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今日はなんの日、食べ物ダンジョンできました  作者: 木嶋うめ香


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探索者登録とか色々手続きとか 2

「それなら誕生日にダンジョンに入ると覚醒するは確定なんですか? 都市伝説じゃないってことになりますか?」


 解決の糸口見つけた気分で、うきうきと聞くとカウンターの中の二人はそういう風には考えていないらしく何やら考え込んでいる。というか、二人の後ろの席でパソコンで何やら作業していた人たちまで手を止めて考えてるように見えるんだけど、ダンジョン協会大丈夫?


「都市伝説というのは、本当かどうか分からないから都市伝説なんですよ。誕生日にダンジョンに入ったら覚醒したらしい。というね」

「でも、私以外にもダンジョン発見の時に覚醒した人はいるんですよね」

「いると思いますが、発見した日が誕生日で同日に覚醒したかどうかは統計を取っていないので分からないのです」


 探索者の登録用紙に本人の生年月日と覚醒日が書いてあるんだし、ここが同じならある程度条件絞れると思うんだけど、それじゃ駄目なのかな。

 

「申し訳ありません話を戻しますが、学校って覚醒者だけが行くのかでしたね。こちらは以前ならその通り覚醒者が探索者をやっていく知識と技術を取得するための学校でしたが、今は未覚醒者も入学できます。未覚醒者は卒業後ダンジョン協会に就職をすることを条件に入学許可が出るので、条件付きとなりますが」

「条件付き、ダンジョン協会の職員確保のため? え、就職したい人沢山いそうですけど」


 ここって国の機関じゃないのかな? それなら収入安定してそうだし良さげな気がするんだけど。


「……山崎様は探索者は専業のご予定ですか」

「いえ、会社勤めしていますし、兼業のつもりです」


 なにせまだ一層目とボス部屋しか探索してない。

 覚醒したばかりの新米だし、とても専業なんて考えられない。


「お仕事は何を」

「会社勤めで部署は経理ですが、あの」


 なんだろう、この男性の笑顔の圧が強いんだけど。


「支部長から後で説明があるかと思いますが、ダンジョンができてもすぐに探索者を派遣できるわけではありません。なぜなら探索者の数が足りていないからです」

「はい、先ほど伺いました」

「ダンジョンは出来たばかりであれば、ダンジョンブレイクはまず起きないという統計が出ていますので後回しにされがちですし、ダンジョンは出来て一年の間に自然消滅する場合もありますので、一年間は新ダンジョンの公表もされません」


 説明に唖然とする。

 噓でしょ、それじゃダンジョン協会が探索者を派遣してくれないと、ダンジョンに入ってくれる人がいないじゃない。


「それはつまり、家のダンジョンは」

「一年は山崎様だけがダンジョン攻略しないといけません。お知り合いに探索者がいらっしゃるのでしたらその方に協力をいただいても問題はありません。そこから知り合いが知り合いに話して探索する人が増えていくのも問題ありません」

「……はあ」


 問題ありませんじゃないよ、それ大問題だよ。


「ちなみに、ダンジョン発見者がダンジョンに定期的に入り魔物を狩るのを条件に、ダンジョン年金が毎月支払われます」

「ダンジョン年金」

「はい。ダンジョンは出来たばかりであれば、一層目だけを地道に探索し魔物を狩っていればダンジョンブレイクの心配はほぼありません。あるとすれば中で探索者が複数亡くなった時です」


 探索者が亡くなった時、そうか魔物狩り損ねて死ぬ可能性はゼロじゃないんだ。

 私、結構無謀なことしてたんだって、今の一言で気が付いた。

 気が付くの遅すぎだけどなにせ雑草だとしか思ってなかったし、ボス部屋はその場のノリで入ったら向こうから襲ってきたんだもの。

 死ぬかもなんて、ダンジョンブレイクを想像した時しか考えてなかったのよ。


「つまり一層目に毎日入っていれば、ダンジョンブレイクは一年はないと思っていいです? 死ななければの前提ですけど」

「はい、余程凶悪なダンジョンでなければですが日本のダンジョンには殆どそういった事例がないため、こういう状態になっています」


 こういう状態って、それほぼ放置っていうんじゃないの? つまりはお金あげるから自力で頑張れみたいな感じでしょ。

 でも、家のダンジョンさんは凶悪じゃないのは確かだから、一年自力で頑張れと言うなら頑張るわよ。


「わかりました。一年頑張ります」

「……とても納得できる話でないことは、今なんとおっしゃいました?」

「え、一年頑張ります。ですが」


 この人、自分で言っておいてなんでこんなに驚いてるの?


