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母の欠片

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公演が終了すると、受付が中に声をかけた。

「お客さん全員出ました!公演終了です!」

部長はみんなに外に出るように促す。

「みんな、外に出て知り合いに挨拶できたら一旦中で集まってね!」

「はーい!」


みんな、それぞれ知り合いの観客に会いに行く。何故かひらりに連れられて、俺も相田先生の所に行った。

「ひらり!」

「お姉ちゃん!」

「浩ちゃんと観に来たよ~」

隣にはいつの間にか杉本もいた。

「杉本先生いたんですか。」

「春壱君、一応僕顧問なんだけど?」

「お姉ちゃん観に来てくれてありがとう。」

ひらりはいつにも増して嬉しそうにしている。ひらりの反応に、相田先生は、迷いながら言葉を繋いだ。

「何か……なんて言ったらいいのかな?あの人が魅了された物が…少しわかった。あの人の事、全然知らないけど……ひらりのおかげで、少し……理解できた。」

「お姉ちゃん……ありがとう。」

ひらりは相田先生に抱きつく。そこへ晴がやって来た。

「どうしたの?ひらりちゃん」

「晴喜君…………」


相田先生から離れて、ひらりは言った。

「私、お母さんの事、お姉ちゃんより全然知らないの。知らないから、お母さんが好きだった世界を見てみたかった。お母さんの欠片があるなら、何でもやってみたかった。お母さんを生き返らせる事はできないけど、お姉ちゃんにもお母さんの欠片が伝わって……よかった。やって良かった……。」

「ひらり……。」

相田先生とひらりはもう一度抱き合った。すると、部長がそろそろ時間だと知らせる声がした。

「みんなそろそろ片付けに取りかかるから、中へ入って~!」

ひらりは相田先生から離れると返事をした。

「はーい!じゃ、もう行くね!今日はありがとう!」


ひらりは先に会場中へ入って行った。残された晴は、ひらりの行った方を見て俺に言った。

「春壱……僕、勘違いしてた。」

「え?何を?」

「ひらりちゃんは、春壱がいるから演劇部を頑張ってるんだと思ってた。」

「何言ってんだ?演劇が好きだからだろ?」

『お母さんが好きだった世界を見てみたかった。お母さんの欠片があるなら、何でもやってみたかった。』

その言葉に、晴は何を思ったんだろう。


晴と別れて、中へ入ると、何人か泣き出していた。みんなそれぞれ抱き合い、握手しあう。

「じゃあ、最後の反省会、始めます……何かある人~!」

次々に手が挙がる。

「はい!今までで最高の舞台でした!」

「はい!楽しかった!」

「はい!ひらり覚醒ずるいでーす!」

「あははは!ひらり覚醒したね~!ひらり!ラスト、周りを食うんじゃないよ!舞台は協力!」

ひらりは部長に笑顔で怒られていた。

「ご、ごめんなさい~!」

「ひらりが本気出せたという事で……次の部長はひらり、あんた。」

「無理です……春壱!春壱の方が安心です!私は…………」

え?ひらりか部長って流れだろ?

「うんまあ、そうだね。確かに……ひらりは演技の方に集中したいだろうから、春壱!次の部長よろしくね!」

「は?はい?」


しばらく理解できないでいると、部長が俺を部長と呼んだ。

「須藤部長~!」

みんなも口々に部長と呼ぶ。

「春壱部長~!」

「まぁ、まだ私達も卒業まで時間あるし、部長業も裏方業もちゃんと引き継ぐから安心して。何かあったらどんどん頼っていいから。卒業までは何でも手伝う。じゃ、明日の片付けが終わったら、須藤部長の元、新体制で学園祭と大会について話し合ってね!」

「はーい!」


三年生は俺の前に一列に並んで、

「春壱、演劇部を、よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします!」

そう言って頭を深く下げた。

「え……はい!やれるだけ、やってみます!」

「そこは頑張りますだろうが~!」

部長がキレた。

「いや、だって……みんな、頑張りますは使わないのかと思って。」

「まだツッコませるの~?もう部長じゃないのに~もぉ~」

こんなタイミングで、部長は泣き出した。緊張が緩んだんだろう。

「実喜~!」

「部長~!」

泣いている部長に次々とみんなが抱きつく。

「私、部長に出会えて良かった!」

「私も!実季と一緒に演劇部入って良かった!」

「みんなのおかげでこの2年、ずっと楽しかったよ!」

「先輩が部長で良かったです!」

みんなわんわん泣いていた。泣きすぎだろってくらい。


「最後まで大騒ぎで悪いな。」

「先輩……」

照明の先輩が言った。

「あいつら、無茶苦茶だったけど、本当に面白かった。とうとう祭りは終わりか……。春壱、後は頼むな。」

「はい。」


あまりにも短い時間だった。たったの、ほんの一時間。


2年間に何本舞台ができるかわからない。でも、全部合わせたとしても数時間だ。数時間の夢の世界。


これで、先輩達の夢の世界は終わりだ。


好きな人達と好きな事ができる。

この世界は、なんて面白いんだろう。

この世界は、なんて素晴らしいんだろう。


世界の終わりに涙するなんて、

なんて羨ましいんだろう。


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