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今日はなんの日、食べ物ダンジョンできました  作者: 木嶋うめ香


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チュートリアルダンジョンさんに質問

「反省しました、心の底から反省中です」

「なんで突進したんだよ」


 まだ怒っている様子の那智さんは、ボス部屋の中央に現れた宝箱には触れずに私に聞いてくる。


「ええと、勢い?」

「勢いってどういうことだよ」


 どういうことって、私にもよく分からない。

 でも、向こうが戦闘態勢になる前に狩れるならその方がいいんじゃないかって思ったんだよね、あと単純に動物型に襲われるのは怖いから。


「あの、ほらゴキブリって見つけた瞬間に叩かないと、怖いとか気持ち悪いとか思っちゃって躊躇しちゃうじゃない。だからそれに近い感じなのよ。ほら、勢いつけてやっちゃった方がイケるというか」

「全然分からないな。まあ姿が完全に出る前でも攻撃が効くっていうのは発見だったけど、あの勢いで草刈り機振り回されたのは真面目に恐怖だったぞ。俺が山崎さんに討伐されるかと思った」


 那智さんを討伐したりしないけど、実際魔物にしか意識がいってなかったから間違ってというのはあったかもしれない。

 しかも無意識で草刈り機巨大化させてたし、本当気を付けないと誰かを怪我させちゃうかもしれない。


「反省してます。ごめんなさい、以後気を付けます」

「それ全然気を付ける気が無い奴だ」

「そんなことないよ。それより宝箱開けないの?」


 うちのダンジョンさんよりちょっと豪華な見た目の宝箱だ。

 大きさはそんなにだけど、宝箱と聞いて思い浮かべると思う形をしている。

 金具が正面についてて、かまぼこ型の蓋がカパッと後ろに開くタイプだよ。

 わくわくするよね、宝箱。


「ボス討伐をしたのは山崎さんなんだから、俺のものじゃない。だいたい俺は何もしてないのに魔物討伐の記録ついちまったよ」

「一緒にボス部屋に入ったし、良いんじゃない?」

「まあ、ここのボス討伐の記録なんて腐るほどあるから今更だが、あんたの討伐記録なんだぞ」


 那智さんは律儀にそう言うけれど、そうはいっても私が勝手にした結果だから、そのくらいいいよ。

 それよりここのボス討伐のお宝ってなんだろう。


「じゃあ開けるよ。お宝は、なぁにかなぁ!」


 一人でもつい歌っちゃう私は、当然ここでも控え目に節をつけながら蓋を開ける。

 本当宝箱開くのってわくわくしちゃうよね。


「……これなんだろう」


 さっきより大きな魔石が三つと、ナイフが一本、あともう一つが分からない。


「那智さん、これって」


 聞いてから鑑定すればいいんだよと思い出す。

 鑑定の存在をすぐに忘れちゃうんだよね、使った方が上達するなら日々使うようにした方が良いのかもしれないけど、どうなのかな。


 ボス討伐ドロップ

 魔鼠の牙のナイフ:探索者初心者用のナイフ、採取に便利。

 魔鼠の毛皮の耳当て:防御力と寒さ耐性が上がる。(効果小)


 なるほど、探索者初心者用の装備ってことだ。

 耳当ては、父さん行きかな。冬場寒いって泣きながら朝の農作業してるもんね。ナイフも畑仕事で使えるかなあ? 那智さん本当にいらないのかな?


「鑑定してみたのか?」

「うん、探索者初心者用のナイフと、魔鼠の毛皮の耳当てだって」

「ナイフはよく出るが、耳当てはレアだよ、使えるものが出て良かったな」

「全部私がもらっていいの?」

「ああ、元々パーティーでちゃんと戦ったとしても、ボス討伐のお宝は研修者のものだからな」


 そうなんだ、効果小とはいえレアなんだけどそれなら私が貰っていいんだね。

 さすがチュートリアルダンジョンって感じだ、うちのダンジョンさんとは出るものが違う。

 というか、そろそろ帰らないと時間がヤバいかもしれない。


「那智さん、ここの探索二階は明日でもいいかな。そろそろ帰らないと家のダンジョンに入れなくなる」

「ああ、そうだな。じゃあ明日支部長と話をした後でだな」


 那智さんの許可が出たので、今日はここで探索終了だ。

 研修というのはあれだったかもしれない、私が好き勝手やり過ぎた。

 本気で反省しないと駄目だな、明日は反省して研修を受けよう。


「どうした、ダンジョン出るぞ」

「あ、出口は魔法陣なんだね」

「そうだ、これは今のところ全ダンジョン共通だな。じゃあ、先に出るぞ」


 那智さんはさっさと魔法陣に触れて出ていく、というか壁に吸い込まれていく。

 私も帰ろうとして、選択肢が三つでた。

 ダンジョンの入り口に出る、二層目に上がる、ダンジョンに質問するだ。


「覚醒者ってどうして増えないの?」


 ここでも質問できるんだと知って、つい口から質問が出てしまった。

 だって、どうして新しい覚醒者がなかなか増えないって話になるのかなって、不思議だったんだもん。


『覚醒者が増えない理由をお答えします。それはダンジョンの入り口を魔道具で覆っているからです。ダンジョンの入り口から出る魔素が魔道具により塞がれているため、外に出る魔素が少なく覚醒できる量を人が吸えないのです。質問の答えは以上です。本日の質問は終了しました。ダンジョンの入り口に出るまたは二階層に上がるを選択してください。どちらの場合もボス討伐済と記録されます』