「あの、山崎様。こちらの申していることが理不尽な話だと分かった上でそうおっしゃっているのでしょうか」


 受付の人が心配そうに聞いてくるけど、人がいないんじゃ仕方ないじゃない。

 それにお願いしてるのに、来ない来ないと毎日待ってるより、一年放置するから頑張ってと最初にはっきり言ってくれた方がマシだと思う。

 誠意があるとは思わないけど、現実を教えてくれるならそれでいいよ。

 だって私のダンジョンの知識って、ネットで調べた情報だけなんだもん。


「そうですね、相談されても何もフォローしないけど、一人で頑張れというのでないなら、頑張ります。家に出来たダンジョンですし」

「それは勿論フォローしますし、ご相談には二十四時間いつでも対応いたします」


 そこまで真剣な顔で言わなくても良いのに、でももう一つ条件がある。


「フォローあるなら助かります。あと、もう一つお願いがあるんですが」

「はい」

「ダンジョンで刈ってでた物の買い取りです」

「買い取りは勿論しておりますので、いつでもお持ち下さい」


 微笑ましそうに言ってくれるけれど、そうじゃないんだよねえ、何せ食べ物ってなまものなんだもの。

 私のアイテムボックスの中に入ってるなら腐らないけれど、出したらそうはいかないよね。

 いや、ダンジョン協会なら時間停止のマジックバッグとかあるのかな?


「実はですね、家のダンジョン食べ物がドロップするんです」

「食べ物、例えば」

「最初がジャガイモ、昨日は小麦粉各種とパン粉でした」


 誰だ、今プッて笑った人。


「ダンジョン産の食材は人気ですので、どんなものでも買い取りできます」


 微笑ましそうに男性の方が言ってくれたけど、どれくらいあるか聞いた後も同じ顔してたら褒めてあげる。

 それから笑った人、顔覚えたからね。

 ていうか、皆笑ってるじゃない!


「そうですか、出したものは絶対にすべて買い取りすると約束してもらえます?」

「はい、良いですよ」

「後からナシって言わないで下さいね。絶対に全部買い取りしてくださいね。今日だけじゃなくずっとですよ! それから価格も絶対に下げないで下さいね」


 野菜とかダンジョン産品の最低買い取り価格というのがあるのは、ネットで調べたから知っているんだ。

 その辺の畑で採れる野菜でも、スーパーで売ってるものの十倍程度が最低価格だった。

 ちなみに、ダンジョン産の食べ物はそもそもそんなに流通してないので、どれだけ探索者が売っても一般に影響は殆ど出ないらしい。


「はい、最低価格は決まっておりますので、それ以下になることはありません」

「じゃあ、まず昨日と一昨日の分の買い取りお願いします。どちらに物を出したらいいですか?」


 大きさを確認したら、ジャガイモはLLサイズと言われる大きさで、重さが一つ三百グラムぐらいあった。

 家で食べる分に百個程度ストックしておくとしても、三千個以上はある。

 なにせ、ボスと戦った後に色んな種類のジャガイモセットがアイテムボックスに自動で収納されていたのだ。

 それに小麦粉も全部合わせたら数千キログラムになるんじゃないかな。


「こちらで確認しますので、この籠の中に入れて下さい」


 私達の会話で準備してくれたのか、私のところにプラスチックの採集コンテナを二つ運んで来てくれたけど、こんなんじゃ足りない。


「ええと、後百個くらい必要……もっとかな」


 私がアイテムボックス持ちなのは電話で伝えてあるから、それを知っていて私が今小さなバッグ以外持ってなくてもコンテナを出してくれたんだと思うけれど、私ボス部屋まで行った話してなかったんだっけ?


「百? またまたご冗談を、入ったのは一層目だけと伺っていますしそんなに」

「いえ、冗談ではないです」


 落とすと傷がついちゃうかもしれないから、コンテナの前にしゃがみ込んで、コンテナの中に傷が付かないようにジャガイモ達出ておいでとアイテムボックスに頼む。


「え」

「嘘だろ」


 一瞬で二つのコンテナ山盛りにジャガイモが積み上がって、凄いなあと見惚れてしまう。

 私のお願い聞いてくれるなんて、アイテムボックスも優しいなあ。自動収納まで覚えてくれたんだもんね、本当に優しいんだわ。

 うん、きっと家のダンジョンさんが優しいからダンジョンさんがくれたスキルも優しいんだと思うな。

 私のとこに来てくれたダンジョンさんが、なんの日ダンジョンさんで良かったなあ。

 呑気にジャガイモを見つめながらそんなことを考えていたら、妙に周りが静かだと気がついた。


「あの? 次のコンテナを」

「なんですかその量」

「なんですかって、ほんの一部ですが」

「山崎様の発見されたダンジョンは、一層目にジャガイモが出るんですか? その大きさなら凶悪ジャガイモですよね」


 なんだその名前は。

 ジャガイモを鑑定すると、確かに名前は凶悪ジャガイモとなっている。


「凶悪ジャガイモ」

「はい、初心者が狩れる魔物ではありません、一体どんな武器を使ったんですか」

「電動草刈り機です」

「は?」

「電動草刈り機で雑草を刈ったら、沢山ジャガイモがドロップしたんです。ボス部屋もジャガイモでした。ボスのドロップもジャガイモセットだったので、それは凶悪ジャガイモの他に沢山あるんです。次の日は麦で、小麦粉各種とパン粉がドロップ品で、ボスも麦でした」


 私ダンジョン発見の電話した時、ドロップ品の買い取りも沢山お願いしたいって話して、アイテムボックスのスキルがあるので一度に全部持っていく話もしてたんだけどなあ。

 コンテナ二個山盛りで驚かれてたら、全部買い取りは無理なのかな?


