探索者登録とか色々手続きとか 4
「えーと」
さすがにふざけられる雰囲気じゃないけど、黙り込んでしまった二人をいつまでも見ているわけにはいかない。
何せ家のダンジョンさんで、多分豚が私に狩られるのを待っているんだから。
「あの、もしジャガイモで手一杯なら小麦粉は明日でも……」
「い、いいやっ! 最恐魔小麦の小麦粉はダンジョン産の小麦粉の中でも最高級品でどれだけあっても売れますし、ジャガイモ以上に依頼が塩漬けになってるんです! 買い取りさせて下さいお願いしますっ」
勢いが凄い。
馬場班長、仕事に熱いタイプなんだね。
「あの、そうしましたら、床にブルーシートか何か敷いていただけたりは……」
「すぐに敷きます。コンテナも片付けますので」
馬場班長さんは即答しすぐに動きだしそうだけど、私はちょっと不安がある。
だってこれ片付くんだろうか、これだけのコンテナしまう所あるんだろうか。
一応重ねられる程度の入れ方でジャガイモ達はコンテナに入ってくれてるみたいだけど、大丈夫なのか心配になる。
「あの、コンテナをどこかに運ばないといけないなら、私運びますので」
とりあえずあまり負担をかけるのも良くないと、一旦全部をコンテナごとアイテムボックスにしまってから改めて倉庫の中を見回らすと、本当にここ広いんだなと分かる。
「あんたはまた」
私の行動に呆れたような那智さんの呟きが聞こえたけれど、無視させてもらう。
だって時間が無いんだから、さっさとやらないと。
「ははは、かなり驚きますが、山崎さんのスキルは凄いで終わらせることにします。ありがたいのは確かですからね、気遣ってくださりありがとうございます」
「お礼を言われることじゃないです。いきなりとんでもない仕事量にして申し訳ないです。それでどこに運びましょうか」
ぺこぺこと頭を下げつつ尋ねる。
頭を下げるほどの事じゃないのかもだけど、ついそうしちゃうよね。
「仕事なんだから謝ることじゃ……」
「それでは申し訳ありませんが、奥にあるベルトコンベアに載せてもらえますと助かります」
那智さんはまだブツブツ言っているけれど、馬場班長さんは運ぶ場所を教えてくれる。彼は臨機応変に気持ちを切り替えられるタイプみたいだね、仕事がやりやすくて助かる助かる。
「あれはどちらに繋がってるんでしょうか」
「途中の機械で査定して、その後は保管用のマジックバッグの中に入ります」
奥に見えるベルトコンベアの先が良く分からなくて馬場班長さんに聞くと歩きながら説明してくれるから、ウンウンと頷きつつベルトコンベアの途中にある機械が査定の機械なのかと考える。
ベルトコンベアが五列並んでいるけれど、どれも動いていない。
これにそれぞれ載せていいのかな? 最初にジャガイモだけ、それとも小麦粉も載せていった方がいいのかな。
「あの、ジャガイモだけ五列全部に置いていきますか? それとも小麦粉も出しちゃいますか?」
「五列それぞれに選んで出せるのであれば、山崎さんのやりやすい順番で良いですよ。マジックバッグには混ざって入れてもいいですし、査定の機械は一品ごと自動で鑑定していきますから大丈夫です」
なるほど、アイテムが何か設定して動かすわけじゃないんだね。
「それではそれぞれ動かしますので、この端から載せていってもらえますか」
それなら、左二列がジャガイモで、次が薄力粉、その次が中力粉、右端が強力粉って感じに固定して出していこうかな。
アイテムボックスさん、よろしくね!
