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今日はなんの日、食べ物ダンジョンできました  作者: 木嶋うめ香


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探索者登録とか色々手続きとか 3

「一体、何を食べたらそんなに大きくなるんでしょうか」


 中学卒業以来会ってなくて、顔を忘れてたのもあるけど身長が違いすぎて、同じ人だと思えないんですが。

 

「魔物肉かな」

「え、高級品」


 そんなの、成長期に背が伸びるって言えるほど食べられるものなの?


「母親が探索者でね。チュートリアルダンジョンの初入場が、母なんですよ」


 なんか口調が中途半端に変化してて、それが気持ちが悪い。

 タメ口かそうでないか、どっちかにして欲しいっていうのは我儘なのかな。


「ごめんなさい、タメ口でもそうでなくても良いからどっちかにして」

「じゃあ、タメ口で。俺すぐに分かったけど、薄情だな。ちびちび」

「いや、だって見た目が違いすぎるし、苗字も違うし分からないでしょ」


 うわあ、ちびちびって久しぶりに呼ばれたよ。

 それ中学の頃のあだ名じゃないの、って私もちびゆーきって呼んでたわ。

 あのクラス、ゆうきって名前が二人いて、木村が三人いたのよね。それでもう一人のゆうきの方も同じ苗字が二人いた。

 私のちびちびは、小学校の頃からのあだ名だったけど、この人の場合はもう一人のゆうきが身長高かったから、デカゆうき、ちびゆうきって呼ばれてたんだっけ。

 で、私はその頃滑舌があんまりよくなくて、ゆうきじゃなく、ゆーき呼びしてた。

 それでもって、確か三年の半ばに転校してきたから、転校初日にあだ名付けられて拒否できなかったんじゃなかったっけ。

 なにせ、この人以外皆幼馴染みたいなものだったから、アウェイ感半端なかったんだろうな。

 

「ちびちびも、ちびゆーきも、今なら問題になりそうなあだ名ね」

「そうだな」

「じゃ、あだ名禁止で山崎で、私も那智さんと呼ぶから」


 ちょっと彼氏のトラウマで、家族以外に名前で呼ばれるのは今遠慮したい。

 さんやちゃんがついても、なんか嫌な気持ちになるし、気を抜いている時に呼ばれると一瞬私の動きが止まってしまう。


「この年でちびちびとは呼ばないよ」

「良かったわ」


 ちびゆーきとは中学の頃普通に友達だったけどあの頃スマホなんてなかったし、こっちの市の学校行った人が他にいなかったからそこから付き合いとか途切れちゃったのよね。

 まさかこんなところで出会うとは、考えもしなかったわ。


「それで、昔なじみだから言うけど、山崎さんのアイテムボックスおかしいから」

「え、おかしいとは?」

「普通、覚醒してすぐに大量にものは入らないっていう常識があるんだが」


 そんなの知るわけない。

 ネットに書いてなかったもの。


「……もしかして私は、なんかやっちゃいました系主人公?」

「その通り。俺に気がついてないようだから、同中だったの言わないでおこうかと思ったんだが、あまりにもやらかしが酷いから、遠慮なく言える関係を構築しないとヤバイと判断した」


 あ、この人こういう人だった。

 だんだん思い出してきたよ、私が何かボケたことをやらかすと、フォローしてくれた後で自分の行動理由を説明されるんだ。


「ヤバイ自覚ないけど」


 アイテムボックスはヤバイのか? でも初入場特典にもらった特別スキルだから、他の人と違うのかもしれないけど私には自分のスキルがどの程度ヤバいのか分かっていない。

 これって、那智さんには言っとくべきなのかなどうしようかな。


「何か?」

「ええと、とりあえず多分これから怒られるのは確定かなと思ったりしていました」

「常識的なことしてるなら怒らないし、そもそも久しぶりに会った同級生を怒る趣味はないが」


 那智さんは真面目な顔でそういうけれど、怒られる気がして仕方ない。

 少なくとも今の話を聞いた後だと、ジャガイモ三千個は怒られるか呆れられるだろうという判断くらいは私にもできる。


「売るのコンテナ二個でいいです」


 小出しに売ろう、それなら常識の範囲のはず。

 私のアイテムボックスに入っている間は腐らないんだし、収納し放題なんだし。


「それは無理だな。山崎さんは、さっきコンテナ百個必要って言ってたからな」

「あ」

「これで買い取りがコンテナ二個分になったら、ビッグマウスって影で呼ばれるようになるぞ」

「それは嫌。それなら、なんかやっちゃいした主人公でいいよ! どうせこれから毎回大量買い取りしてもらうことになるんだし、初回だけ遠慮しても意味ないものね」


 そうだよ、今日は帰って多分豚を狩らないといけないんだから、ノロノロしてる暇ないし魔物が植物じゃなく豚になってもドロップ品は大量にアイテムボックスに入るようになると思う。

