最善の選択
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新学期公演が終わった数日後の朝、私は珍しくホームルーム前に起きていた。羽多ちゃんと春壱は話ながら、一緒に教室へ入って来た。
「春壱、話があるんだけど。ちょっといい?」
私は席についた春壱を廊下から呼んだ。
「何だよ。もうすぐホームルーム始まる。」
「すぐ済むから。ちょっと来て」
春壱が廊下に出ようとすると、クラスの男子に茶化された。
「何だ相田、告白か~?」
「やめなよ。どうせ部活の事でしょ?」
それを聞いて、莉奈がやめるように言ってくれた。二人で廊下に出ると、私は春壱の前で頭を下げて言った。
「須藤部長、私、先輩達と一緒に引退します。」
「はぁ!?」
春壱は普通に驚いた。
「短い間ですが、お世話になりました!」
「………。」
「何?何?何事~?」
莉奈が気になって廊下に来る。廊下側の席の男子が莉奈に言う。
「相田部活やめるらしい。」
「部活って?演劇部?え、何で?何でなの?」
「さぁ?」
莉奈は納得できない様子だった。それよりも、もっと納得いってないのは春壱だ。
「ひらりの恋人は舞台なのに!?なのにどうして?」
「俺、4月もこの光景見た事ある。デジャブ?」
剣道部がその光景を見て言った。
私は頭を上げて、教室に戻ろうとした。
「じゃ、そうゆうことで。」
「そうゆうことじゃねーだろ!理由は?理由ぐらい聞く権利はあるだろ?」
やっぱり怒るよね~?
「えーと、あの……燃え尽きた?もう、先輩達もいないし、お姉ちゃんにも、見せられたし、もう……いいかな。って。」
「…………わかった。」
そう言って春壱は教室へ戻った。意外にも最後は、わかった。としか言わなかった……。
看板をめちゃくちゃにしたのも、電気の設定を変えたのも、晴君がやった証拠があるわけじゃない。だけど、私が辞めさえすれば、とりあえずの間は演劇部を守れる。春壱には言えない。言ったら……晴君は疑われる。晴君がボロを出すとは思えない。春壱を言いがかり扱いはされたくないし、晴君と険悪になって欲しくもない。今はこれが、一番最善の選択だと思う……。
席についてしばらくすると、先生が入って来る。
「ホームルーム始めるぞ~!日直~号令~!」
「きりーつ!礼!おはようございます!」
「今日から放課後学園祭準備だ~みんな協力してやるように~聞いてるか~?相田~!」
「はい。」
私は難なく返事をした。
「あ、え?相田、起きてたのか!珍しいな!今日は雪が降るな~」
先生はそう言ってホームルームを始めた。
その日のお昼休み、佐藤がひらりにいち早く訊きに行っていた。
「ね、ひらり、何で?何で辞めたの?」
「ごめん莉奈、今日委員会の集まりあるから。」
教室の出入口では晴がひらりを待っていた。
「ひらりちゃん、もう集まる時間だよ!行こう!」
「行って来るね。」
そう言って教室を出て行った。それを見た羽多が佐藤に訊いた。
「ひらりちゃん、辞めたって、何?」
「演劇部だよ。」
「え?は?」
そりゃ驚くだろうな。
「私も驚いたよ。」
「だって、私、今日入部したんだよ?顧問の先生にも挨拶に行って、入部届けも出したんだよ~?」
羽多は動揺しまくっていた。
「え……それは私より納得いかないね。」
「そうだよ!ひらりちゃんをびっくりさせようと思ってたのに、先にびっくりさせられるなんて!」
羽多はかなりがっかりしていた。この様子じゃ、やっぱりやめると言い出しかねない。




