新学期
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長いようで短い夏休みが終わり、新学期が始まった。演劇部は夏休み明けに定期公演がある。俺達はその準備に忙しく、夏休みも毎日のように学校に来ていた。正直、新学期という感じがしない。
チャイムが鳴ると、ホームルームが始まる。
「新学期からこのA組に転入生が来ました。小河羽多さんです。」
先生が転校生を紹介した。
「小河羽多です。よろしくお願いします。」
羽多が挨拶した。え?嘘だろ……同じクラス?羽多が転校してくるのは知っていた。でもまさか同じクラスなんて……嬉しいような……そうじゃないような……複雑な気分になった。
先生は羽多の席を説明した。
「席は相田の隣の席に。わからない事は相田に……」
ひらりは机に頭を置いて寝ていた。
「可愛い子だな。」
隣の友達がそう言った。
「同じ中学だったやつ。」
「同中?じゃ、地元に戻って来たんだ~!」
「独り暮らしのばーちゃんが心配なんだってよ。」
そう話していると、羽多はひらりの隣に座った。
「相田~!聞いてたか~?」
ひらりは慌てて起きた。そして、手を上げて立ち上がった。
「はい!先生大好きです!!」
「あ~残念だ。先生は朝からしっかり起きてる奴が好みだ。相田、朝から寝るな~!」
クラスに笑いが起こる。
「え……あ……すみません!あ!羽多ちゃん!」
フラれたなんて言われながら、恥ずかしそうにひらりは椅子に座った。
「なんだ。知り合いか?じゃ、小河、わからない事は相田にきいてくれ。相田、頼んだぞ!」
「がってん!承知の助!」
「普通に返事しろ~」
「へーい。」
ひらりは口を尖らせて返事した。
「ひらりちゃん、よろしくね。」
「こちらこそ。羽多ちゃんよろしく~!」
二人は仲良さそうに挨拶しあっていた。
昼休みになると、佐藤とひらりと羽多が一緒にお昼を食べていた。
「あははは!ひらり、朝から寝ボケウケる~!先生に告白って!」
「まだ笑うの~?サトゥー。」
妙にテンションが高い。新学期で友達と会えたのがそんなに嬉しいのか?
「サトゥーやめれ!莉奈。莉奈って呼んで。小河さんも。」
「じゃあ、莉奈ちゃん、私も羽多って呼んでよ。」
「私もひらりんって……」
それは無茶だろ……。
「ひらりんは無理!それは無理!!」
「そんなに全力拒否するんだ…」
佐藤の全力否定も……羽多は引いていた。
「じゃあ、ひらりでいーでーす。」
ひらりが弁当を食べている間に、羽多は佐藤と世間話をしていた。
「夏休みは?引っ越し?」
「うん。必要な物そろえたりしてたよ。」
「そっか~おばあちゃん心配で戻って来たって聞いたけど、よくこんな田舎に戻って来たね~。」
「まあ、産まれ育った所のが住みやすいよ。」
「ふーん。」
食べ終わって片付けをしているひらりに、佐藤が訊いた。
「あ、そうだ、ひらりはさ、展覧会終わった後夏休み何やってたの?やっぱり部活?」
「部活だよ~。展覧会、見た?あれ?莉奈何部だっけ?」
「バレー部」
「展覧会って?」
羽多が展覧会の事を知らず、何の事か訊いていた。
「夏休みの合宿の日に、美術部と演劇部が合同でアートイベント開いたんだよ。演劇部のパフォーマンス見たけど、良かったよ~!」
「ありがと~!良かった~今回初めてやったけど、クリスマスもやりたいから、しいちゃんに交渉中だよ~」
「へぇ~そうなんだ。冬も楽しみ~」
羽多は思い出したように言った。
「そういえば、ひらりちゃん演劇部だったね!」
「そう。美術部も兼部してるんだ~!あ、新学期公演、明日からだから良かったら観に来てね。」
ひらりはチラシを出して、みんなに見せる。
「行く行く~友達誘って行くよ~羽多も一緒に行こうよ!私なんか新歓公演見てから、隠れひらりファンだよ~」
「隠れなくて良くない?」
「この子、演技まあまあだから。」
ウケる……。演技まあまあって誉められ方……。
「まぁまぁって……それって誉められてる?」
「誉めてる。誉めてる。」
「春壱!さっきから何笑ってんだよ!まあまあって誉められてんだよ!」
笑っていたのがバレていた。俺はごまかすためにひらりに注意した。
「それよりお前さ、夜ちゃんと寝れてるのか?朝から居眠りって……展覧会前も眠れないってほざいてたよな?」
「展覧会前は楽しみで眠れなかっただけ。昨日は最終確認を少々?3時まで?」
「バカ!最後まで体力持たないだろうが!ちゃんと寝ろ!」
そこへ羽多が間に入った。
「春壱、そんなに怒らなくても。ひらりちゃんだって緊張してるんだよ。」
「うん、うん、羽多ちゃんもっと言って。もっと。」
ひらりは羽多の後ろに隠れてもっともっとと口を挟む。
「ひらりちゃん……」
「あ、トイレ、時間なくなる前に行っとこ~!」
そう言ってひらりは教室を出て行った。ふと、ひらりに伝え忘れていた事を思い出して、ひらりを追った。
途中で晴喜に会っているのが見えて、思わず飛び出しそうになったが、とっさに曲がり角に隠れた。
「晴君……。」
「今日はどうして非常階段前来なかったの?待ってたのに。一緒にお昼食べようって約束したよね?」
「ごめんね。今日は羽多ちゃんと食べたくて。行けないって送ったと思うけど……見てなかった?」
ひらりは携帯を見せた。
「今日携帯忘れた。羽多の方を優先したんだ……。」
「そうゆう事じゃなくて……うんん。今日は私が悪かった。ごめん。」
「じゃあ、今日は放課後一緒に帰ろう。」
携帯を握り直して、ひらりは言った。
「あの……ごめん、今日からしばらくは新学期公演があって一緒には帰れない。夜遅くなっちゃうから先に帰って。公演中は時間の余裕無くて、なかなか時間合わないけど、明日からはお昼は一緒に食べよう?」
「うん。わかった。」
少し……ホッとした。あの事があってから、二人きりにするのが心配になる。二人は教室に戻って来た。
「あ、春壱。」
「あ、そうだひらり、今日のゲネ5時から。先輩からひらりに伝えるように言われてた。」
隠れて聞いていたように思われたくなくて、急いで要件を伝えた。
「わかってるって。昨日連絡来たもん。それより春壱、バミリで、見切れ線作ったらどうかな?袖が狭いから、その方が一年生とかわかりやすいと思うの。」
「あー確かに。練習の時も何回か見えてたからな~端の客席だと特に見えやすいし。」
そのまま晴を残して、ひらりと話しながら教室へ入って行った。




