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#第二章 #夜空

「蒼依は今、何を思ってるんだよ」


 空が青と赤に分断されて、暗く寒い夜が近づいてくる。冷たい風が突き刺すように、春樹の手を悴ませていた。


「あくまでも仮定ですが、桜庭様は橘様のことを受け入れられる状況ではないように思えます。もし普通に見えても、表には出さないようにしている可能性が高いです」


「どうにかしたいけど、思い通りにはいかないってことだよな」


 スマホを握る手に力が入る。だったら『恋むすび』が、上手く試練にすれば良いじゃないかと春樹は思っていた。


「そうですね。無理に届けようとするのではなく、自然と伝わるようにした方が、まだ可能性はあると思いますよ」


「……連絡もさせてもらえなければ、会ってもくれないのに」


 きっと蒼依には言葉を受け取ってもらえない。だから、そんなの無理だろ、とため息混じりで春樹は呟いた。


「橘様の想い、よく分かります。ただ桜庭様が嫌がっているなら、無理に連絡を取ったり、強引に会おうとするのは、安心できず、逆効果になってしまう可能性が高いです」


「元通りにはいかないってことかよ」


「すぐには難しいと思います。感情の整理がつかないことには、どうにもなりません」


 こんな状況でも、蒼依の都合に振り回される。いや、無意識に春樹の方が合わせていたのかもしれない。曖昧でも、お互いを信頼していたからこそ、これまでは続いてきた。


「蒼依の負けず嫌いもお節介も、前なら上手く流せたはずなのに」


 まるで何かを壊してしまったかのような感覚に襲われながら、春樹は伝えられない想いを胸に秘める。


「むしろ俺は何を感じてるんだろうな。蒼依のことばっかり気にしてたけど、だんだんと自分の感情も分からなくなってきちゃってさ」


 蒼依に受け入れてもらえなかったこと。多分、それが一番大きいよな、と春樹は思いながら、AIからの返信を憂鬱に待っていた。


「あいつのことが分からない。そんな風に分からないと思ってたら、今度は自分のことが分からなくなって、何だかそんなのバカみたいだろ」


 ここ最近は、いつも蒼依のことを考えている。春樹は怒ることすらやめて、自分の前から去っていった、喧嘩の最後の場面を思い出す。今度は、好きになった方が負け。なんていう訳の分からない勝負を挑んできた時の蒼依の姿を思い出す。


「どうしていつも後から気づくんだろう。素直じゃないのは、蒼依だけじゃないってこのくらい分かってんだよ」


 もっとその時に出来たことがあるはず。でも、もしその時に戻れたとしても、自分はきっと同じことを繰り返してしまうだろうなと、春樹は過去のことを思い出していた。


「嫌いなら、嫌いってはっきり言ってくれよ。これじゃ何も分かんないじゃん」


 好きか、嫌いか。そんな風に単純に片付けられたら、曇り空のような気持ちにはならずに済んだのだろうかと、春樹は宵の口の星空を見上げていた。

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