 家のダンジョンさんでちゃんと動物を狩れるようになるために、家に帰る前にチュートリアルダンジョンで魔物を狩る練習しないといけないし、まだ支部長さんと話してないんだから。時間はない。


「なんで毎回大量買い取りって話になる?」

「それは歩きながら話すから、那智さんを信じて話すんだからね、同級生を裏切らないでよ」


 いつの間にか立ち止まってたので、倉庫に向かい歩きつつダンジョンに入ってからの話をしたら、那智さんは頭を抱えてしまった。


「え、大丈夫? 具合悪い? 今日暑いもんね」

「違う、具合悪い悪い気がしてきたが、暑さじゃない。あんただよあんた。俺の口調が悪くなるのも具合悪くなりつつあるのも、山崎さんのやらかしのせいだから」

「え、そんなに? レベル二十五ならこんなもんなのかなって思ってたんだけど」


 あんたって呼ばれるのも嫌なんだけど、まあ私のやらかしのせいみたいだからここは我慢しよう。でも続けるようならはっきりと嫌だというぞ。

 でもそこまでやらかしたわけじゃないと思うんだけど、だって一日目は草刈りしただけだし、二日目は麦狩っただけだし。

 ボスは強かったけど、もうレベル二十五超えたから割と麦との戦いは良い感じだったのに。

 そう思っていたのに、那智さんの歩みは完全に止まってしまった。


「なんだよ、レベル二十五って」

「自己鑑定の結果、あ」


 ヤバイ、これは秘密案件だった。


「自己鑑定って、ベテランの奴でも難しいと聞いてるんだが」


 今度は眉間に深い皺が寄ってしまう。

 やっぱり隠してなきゃいけないことだったぁ、なんで私ちゃんと隠そうと思ったことまでペロッと話しちゃうんだろ。馬鹿なのか、私。


「いや、あの、その、私特別スキルというものを初入場特典でもらっててですね、それが結構なチートスキルって奴なのかな? ははは」

 

 漫画とかだと、壊れスキルを取れる主人公はチートとか言われてたよね。

 私ってもしかして今チート主人公になってるのかしらん、ふふふ。二十五歳にもなってファンタジーもののヒロインになっちゃった?


「ああ、特別スキルか」

「そうそう、うちのダンジョンさん色々優しくてね、昨日パン粉しかドロップしないからそれじゃ使い切れないって文句言ったら小麦粉も色々ドロップするようにしてくれたんだ。私当たりダンジョンさんを発見したのかも」

「なんでダンジョンにさん付け、当たりダンジョンってそういうのと違うだろ」


 なんか一人でブツブツ言ってるけど、大丈夫かな那智さん。


「ごめん、私の都合で悪いんだけど、多分今日は豚が出ると思うから、チュートリアルダンジョンで練習してから帰りたいんだよね。そろそろ買い取りしてもらってもいいかな」


 支部長さんを待たせておくのも悪いし、色々急がないとお昼になっちゃうよ。


「なんで豚?」

「今日がハムの日だから、多分豚かなって」

「……分からないけど、分かった。どの道探索者初心者講習はしないといけないから、支部長との面談は明日に予定変更してもらう。今日と同じくらいの時間に明日来られるだろ。ああ、時間ないなとにかく買い取り終わらせよう」


 なんか段取りを付けてくれそうな呟きを聞き、この人面倒見いいところ変わってないなと、昔に帰った気持ちになる。

 

