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今日はなんの日、食べ物ダンジョンできました  作者: 木嶋うめ香


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20/24

不本意だけど怒られてる? 1

「え、なんか怒られるパターン?」


 ちょっと気まずい雰囲気に茶化してそう言うと、那智さんは真面目な顔で頷くから内心おののいてしまうんだけど、どうしたらいいんだろう。


「ええっと?」

「山崎さんの考え方、ご両親の考え方を考えると、人のよさを誰かに悪用される未来しか見えないんだが、でも山崎ファミリーはそういうところを深く考えていないようなので、山崎ファミリ―新参者の俺はちょっとというかだいぶ混乱している」


 茶化しているのか、私を気遣っているのか分からない那智さんの言い方に、私は戸惑っているのを隠しながら無言で牛乳を啜るしかない。


「あんたもあんたのご両親も、本当になにもかもが自然すぎて、偽りがなくて、それが逆に戸惑ってしまうよ」


 那智さんの、本心から戸惑っている様子にどう反応したものかと考えながら、牛乳を啜る。


「私はね、ダンジョンのこれからを知ってしまって戸惑ってるのよ。もう大混乱、でもダンジョンブレイクは起こしてはいけないって思うの。それは最優先で解決していかないといけないって思っているのよ」

「今日探索者登録したばかりなのに、ダンジョンブレイクの心配ですか」


 私の発言に、那須さんは呆れたように言う。

 彼の口調がなんか定まっていないのは、私の立ち位置がブレブレってことなんだろうか。中学の同級生という感覚と、ダンジョン協会職員と探索者としての関りって奴だ。

 まあ私はどっちでもいいけど、那智さんは混乱してるんだろうなって思う。


「うん、心配。私小市民だからダンジョンブレイクなんて考えただけで胃がね、キュウッとしちゃう」


 私の願いは、私と私の家族と私の大切な人達が毎日平穏無事に過ごせること。

 家には先祖代々を祀っている仏壇があるけれど、私はこの祈り方が良いか悪いか分からないけれど、いつも『いつも守ってくださりありがとうございます。家族が平穏無事に今日も過ごせますように』と祈っている。

 私にとって祈りってそういうものだ。

 神様とか仏様に祈るというより、自分の亡くなった祖父母やご先祖様に祈る。そういう感覚だ。

 そういう感覚で生きている私と、那智さんは感覚のずれというものがあるんだろうと思いながら、まあそれは埋めようがないものだと割り切って話を進めることにする。


「ダンジョンブレイクが怖いのよ。私は毎日毎日平穏無事に暮らしたい。私が何か努力してそれが叶うならそうしたいってだけなのよ」


 私が望む未来をまずは知って欲しいとばかりにそう言うと、那智さんはウウンと悩み始める。

 私は平穏な日常を失いたくない、それを守るためなら私は頑張ると決めた。

 実際に何をどうしたらというのが良く分かっていないのが、問題だけど。今のところ私が努力したらなんとかなるのかなとも思っている。


「ダンジョンブレイクは、そうそう起こることではないという認識なんだが」

「でも、なーちゃん……うちのダンジョンの愛称だけど、なーちゃんは、新しいダンジョンを作るよりダンジョンブレイクさせた方が早いって考え方もあるって言ってるよ」


 私がそう言うと、那智さんは分かりやすく頭を抱え始める。


「ダンジョンに愛称つけるって……まあいい。ダンジョンブレイクが起きた時の被害を考えると、ダンジョンブレイクが怖いって思う山崎さんの気持ちは分かるよ。でもダンジョン側に意思があるとして、ダンジョンブレイクして人がいなくなる方がデメリット多そうなんだが、違うのか?」

「人の生き死にってダンジョン側は関係ないんだよ。ダンジョンにしてみれば、地球のエネルギーを消費しないとヤバいから、人側の損害なんて些末事だって思ってるんだと思うのよ」


 ダンジョンが出来た理由が地球のエネルギー消費のためだけど、探索者が少なくてダンジョンの魔物を狩るのが足りていない今の状況は、人にとって滅茶苦茶困った未来しか生まないと分かった。

 ダンジョンブレイクを防ぐには、覚醒者が増えて探索者がダンジョンにどんどん入っていくようにしないといけないけど、今は魔法の道具のゲートでダンジョンを覆っているから魔素が外に出ていかなくて覚醒できるだけの魔素を人が吸い込めない。

 空気中の魔素が少ないなら、食事で魔素を取り込むしかないわけだけど、魔素の含有率が多い食事の提供方法を考えていかないといけないわけだ。 


「とりあえず私は毎日なーちゃんダンジョンに入って魔物を狩るよ。それをどういう形で買い取りしてもらうか、それは那智さんがダンジョン協会と決めて欲しいわけよ」

「素材そのものを買い取るか、山崎さんが魔道調理器具で料理したものを買い取るかってことだな」

「そうそう」


 なーちゃんダンジョンの一層目は、その日その日の食べ物記念日に由来する。

 でも二層目なら、私が望んだ食べ物の魔物が出るらしいから、一層目の魔物をすべて狩った後で二層目で臨んだ食べ物の魔物を狩るって言うのもありなんじゃないかと思っている。

 小麦粉が欲しいなら、小麦粉関係の魔物出ろって念じるって感じだ。


「そういう前例はないんだが、あんたの場合半分スキルみたいなものだから、料理したものを買い取る形でも出来ると思う」

「そうなの?」

「ああ、買い取る場合は必ず査定の魔道具を通すから、食べられないものは買い取り出来ないんだ。だから問題はないと思う。……ダンジョン協会で買い取る場合ってことだが」


 那智さんが不思議なことを言い始めるから、なにか買い取りしてもらう条件があるのかと考える。


「他で買い取りしてもらう時は駄目ってこと?」

「うん、その辺りが曖昧なんだが食品衛生責任者の資格は取っておいた方が良いとは思うよ。ダンジョン協会以外に売る場合を考えたら、だけどな」


 なんだか難しそうな話になりそうで、困ったなあと内心思いつつ牛乳を啜る。

 勉強は嫌いじゃないけれど、手続きは面倒だと思うんだよね。

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