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新学期

83


長いようで短い夏休みが終わり、新学期が始まった。演劇部は夏休み明けに定期公演がある。俺達はその準備に忙しく、夏休みも毎日のように学校に来ていた。正直、新学期という感じがしない。


チャイムが鳴ると、ホームルームが始まる。

「新学期からこのA組に転入生が来ました。小河羽多さんです。」

先生が転校生を紹介した。

「小河羽多です。よろしくお願いします。」

羽多が挨拶した。え?嘘だろ……同じクラス?羽多が転校してくるのは知っていた。でもまさか同じクラスなんて……嬉しいような……そうじゃないような……複雑な気分になった。

先生は羽多の席を説明した。

「席は相田の隣の席に。わからない事は相田に……」

ひらりは机に頭を置いて寝ていた。


「可愛い子だな。」

隣の友達がそう言った。

「同じ中学だったやつ。」

「同中?じゃ、地元に戻って来たんだ~!」

「独り暮らしのばーちゃんが心配なんだってよ。」

そう話していると、羽多はひらりの隣に座った。


「相田~!聞いてたか~?」

ひらりは慌てて起きた。そして、手を上げて立ち上がった。

「はい!先生大好きです!!」

「あ~残念だ。先生は朝からしっかり起きてる奴が好みだ。相田、朝から寝るな~!」

クラスに笑いが起こる。

「え……あ……すみません!あ!羽多ちゃん!」

フラれたなんて言われながら、恥ずかしそうにひらりは椅子に座った。

「なんだ。知り合いか?じゃ、小河、わからない事は相田にきいてくれ。相田、頼んだぞ!」

「がってん!承知の助!」

「普通に返事しろ~」

「へーい。」

ひらりは口を尖らせて返事した。


「ひらりちゃん、よろしくね。」

「こちらこそ。羽多ちゃんよろしく~!」

二人は仲良さそうに挨拶しあっていた。


昼休みになると、佐藤とひらりと羽多が一緒にお昼を食べていた。

「あははは!ひらり、朝から寝ボケウケる~!先生に告白って!」

「まだ笑うの~?サトゥー。」

妙にテンションが高い。新学期で友達と会えたのがそんなに嬉しいのか?

「サトゥーやめれ!莉奈。莉奈って呼んで。小河さんも。」

「じゃあ、莉奈ちゃん、私も羽多って呼んでよ。」

「私もひらりんって……」

それは無茶だろ……。

「ひらりんは無理!それは無理!!」

「そんなに全力拒否するんだ…」

佐藤の全力否定も……羽多は引いていた。

「じゃあ、ひらりでいーでーす。」


ひらりが弁当を食べている間に、羽多は佐藤と世間話をしていた。

「夏休みは?引っ越し?」

「うん。必要な物そろえたりしてたよ。」

「そっか~おばあちゃん心配で戻って来たって聞いたけど、よくこんな田舎に戻って来たね~。」

「まあ、産まれ育った所のが住みやすいよ。」

「ふーん。」


食べ終わって片付けをしているひらりに、佐藤が訊いた。

「あ、そうだ、ひらりはさ、展覧会終わった後夏休み何やってたの?やっぱり部活?」

「部活だよ~。展覧会、見た?あれ?莉奈何部だっけ?」

「バレー部」

「展覧会って?」

羽多が展覧会の事を知らず、何の事か訊いていた。


「夏休みの合宿の日に、美術部と演劇部が合同でアートイベント開いたんだよ。演劇部のパフォーマンス見たけど、良かったよ~!」

「ありがと~!良かった~今回初めてやったけど、クリスマスもやりたいから、しいちゃんに交渉中だよ~」

「へぇ~そうなんだ。冬も楽しみ~」


羽多は思い出したように言った。

「そういえば、ひらりちゃん演劇部だったね!」

「そう。美術部も兼部してるんだ~!あ、新学期公演、明日からだから良かったら観に来てね。」

ひらりはチラシを出して、みんなに見せる。

「行く行く~友達誘って行くよ~羽多も一緒に行こうよ!私なんか新歓公演見てから、隠れひらりファンだよ~」

「隠れなくて良くない?」

「この子、演技まあまあだから。」

ウケる……。演技まあまあって誉められ方……。

「まぁまぁって……それって誉められてる?」

「誉めてる。誉めてる。」

「春壱!さっきから何笑ってんだよ!まあまあって誉められてんだよ!」


笑っていたのがバレていた。俺はごまかすためにひらりに注意した。

「それよりお前さ、夜ちゃんと寝れてるのか?朝から居眠りって……展覧会前も眠れないってほざいてたよな?」

「展覧会前は楽しみで眠れなかっただけ。昨日は最終確認を少々?3時まで?」

「バカ!最後まで体力持たないだろうが!ちゃんと寝ろ!」

そこへ羽多が間に入った。

「春壱、そんなに怒らなくても。ひらりちゃんだって緊張してるんだよ。」

「うん、うん、羽多ちゃんもっと言って。もっと。」

ひらりは羽多の後ろに隠れてもっともっとと口を挟む。

「ひらりちゃん……」

「あ、トイレ、時間なくなる前に行っとこ~!」


そう言ってひらりは教室を出て行った。ふと、ひらりに伝え忘れていた事を思い出して、ひらりを追った。


途中で晴喜に会っているのが見えて、思わず飛び出しそうになったが、とっさに曲がり角に隠れた。

「晴君……。」

「今日はどうして非常階段前来なかったの?待ってたのに。一緒にお昼食べようって約束したよね?」

「ごめんね。今日は羽多ちゃんと食べたくて。行けないって送ったと思うけど……見てなかった?」

ひらりは携帯を見せた。

「今日携帯忘れた。羽多の方を優先したんだ……。」

「そうゆう事じゃなくて……うんん。今日は私が悪かった。ごめん。」

「じゃあ、今日は放課後一緒に帰ろう。」

携帯を握り直して、ひらりは言った。

「あの……ごめん、今日からしばらくは新学期公演があって一緒には帰れない。夜遅くなっちゃうから先に帰って。公演中は時間の余裕無くて、なかなか時間合わないけど、明日からはお昼は一緒に食べよう?」

「うん。わかった。」

少し……ホッとした。あの事があってから、二人きりにするのが心配になる。二人は教室に戻って来た。


「あ、春壱。」

「あ、そうだひらり、今日のゲネ5時から。先輩からひらりに伝えるように言われてた。」

隠れて聞いていたように思われたくなくて、急いで要件を伝えた。

「わかってるって。昨日連絡来たもん。それより春壱、バミリで、見切れ線作ったらどうかな?袖が狭いから、その方が一年生とかわかりやすいと思うの。」

「あー確かに。練習の時も何回か見えてたからな~端の客席だと特に見えやすいし。」

そのまま晴を残して、ひらりと話しながら教室へ入って行った。


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