「え、ボス部屋? ダンジョンを見つけた日に一層目でもボス部屋に? 素人が?」

「素人、しかも草刈り機って冗談でもないわー」

「那智さんがあんなに驚いてるなんて、明日は嵐じゃない?」

「覚醒したばかりでボス部屋は無理でしょ」

「それより、凶悪ジャガイモならあちこちから依頼来てたわよね。本部に連絡しないと」

「宮中晩餐会のメニューに使いたいって奴あった気がする! すぐに報告しなきゃ!」


 なんだか失礼な話してるのが聞こえてくるけれど、宮中晩餐会に使いたいくらいこのジャガイモ人気なのかな。

 それなら買い取り問題ないかな。


「あの、コンテナ……」

「山崎様、申し訳ありません。少々混乱しておりましたもので、大量ということですので倉庫までご足労願えますか」

「あ、勿論」


 私はアイテムボックスで一瞬に出せるけど、ここから倉庫に運ぶの大変だもんね。

 それなら一旦しまっておこう。


「あっ」

「え?」


 コンテナをアイテムボックスにしまった途端、なぜか男性が驚いた声を出したから、私はしゃがみ込んだまま男性を見上げる。


「いえ、一瞬で二つ消えたもので驚いてしまいました」

「あぁ、倉庫に行くならアイテムボックスに入れておこうかなって」


 余計なお世話だったかな、もしかして査定か何かするんだっただろうか。


「いえ、お気遣いありがとうございます。それでは倉庫にご案内いたします」

「山崎様、探索者登録を先にしないと買い取り手続きが進みませんので、こちらに印鑑をお願いします。あと、血を一滴こちらに」

「血、ですか」


 受付の人に言われてカウンターの前に戻ると、何かの機械に繋がっているらしいものがだされたので、指を一本差し込めそうな部分に人差し指を差し込む。


「そのまま一瞬チクッとしますから、動かずにいてください」

「はい。あ、チクッとしました」

「ありがとうございます。もう抜いていただいて大丈夫です。絆創膏お使いになりますか?」

「いえ、もう止まったみたいなので」


 普通、ぷくっと血が盛り上がると思うんだけどそんな様子はない。

 というか、血がついた様子もないんだけど採取できたのかな。


「それでは、登録手続き進めてまいりますので、山崎様は那智と一緒に倉庫へお願いいたします」

「那智さん?」

「あ、申し訳ございません。私は受付担当の花田萌と申します。こちらはダンジョン探索推進課の那智勇気です」

「名乗らず失礼いたしました、那智勇気です」


 二人から名刺を出されたけれど、こういうのって最初に出すものなんじゃないのかな。


「山崎葵です」

「存じております。それでは山崎様こちらに」


 カウンターの外に出て来た背の高い男性、那智さんに案内されて一旦建物を出て裏の方に歩いて行く。


「あのさあ、俺同中だったけど覚えてない?」

「同中? え、ええと」


 こんな背の高い子同じ中学にいたかな? 中学は各学年一クラスしかない小さな学校だったから同じ中学で年も同じなら絶対にクラスも同じなんだけど。


「酷い、俺はすぐに分かったのに」


 じとりと恨めしそうに見下されながら、必死に考えるけど、那智なんて苗字の子いなかった。

 え、いなかったよね?


「高校は俺こっちの市に引っ越したし、山崎、山崎様は商業学校だったから別だけど」

「すみません、記憶に無いです。那智なんて苗字の子も、こんな背の高い男子も」


 だいたい、中学一緒なら小学校も幼稚園も一緒だから、流石にそれだけ一緒に学生生活してたら忘れるなんてないんだけど。


「あぁ、俺中学の頃は木村だったから」

「木村?」

「両親が離婚して、母親の方に引き取られた」

「なるほど、木村、木村?」


 どうしよう、木村って苗字も記憶のどこにもないんだけど! あれ、待って木村、木村って。


「ちびゆーき!」


 思わず指をさしてしまった。

 え、あの子私と同じくらいの身長だったのよ。

 中学卒業まで私百六十まで身体がいかなくて、ちびゆーきってあだながついてた子は、確か私よりチビだった。


「正解」


 にっこりと笑う、見上げる程に大きな那智さんの笑顔は、記憶の隅っこに残ってたちびゆーきの面影が確かにあったのだ。

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