なんの日ダンジョンさんにも聞いてみよう1
「ふうう、植物刈るより動物の方が腕に負担がかかるのかなあ。腕がなんか怠いかも」
ジャガイモや麦の時にはそれほど感じなかった腕の怠さに、ボス部屋行くのは一瞬止めようかと考える。
今更な話だけど、電動草刈り機って長時間使い続けて良いものじゃない、モーターに負担がかかるし私の体にも凄く負担がかかるからだ。
「ダンジョンの中でも、振動障害とか気にしないとマズイのかなあ? そういえば保護メガネまた忘れちゃったけど、顔の方に何か飛んでくるってないのが不思議だよねえ」
外で草刈り機を使う場合なら、一から二時間程度使ったら休憩する。
モーターを休ませるのと、自分の体を休ませるため、それに草刈り機って神経集中して使わないと危ないからそんなに長いこと使えないのだ。
石とかうっかり弾くと危ないし、私はあんまり使い方が上手くないからつい左右に振っちゃうけれど、本当は右から左に振る時に刈って、右に戻すのは次に刈るために元の位置に戻すようにしていく方が効率よく綺麗に草が刈れるらしい。
私はこれが上手くできないので無駄な動きが多くなっているし、私が刈った後ってなんかあんまり綺麗じゃないんだよね。刈り残した草の高さが均一じゃないってのもあるのかもだけど。
この辺りは慣れなんだと思うけど、私これからもダンジョンに入って何かを狩る(刈る)なら効率よく草刈り機を動かすとか、疲れた時に他の武器使うとか考えていった方がいいのかもしれない。
「まあ、武器については今後考えよう。私の他の武器手斧と草刈り鎌だし。これでボスやってみるのはちょっとチャレンジャー過ぎるもんねえ」
使った方が武器のレベルが上がるとかあるなら積極的に使っていくべきかもしれないけど、どうも私のレベルが影響しているだけらしいし、それなら手斧と草刈り鎌は非常用に取っておいて魔法で攻撃できるように練習した方がいいかもしれない。
「ボス、魔法でやってみようかな」
ボス部屋の前まで来て、ドアに手をかけかけて一旦止まる。
まだ攻撃魔法使ってないんだよね、ちょっと練習してみようかな。このダンジョンに限りどんな魔法でも使えるって説明あったし、使ってみてもいいよね。
「火は怖いけど、ゲームの基本はファイヤーボールとかだよねえ」
そういう魔法が現実にあるのか分からないけど、なにせ魔法はスクロールが無いと覚えられないし。
「ええと、ゲームのイメージでいくには対象がないと厳しいかも」
なにせ今は一層目にはないもない、茶色い地面が見えているだけだ。
「そういえば鑑定しておけって言われたんだった」
魔法をどうしようと悩みつつ、那智さんに言われたことを遅まきながら思い出す。
鑑定せずにボス部屋に入っても、私には魔物の知識が無いんだから同じだと思うけれど、那智さんにそんなことは言えない。
「那智さんなら、鑑定したらどんな風に戦えばいいか分かるだろうけどねえ」
今のところ私には無理だ、なにせこのダンジョンの一層目はその日その日で出るものが違うし、何が出るのかなんて当日ダンジョンに入らないと分からない。
ダンジョンの麦の見た目で、ドロップが最恐魔小麦の小麦粉だし、雑草にしか見えなかったのがジャガイモでドロップが凶悪ジャガイモだった。
ボスは私の話から凶悪ジャガイモと、最強魔小麦らしいと那智さんは言っていたけれど、実際はどうなのか分からない。だって那智さんの話だととても覚醒したばかりの人間が刈れる魔物じゃないみたいなんだもんなあ。
「ええと、魔石はえ、オーク、こっちは色が違うな……えっとダンジョン狂い大豚? ハイオークとかオークキングとか、これじゃ鑑定結果から予想つかないじゃない」
魔石も大量のお肉も魔物の名前が色々過ぎる。ちなみに部位も色々過ぎてここから予想をつけるなんてどうやっても無理そうだ。
「この中で一番強いのって考えるとオークキングになるのかな、あ、ダンジョン狂い大豚王なんていうのもあるじゃない、どっちが強いのよ」
もう分からないから、行き当たりばったりでいくしかない。
エネルギーチャージに、アイテムボックスに入れていたチョコレートを口に入れ水を飲む。
怠い体に甘味が染み渡るよー。
「また那智さんが怒りそうだ」
もぐもぐと、二個目のチョコレートを食べながら怒った顔の那智さんを想像する。
結構想像でも怖い。
とりあえず魔法の練習は諦めて、今回は草刈り機で頑張ろうかな。
ちょっと休んで甘いもの摂取したおかげで腕の怠さも良くなってきたみたいだし、草刈り機の刃の部分になにかゴミが絡まってるって感じもないから手入れも今は不要。
「よし、行こう」
ドア開けてすぐに魔物が襲ってきても良いように、草刈り機のスィッチを入れてドアに刃がぶつからないようにしながらそっと開く。
「うわあぁぁぁっ」
ドアが開くの待ってたの? なんでうちのダンジョンさんのボスは中央にいないわけっ。
ドアを開いた途端、私の姿を見て突進してくる巨大な豚に悲鳴を上げながら草刈り機を構えボス部屋に入る。
「突進!! 頑張れ草刈り機!」
ガツンと巨大な豚のどこかに草刈り機が当たったけど、力負けして草刈り機の刃が巨大豚の皮の表面をシュルシュルと滑っている気がする。
「くううっ、負けないっ」
多分安全地帯のスキルが効いてるんだと思う、草刈り機の刃よりこっちに巨大豚は近付いてこれないみたいで、一メートル程度の距離が私と巨大豚で縮むことなく維持されている。
「ブギャギャギャギャッ!!!」
巨大豚の鳴き声と、私を噛みつこうとしているのか大きな口が私の前で大きく開く。
豚なのに歯が肉食獣みたいに尖ってる! この口の大きさ、私の頭なんて丸呑みできちゃいそうだよっ!
こ、怖すぎるんですけどっ、こんなの一層目に出ていい魔物なのぉっ!
「ファ、ファイヤーボール!! ファイヤーボール! ファイヤーボール!」
あんまりにも怖すぎて、怖すぎるから逆に目をそらせない、視線をそらしたらその時点で負けちゃう気がするよぉっ!
「ブギャギャギャギャッ!!!」
私に近付こうとしても、見えない何かに阻まれている巨大豚は自ら草刈り機の刃に自分の体を押し付けている。うわああっ、グロぃっ。回転する金属刃に皮がえぐられて内臓が見えてるよぉ。
「もうやだあぁ、ファイヤーボール!」
口の中目掛けて大量の火の玉飛んでいけっとばかりに、ファイヤーボールを連発する。
「ファイヤーボールッ! ファイヤーボール! ファイヤーボール! ファイヤーボール!」
とにかく何でもいいから、火の玉だ、ファイヤーボールだっとばかりに繰り返し叫ぶと、巨大豚の口の中目がけて勢いよく火の玉が何個も飛んでい行く。
その勢いにい押されて巨大豚が後退り始めたから、そのままファイヤーボールと繰り返し叫び、ヨロりとよろけた巨大豚の首に向け草刈り機の刃を右から左へと振り切った。
「ブギャギャギーーー!!」
巨大豚の首は勢いよく飛んで行き、その瞬間私は力が抜けてペタリとその場に座り込んだ。
「か、勝てたあぁ」
し、死ぬかと思ったと、呆ける私の耳にダンジョンさんの声が響き始めた。