「……那智さん、相変わらずいい人なんだね」

「何をどう思って相変わらずいい人になるのか分からないんだが」


 那智さんは、スケジュールを決めたのか突然電話を初め、諸々の段取りをつけてくれたらしい。

 それを見たら、いい人だなあって思うの変じゃないと思うけどなぁ。


「いえ、中学の時に色々お世話になったなと」

「忘れてたのに?」

「いや、だから外見がね」


 言い訳しながら歩いていると、ようやく倉庫に辿りついた。

 どうでもいいけど暑いなあ、家の裏庭の草刈り終わってて良かった。


「スミマセン、馬場班長大量買い取りの連絡入っていると思いますが」


 ドアを開けるなり、那智さんが叫ぶ。


「聞いてる聞いてる。新しく出来たダンジョンのジャガイモだって?」

「凶悪ジャガイモです」

「そりゃありがたい。本部に塩漬け依頼溜まってるんだよ」


 がっしりした体格の男性が倉庫の奥から出て来たけれど、床一面にコンテナが並んでいて壮観だ。

 でもこれで足りるかな、コンテナ。


「山崎さん、こちらは買い取り担当の馬場です」

「馬場桜太です、覚醒おめでとうございます」

「ありがとうございます、山崎葵です、これからお世話になります」


 年齢四十代くらいの見た目で、優しそうな印象の男性だ。

 すぐに名乗ってくれるのも、好印象。


「で、早速だけれどジャガイモ出してもらっていいかな。大量にあると聞いてますので査定に時間かかるでしょうからね」

「はい、コンテナに入れていいですか?」


 時間節約大事、ジャガイモさんコンテナに傷つかないように静かに入ってね。

 アイテムボックスに話しかけると、目の前のコンテナ全てが一瞬でいっぱいになる。


「嘘だろ、え、夢見てる? 最近暑くて寝不足だったからなあ」

「いや夢じゃないです」

「あの、コンテナもう無い感じですか?」


 二人の会話を遮って、コンテナの追加が欲しいと口を挟む。

 どうしよう、まだジャガイモが千個強あるんだけど、これ残して小麦粉を買い取りしてもらった方がいいかな。小麦粉は謎袋に入ってるから床に何か敷いたらそのまま重ねていけそうだし。


「ジャガイモまだあるのか」

「ええと、小麦粉……」

「それ、とりあえずここに何個か出してもらってもいいですか?」


 馬場班長さんが恐る恐るって感じに聞いてくるんだけど、床にブルーシートか何か敷いてもらえないか聞いた方がいいだろうか。床綺麗そうだけど直置きはなんか抵抗があるんだよねえ。


「では、小麦粉各種とパン粉各種です」


 コンテナのジャガイモの上に小麦粉それぞれを一袋ずつ出していくと、馬場班長さんは袋を開いて中の確認を始める。

 ちなみに小麦粉は一袋十キログラムの謎袋にいつの間にか変わっていた。

 最初はだいぶ小さな袋だった覚えがあるんだけど、どこで変化したのか分からない。

 謎袋というのは、袋の口を開くまでは謎な素材なのに開いた後は出荷用米袋的な紙の袋になるから、両親が謎袋と呼び始めたのだ。


「最恐魔小麦の小麦粉だな」

「さいきょうま小麦?」


 ダンジョン産の野菜とか穀物って、なんで変な名前が付いてるんだろう。

 さいきょうまってそもそもどういう字を書くのか想像がつかない。


「無茶苦茶倒すのが大変な魔物だから、最恐って付いてるんですよ。野菜穀物果物に多く付く名前ですね」

「倒すのが大変? じゃあ最強は最も強いで最強ですか」

「いえ、最も恐怖するの最強です。それに魔法の魔で最恐魔小麦ですね」


 なるほど、きょうは恐怖の恐なのか。

 あれ? でもジャガイモは凶悪じゃなかったっけ? ジャガイモはそんなに強い魔物じゃなかったのかな。確かに雑草刈っただけだもんね。弱いか。

 でも小麦粉だって普通に麦を刈っただけなんだけど、え、まさかうちのダンジョンだけ特殊なの?


「あの、ちょっと写真見てもらってもいいでしょうか」


 スマホを取り出し、昨日撮った麦畑の写真を二人に見せる。


「麦畑だな」

「麦ですね」

「これ最恐魔小麦です?」


 二人は大きく首を横に振って、全然違うと言わんばかりだ。

 それならなんでドロップがこれなのよ、誰か初心者にわかりやすく教えてよお。


「これは普通のダンジョン産の小麦です」

「最恐魔小麦ではない?」


 疲れたように馬場班長さんが教えてくれるけど、それならどうしての疑問は残ったままだ。


「ボスもこの麦だったでしょうか」

「写真撮る余裕は無かったですが、高さが私の倍くらいで丸太くらいの太さの茎だったような」

「それが最恐魔小麦ですね、一体でもそれを初心者が討伐出来たのは奇跡みたいなものです」

「えーと、三本まとまってたのも、一体扱いになりますか?」


 あれ、二人とも無言になってしまった。

 これは、主人公の台詞をいう場面? 何かやっちゃいましたかって。

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