、私が沢山買い取りしてもらっても、ダンジョン協会に迷惑にならないなら良かったなあって。ダンジョン産のものと、一般的な農作物は競合しないのはネットで読んだから大丈夫かなって思ってたんだけどね。ダンジョン産が供給過剰になって、今までそれを売って稼いでいた人の迷惑になったりするのかなあって心配してたのよ」


 私、変なところで変な心配しがちなんだよね。

 でも私のこの買い取り量は、ある意味チートだからね。

 気になっちゃうのよ。


「あ、でも馬場班長さんは色々とご負担かけますよね。申し訳ないです、買い取り以外でジャガイモ個人的にお渡しとかしますか?」


 仕事増やして申し訳ない。私にしてみれば、その一言に尽きる。

 でも馬場班長さんは、きょとんと私を一度見た後で笑いだした。


「山崎さん、そんな気遣い不要ですよ。暇疲れしてたくらいですから、忙しくなって文句なんて言わないですから」

「暇疲れ、ですか?」


 暇で疲れる? どんな状態だそれ。

 暇疲れが想像できず、でも閑散とした倉庫内を見ていればそれがなんとなく理解できる気がする。


「そうです。ダンジョンが発見されるとその近くに支部ができるんですが、人気が無いダンジョンでも最低限の人数は必要なんです。私や那智さんは探索者として勤務時間中にダンジョンに入ったりするのも仕事のひとつなんですよ。なにせチュートリアルダンジョンは人気がないのでね」


 そこまで人気が無いのか、そのダンジョン。

 なんだか、逆に興味が湧いてきちゃうじゃないか。


「内勤の人は他の支部から仕事が回って来て事務処理の応援したりしているんで、そこまで時間を持て余してはいないんですが、私の場合はその日その日で仕事の量が違うので、暇な時は無意味に倉庫の掃除を何度もしたりしているんです。それより忙しくて大変な方が良いと思いませんか」


 それを聞いて、うわああって顔になってしまう。

 仕事が暇って良いような悪いようなだよね、私は経験ないけれどもし経理の仕事が少なくて一日の半分以上暇だったとしたら居心地悪く感じていたと思う。

 

「それなら安心して沢山買い取りお願いできます」


 暇疲れ辛いですよねとは言えないから、今後ともよろしくねという意味でそういうと馬場班長さんが嬉しそうに笑う。


「沢山狩って来てください。待ってますよ」

「ふふふ、いつか買い取り多すぎて迷惑ですと言われるようになりますよ」


 貧相な胸を張りながら、そう言うと馬場班長さんは嬉しそうに笑う。

 そして何も言わないので、とりあえずパン粉をベルトコンベアに流し始める。


「でもそうなると、うちのダンジョンも一年後には支部ができる感じです?」


 この辺りは聞いておかないといけないと思う。


「そうだな、普通なら新しく支部ができるんだが、近いからどうだろ。うちは閑古鳥が鳴いてると言われる支部だし。両方の管理をしていくようになるかもな」


 私の質問に、那智さんが答える。

 そうか、ここそんなに暇なのか。

 でも、うちのダンジョンだって暇になる可能性はある。なにせ田舎だから、探索者が来てくれるかどうか分からない。

 そうなると、家族が皆覚醒してくれた方が良いな、私一人がダンジョンに入り続けるよりも家族でダンジョン管理できるならその方が良いと思う。

 誕生日の覚醒が確実なのか、家族でこっそり調べてみたら駄目かな。

 両親は二人とも九月生まれ、弟は今月の十七日が誕生日だから試してみるなら弟だ。

 あの子は色々と頑張り過ぎちゃう子だから、覚醒したら心配が増えそうな気がするけど仲間として動くなら頼もしい存在になると思う。

 

「山崎さん、またベルトコンベア詰まってますよ」

「あ、ついスピードが」


 駄目だね、考え事しているとついついスピードが速くなる。


「また考え事してたんですか」

「ええと、買い取りの査定でベルトコンベアに私がバイト代頂いて流すのはいいとして、多分明日は肉になると思うので生鮮品をこういう感じに扱っていいのかなと」


 肉だもん、常温で作業してたら鮮度が落ちちゃうよね。


「ああ、知らないんだな」

「知らない?」

「ダンジョンでドロップした肉や魚は、謎の膜に包まれていてそれを破いて中身を出すまで常温だろうが真夏の太陽の下だろうが鮮度は落ちないんだ。ちなみに魔物は狩ればその体は消えて、上手くすると魔石だけじゃなくドロップ品が残る。植物系の魔物は魔石はないからまだ見たことないだろうけど」

「なにその謎仕様。あ、でも小麦粉もそうだから、そういうものなのか。でも膜に包まれたまま鑑定はできると」


 魔物を狩っても体は残らなくてすぐに消えるんだね、そういえばボス部屋のジャガイモと麦もそうだったね。

 それなら動物系を狩ってもそれならそこまで怖くないかもしれない。

 ダンジョンさんって、やっぱりどこのダンジョンさんも優しいってことなのかな。

 よし、頑張ってチュートリアルダンジョンで魔物狩り練習してこよう。

レビューいただきました。

ありがとうございます、更新頑張ります。

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