「うわあ、チートの雑使用」
また那智さんが呟いているけれど、ベルトコンベアの動きに合わせてゴトンゴトンとアイテムボックスがジャガイモの入ったコンテナと小麦粉各種を出ていく様子はなかなか良い。
素晴らしい動きだと思う。
私のアイテムボックスさんは優秀だね、さすが優しいダンジョンさんがくれたスキルだけあると思う。なんだか誇らしいよ。
本当、家に来たダンジョンさんが、なんの日ダンジョンさんで良かったなあ。
「小麦粉凄いな」
「左から薄力粉、中力粉、強力粉です。パン粉は最後に出しますね」
パン粉が一番数が少ないんだよね。一番多いのは薄力粉だ。
もしかするとだけど、これ需要が多い順なんじゃないのかな。アイテムボックスに入っている個数は勿論種類別に分かるけれど、数の多さは薄力粉、強力粉、中力粉、パン粉の順番になる。
「そうですか。それで次回もジャガイモと小麦粉同じくらい買い取りとなりますか?」
「いえ、多分明日はお肉? 明後日がバナナになるんじゃないかと」
でも調べてみたら、食べ物関係の記念日って同じ日にいくつもあるみたいなんだよね。
だからどちらも予想でしかない。
「日替わり、ですか?」
「家のダンジョンの名前はなんの日ダンジョンと言いまして、ほら今日は〇〇の記念日みたいなものありますよね。その記念日の食べ物にまつわるものが一層目に出るみたいなんです」
「え、あの、はい?」
理解が追いつかないという顔を、馬場班長さんがしているけれど、さっきの那智さんよりは冷静だと思う。
ちなみに、この情報は公開しても大丈夫だと那智さんが判断している。
だって家のダンジョンが公になれば、皆が知ることになる部分だから。
「それで明日が肉というのは?」
「明日ハムの日らしいです、八月六日の語呂合わせなのだと思いますが」
「あーだから七日はバナナになると」
「はい、でもそれ以外にも同じ日に食べ物関係の記念日になってるとかあるらしいので、確実ではないのですけれどね。あ、あと二層目からは弱い魔物が出て、それまで出た一層目の魔物もランダムで出現するらしいです」
一層目のボスを討伐すると、ダンジョンの簡単な説明が聞けるというのはどこのダンジョンにもある仕様らしいので、この辺も話していい部分になる。
「なるほど」
一層目の魔物は、説明では世界中のどこかのダンジョンでは出てくる魔物って説明だったから、記念日とそれに紐付く魔物がいるのが条件なんだと思う。
でもダンジョン産のバナナは美味しいらしいから、明日楽しみなんだよね。
そしたらバナナパンケーキか、バナナパウンドケーキ作ろうかな。
小麦粉は沢山あるから、沢山作れる。あとはバターとか生クリームがあるといいんだけど、それはいつだろう。
あ、そういえば初入場特典で、二分の一の確率で望みの食べ物がドロップするんだっけ。それで美味しいバター出て欲しいとか生クリーム出て欲しいって願いつつ魔物を狩ったらドロップしちゃうのかな?
それって、食材買い出ししなくて良くなりそう。
麦のボス討伐ででたお宝のオーブンも高性能だったから、料理の腕はそこまでの私でもきっと美味しいケーキが焼けると思うんだ。
ふふふ、楽しみ。
「なにを楽しそうにして、スピード上がりすぎでつまってるぞ」
那智さんの声に我に返る。
あ、私のテンションが上がったら、アイテムボックスのテンションも上がっちゃったのかな?
ベルトコンベアの上に山になってきてる。
「戻って戻って」
「なんでもありですね、覚醒したばかりでこれだけコントロール出来る方初めて見ましたよ」
え、褒められてる? やだなぁ、照れちゃうじゃないですか。
私を褒めてくれた馬場班長さんに、ニコニコと笑顔を向けるとその隣で那智さんが呆れた顔をしている。これは話題を変えた方が良さそう?
