なんの日ダンジョンさんにも聞いてみよう 2
『初魔法でボス討伐の称号を得ました、お祝いとして所持武器のさらなる巨大化及び武器と使用者の強化が可能になりました。また使用した魔法をスクロール無しで習得しました。今後なんの日ダンジョン以外でもこの魔法の使用が可能です。魔法は使用することで威力が上がるだけでなく、上位魔法を習得できるようになります。積極的に使いましょう。安全地帯はボス狩る場所じゃないの称号を得ました。なんの日ダンジョンに限りボス部屋に安全地帯ができます。これによりボスが突然襲ってくることはなくなります』
ボスが突然襲ってこれなくなるのは、物凄くありがたいけど。武器のさらなる巨大化って今だって三倍の大きさの刃になって扱いきれてないのに。
まって、今武器と使用者の強化って言った? それならさっきみたいに力負けしないで草刈り機だけで倒せるようになるかも?
そもそもさっきは草刈り機を巨大化させないでボスと戦ったから、普通サイズの草刈り機で戦ったけど安全地帯ができるなら草刈り機のスイッチを入れずに構えた状態でボス部屋に入れるし、中に入ってからスイッチ入れて巨大化できる。
そうなったら、かなり楽に戦えそうじゃない?
「うーん、でも同じボスが他の日に出るわけじゃないからなあ。ボスと再戦したいです! なんちゃって」
ゲームじゃないんだから、そんなの出来ないよね。と自分の発言に苦笑いして立ち上がりかけたその時だった。
「ブギャギャギャギャッ!」
「嘘でしょ。私の宝箱!」
少し離れた場所にあった宝箱が消えて、ボスが出てきた。
さっきと同じ巨大な豚だ。
「再戦したいなんて、冗談だったんだよぉ」
そうは言っても出てきたものは仕方がない。
安全地帯がどの程度か分からないけど、突進してきた巨大豚は私に攻撃できないと信じて草刈り機を構えスイッチを入れ「巨大化最大!! 私と草刈り機を超強化!」と叫ぶ。
やり方分からないけど、このダンジョンさんがくれたスキルならこれでいけるはずだと信じて、腰を落として草刈り機の刃を右側に向ける。
「ブギャギャギャギャッ!!!!」
「今度は負けないからね!」
内臓が見えてたけど、血とかグロいものが私の方に飛んでくることはなかったんだから、力負け無きゃ大丈夫だと私は自分と草刈り機の力を信じる。
「いっけーい!!」
ぶんっ、実は猪なんじゃないの? 猪突猛進って言葉が頭に浮かんできたほど、よける気一切無しで巨大豚は私に突進してきたから私は力任せに五倍程度には大きくなった草刈り機を右から左に大きく振るというか振り上げる。
「ブギャギャギャッ!!!」
草刈り機の巨大になった金属刃の威力で、びっくりなことに巨大豚の体が真っ二つになり上半身部分が飛んで行ってしまった。
嘘でしょ、一発って凄くない?
あまりの殊に呆然と飛んで行った巨大豚を見つめていると、すぐにその体は消えて無くなってしまった。
『初ボスを一撃で討伐の称号を得ました。ダンジョンの入場許可の権利を得ました。これよりなんの日ダンジョンは入場許可権利保持者の許可が無い者は入場できなくなります』
これってどういうこと? 私が許可しないと他の人は入れないってこと? 一年間はなんの日ダンジョンに入って魔物を狩るのは私の役目になるけど、その後は公のダンジョンになるのに、私がいちいち許可しないといけなくなるのは困るんだけど。
『すべての覚醒者の入場を許可でもいいですし、特定の人の入場を許可及び不許可することも可能です。現在は入場許可権利保持者のみがダンジョンの出入りが可能です』
「なるほど、それなら公になったらすべての覚醒者の入場を許可して、今は私が許可した人だけ入れるようにすればいいのか」
それならある意味一年間の管理が楽になるってことだ。
なにせ、ここは田舎だから、気安く人が家の敷地内に入ってくることがある。
うちは町の外れの方に家と畑と田んぼがあってその向こうは山ってところだから、田舎にある町の中でも田舎度が高いエリアになる。
この町の家と家が徒歩数分の距離だとすれば、家のお隣さんは徒歩十分? いやもう少しあるかもしれないって環境だけど、噂はすぐに広まるからダンジョンができたという話が誰かの耳に入ったら、皆見に来たがるだろう。
そんな時うっかり誰かがドアを開けて、中に入ってしまったら一大事になる。
私のように、運よく武器を持っていたなんて普通ならあり得ないからだ。
「ダンジョンは覚醒していないと入れないんだよって話も一緒に広まるといいけど、それでも開けて見せてくれって人はいそうだもんなあ」