 ダンジョンの入り口を魔道具で覆っているから、魔素が外に出ないのが探索者が増えない理由ってどういうことだろう。


「あ、那智さんが待ってるんだった。ダンジョンさん質問に答えてくれてありがとう。入り口に送ってください」


 お礼を言って魔法陣に触れて、入り口に向かう。


「どうした、大丈夫か」

「え、あ、うん大丈夫」


 これどう説明したものか分からないな。

 覚醒者が増えない理由、謎が増えただけな気がする。

 そうだ、うちのダンジョンさんにどうやったら覚醒するか聞いたらいいんだ。よし、それから那智さんに話そう。


「那智さん、うちのダンジョンさんに今日来る?」

「いや、今日は支部に戻って仕事しないといけない。明日こっちを早めに出てそっちに一緒に行く」

「そっか、じゃあ今日はここで解散だね。研修ありがとうございました」


 草刈り機をアイテムボックスにしまってからダンジョンのダンジョンの外に出て、ゲートに探索者証を当てる。

 ここまでは那智さん運転の車で来たけれど、実は私の車はアイテムボックスに入っている。

 ジャガイモとか大量に入ってたから当然なんだけど、車が入った時はちょっと驚いた。


「あ、ああ帰ったらまたダンジョンに入るんだから、山崎さん無理しないようにな」

「うん、ありがとう。じゃ、明日またよろしくね」


 駐車場に向かう那智さんに手を振って、私は道路に出ると車をアイテムボックスから出して乗り込む。


「なんだか今日は一日が長いなあ」


 運転開始して家までの道を運転しつつ、本当に今日は豚が出るのかなと考えたり、魔素ってそんなに覚醒に必要なのかと考えたりしていた。

 那智さんの話だと、探索者を育てる学校は基本覚醒している人が通っているというし、そういう学校がある程度には覚醒者がいるってことだ。

 その一方で、覚醒したくても出来なくて、でもダンジョンに関わりたくて学校に通っている人もいる。

 その人達が何割くらい卒業までに覚醒するのか、私は知らないけど、どうせなら私みたいに何も知らない人間が覚醒するより、興味ある人が覚醒した方が良いに決まっている。


「私みたいな初心者が気にする話でもないと思うけれど、判明できるならって思うよね」


 でも、ダンジョンに質問すれば簡単に答えてくれることなんだから、今まで判明しなかったのもおかしな話な気がする。


「覚醒する方法聞いたことないなんてあるのかな。ないよねえ?」


 質問できる環境があるのに、しないなんてそんな話はないだろう。

 もしかして、初入場の称号持ちじゃないと質問できないとか縛りがあるのだろうか、それでもダンジョンの数だけ初入場の称号持ちがいるのだから、誰かは質問してもいい気がする。


「うーん、よく分からないなあ」


 国道をひたすら町に向けて進みながら、もしかしてダンジョンさんが教えてくれなかったのかなと思いつくけれど、覚醒者が増えない理由をチュートリアルダンジョンさんが答えてくれたんだから、覚醒する方法も教えてくれる気がするという結論になってしまう。


「もしかして、ダンジョンに関する質問しかしてこなかったのかも?」


 ダンジョンがする説明だから、そのダンジョンに関することしか皆質問をしてこなかったのかも。

 私だって、那智さんたちに覚醒者が増えないって話を聞かなければ、ダンジョンに質問しようと思わなかっただろうから、そういうことなのかもしれない。


「一日一回とは言われたけど、聞いちゃ駄目なことがあるとは言われなかったし、それなら聞いてもいいよね」


 まず今日の一層目の魔物を狩って、ボス部屋でボスを討伐して、質問はそれからだ。


「それにしても買い取り額どのくらいになるのかな」


 取らぬ狸の皮算用ってわけじゃないけど、買い取り額に期待しちゃうよね。

 私が勤めてる会社は給料もボーナスも安いからね、収入が増えるのは大歓迎だ。

 

「普通預金に入れっぱなしっていうのもあれだから、ある程度まとまったら定期預金にしておこうかな」


 探索者になると、生命保険に入っていても怪我の入院は対象外になるらしいから、何かあった時のために貯金しておく必要はある。

 毎日ダンジョンに入って毎日大量買い取りしてもらえたとしても、その辺は考えておかないといけないところだよね。


「おばちゃんに保険の話聞いておかないとなあ。探索者の子と話したらびっくりされちゃうかなあ」

 

 私の生命保険は、親戚のおばちゃんからの勧誘で入ったものだ。

 探索者になっても病気入院と病気の死亡の方は保証がされるらしいから、解約は考えないけど一応話をしておいた方がいいんだろうなあ。


「まあ、告知義務はないらしいから、もう少し様子を見てからにしよう」


 もしかしたらダンジョンがなくなって、探索者やらなくなるかもしれないし。

 探索者に登録したその日に慌ててする話でもないよね。


「なんか法がダンジョン向けになってないってネットに書いてあったけど、法関係の困りごとこれからあるのかなあ。ないといいなあ」


 運転中って色々考えちゃうよねえ、 まあ、ゆっくり考えていこう。

 新しいこと始めるって、調べたり考えたりすること増えちゃうよねえ。

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