「えーと、査定っていつもベルトコンベアを使うんですか? 五つもあるということは結構忙しいです?」
「いや、大体夕方に少し混むくらいで、フル稼働はしないですね」
馬場班長さんの寂しそうな返事に、ここの支部はチュートリアルダンジョン用ための支部なんだと思い出す。
人気がないダンジョンだと、当然買い取りもそれなりの稼働率になるのか。そうだよね。
「じゃあ、夕方を外してくれば大丈夫ですか?」
「なんの話だ?」
「え、ほら私大量買い取りになるから、独占しちゃうと迷惑かけるじゃない。空いてる時間に来たほうがいいかなって」
那智さんに聞かれて素直に答える。
全部倉庫に出して、精算は明日でってすればいいけれど、それをするにしても倉庫に物を出してからの話になる。
それなら、私がベルトコンベアの前でアイテムボックスから出した方が効率がいい。
「山崎さん、今回は準備が足りてないためお願いしましたが、普通はベルトコンベアに載せるのはこちらの仕事なんですよ」
「いや、でも私の出すもので馬場班長さんが他の仕事出来なくなるのは申し訳ないですし」
人気のダンジョンの支部、今倉庫にいるのは私と那智さんと馬場班長さんだけなんだもん。班長さんの肩書はついてるけど、そこまで倉庫担当の人の人数はいないと思うんだ。
仕事ならお願いして当然なのかもしれないけれど、なんか気が引けちゃうんだよねえ。だって私の買い取りだけでどれだけ人手が必要になるのか分からないんだもの。
「班長、それなら倉庫仕事を契約してはいかがでふか、繁盛期に一般倉庫バイトを頼む額より割高になりますが」
「そりゃ、探索者への依頼と一般バイトは違うからそれはいいんだが、山崎さんに申し訳ないな」
馬場班長さんがいい人すぎて、私の方が申し訳なくなる。
「あ、でもお盆休み明けは週末しか来られないかもしれないです。そうだ、コンテナを大量に預かってそれに入れてきましょうか」
会社行って、帰ってダンジョン入ったら支部まで来る元気はなくなりそうだし。
そうなると土日はダンジョン支部に買い取りしてもらいに来ないと、私はともかく買い取る方が大変になる。
「え、専業にならないんですか」
「はい、今のとこ考えてないです」
まだ私ちゃんとした魔物を狩ったことないから、本当に動物型の魔物倒せるか分からないし、一年間は一層目だけでいいならそれ以上無理しなくても良いんじゃないかと思うし。
「多分今日の買い取り額で、この辺の会社なら年収超えしてると思うけれど」
「え、それって確定申告しないといけない? 税金どれくらいかかるのかな、普通の会社勤めとかと違うのかな」
探索者の収入って、雑所得扱いになるのかな。
その辺りが良く分からない。
「いや、探索者は買い取りとかの支払い時に都度税の徴収されるんだ。ちなみに、会社勤めより所得税住民税共にかなり少ない。ちなみに武器や防具やその他の購入した分の経費は探索者のランクにより上限が変ります。確定申告の時にこちらだけダンジョン協会に申請してもらえばこちらで申告手続きする。この辺りは受付が詳しいからそっちから説明を受けてくれ」
なんで? 稼ぎがいいなら沢山税金取られそうなものなのに。
あ、覚醒者が少ないから優遇されてる?
あ、でも武器とか防具の経費か……私そこはないな。
「どうした」
「私武器と防具を買うことは多分ないから、そこの経費はないなあって」
これはいずれバレることだし、話してもいいよね。
「どういうことだ」
「私の武器と防具って、ダンジョンさんに認定されたのが草刈り機とその時来ていた服なんだけど、ボス初討伐のお祝いに今使用している武器防具、及び保持武器は使用者のレベルアップと共に強化されますってダンジョンさんがね」
あ、二人が頭抱えた。
ネットの情報を見る限り、発見されたばかりのダンジョンで初めてボス討伐した人のお祝いって、人それぞれ違うらしいけど私へのお祝いがこれだったんだから仕方ないじゃないねえ。