この辺りの人、好奇心旺盛なんだよね。
うちの町は大きなスーパーも無ければ、ドラッグストアもないけど、隣の町や市にはあるから新しい店が出来るらしいという情報はすぐに入ってくる。
大きなお店はないけど、個人経営のお肉屋さんとお魚屋さんと雑貨店はあるし、小さな飲み屋さんとかパン屋さんとかもある。私が小さい頃からあるからどこも顔見知りだし、どのお店の経営者も情報通だ。
こういう人にダンジョンが出来たという情報が入ったら、秒で噂が広まるだろう。
「うーん、明日那智さんと支部長さんに相談して、注意書き書いたもの貼ってもいいか確認しといた方がいいかもしれないなあ」
ドアがあるのが家の納屋の中なんだから、何を張り紙しても問題はないと思うけれど、その内容に問題があると困るから、家に戻ったら忘れないように張り紙に書く内容を作って、明日確認してもらおう。
「よし、それじゃ宝箱確認しよ。さっきの消えちゃった……消えてない? 二つってボス討伐二回分ってことなの?」
すでに見慣れた素朴な木箱、これはさっきボスが再び出た時に消えた奴だと思う。
それからもう一つは、チュートリアルダンジョンでも見た、ザ・宝箱って見た目の箱だ。
「二回分貰えるんだ。ダンジョンさんありがとう!」
嬉しくなってお礼を言ってから、ウキウキと木箱の方の蓋を開く。
結構大きな箱だから、中身が楽しみ過ぎる。
予想だと、スモーカーなんだけど、どうかな?
「当たりだ、スモーカーだ」
これでハムが出来るね、今日は時間が遅いから家に帰ってから試そう。
とりあえず、鑑定。
魔道スモーカー:下処理及びチップ不要で任意の香りづけした生肉から燻製品が短時間でできる。ダンジョン内の魔素、使用者の魔力、魔石をセットし燻製可能、外に匂い煙が出ない。自動洗浄機能付き。スモーカーより大きな肉でも燻製処理可能。その他任意の食材の燻製も同様に出来る。
「これはつまり、ソミュール液に漬けたり、塩抜きしたり乾燥させたりしなくていいってことだ。凄いありがたい」
これなら憧れの生ハムを自宅で作るとか、手作りのハムとかベーコンとかも出来ちゃうってことだ。
その他任意の食材もってことなら、スモークチーズ食べたいってなったらすぐに作れちゃう、なにその夢仕様。
「田舎に住んでて何が困るって、テレビで美味しそうなものやってても簡単に食べられないってことなのよねえ。これからはプロ級のパンも焼けるしケーキもピザも焼ける。美味しいハムもベーコンも生ハムもスモークチーズも出来ちゃう。簡単に揚げ物も作れるし、鉄板料理もどんと来いなんて最高!」
なにせ魔道調理器具の凄いところって、材料が適当でも望みの料理が作れちゃうってところだ。
私の料理の腕はそこまで良くないけれど、普通の強力粉でなぜかハード系のパンが焼けるし、むちむちしたベーグルも焼ける。しかもチョコレートとかブルーベリーとかもどういうわけか味付けできるのよ。
「ああ、焼きたてのサクサククロワッサンに、生ハムとチーズを挟んで食べたり出来ちゃうなんて、嬉しすぎる。あ、宝箱もう一つあったんだ」
食欲を膨らませながらスモーカーをアイテムボックスにしまい、もう一つの宝箱を開く。
「なんだろ、スクロール? それから革の肩掛け鞄?」
スクロールが二本と革の肩掛け鞄だった。
ベージュの色の鞄は、ベルト部分がしっかりとしていて、長さ調整の金具がついている。
蓋があって、それを開くと結構中は広めに見えるし使いやすそう。なにより革の手触りが柔らかくていい感じ。
「スクロールは水初期魔法と風初期魔法。両方覚えます」
それぞれ開いて魔法を覚えて、下に置いていた草刈り機をアイテムボックスにしまうと鞄をななめ掛けする。
「よし、帰るか」
魔法陣に手を伸ばして『ダンジョン入り口に出たい。二層目に移動したい。ダンジョンに質問したい。のどれかを選択してください。どちらを選択しても一層目のボス討伐記録は登録されます』と声が流れてきて、今日の目的を思い出した。
いかんいかん、うっかりこのまま帰るところだった。
「ダンジョンさん、覚醒するための方法を全部教えて欲しいの。お願いできますか」
私みたいに誕生日にダンジョンに入った人以外にも覚醒者がいるんだから、覚醒する方法って一つじゃないんだと思う。
ダンジョンが増えているのに、覚醒者が増えないって物凄く困ることだよね。
だから、教えてダンジョンさん!
いつも読んでくださりありがとうございます。
今日でお盆休み終わりなので、明日から不定期更新になると思います。
週二から三回更新出来たらいいなと思っています。




