表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
78/163

人質

78


展覧会が終わって、お姉ちゃんに感想を聞いて、姉バカに困っていたら、春壱は先輩に呼ばれて、先に片付けへ行ってしまった。


あ……晴君!

私も片付けに行こうとすると、こっちに来ようとする晴君をみつけた。私は、晴君にかけ寄って、晴君からお姉ちゃんが目に入らない方を向かせて話した。

「晴君!見てくれた?世界、征服された?」

「世界征服?」

そっか……わかんないよね。

「えっと、魅了されましたか?」

「良かったって事?」

「そう。」

晴君は少し考えて言った。

「うん、演劇部のパフォーマンス良かったよ。相田先生も来てたんだね。」

やっぱり……気づいてたんだ……。

「うん。見に来てくれたの。」


晴喜は私の隣から、お姉ちゃんの前に行って、深々と頭を下げた。

「この前は送っていただいてありがとうございました。」

「どういたしまして。」

お姉ちゃんがそう言うと、杉本先生も言った。

「君が晴喜君か~」

「白石晴喜です。杉本先生、同じ学校にいても、3年の担任だと接点ないですよね~」

「そうだね。」

晴君、きっと杉本先生の事も知ってたんだ……。

「あの、白石君、あのね……」

「別に、謝らなくていいです。相田先生は悪くないですよ。僕が子供だっただけで。」

私は見ていられなくなって、晴君の隣に行った。


「晴君!飾りつけ見に行った?近くで見ると面白いんだよ?あっち、一緒に見に行こう!」

「うん。行こう。あ、僕、ひらりちゃんとお付き合いさせてもらいます。いいですよね?」

お姉ちゃんと杉本先生は呆気にとられていた。

「は?」

「ちょっと晴君!また冗談?」

「今度は冗談じゃないよ。いいですよね?じゃ、ひらりちゃん借りますね。」

晴君はそう言うと、私の手を引いてお姉ちゃん達から少し離れた。


「え……ちょ……」

晴喜は少し先を歩くと、少し立ち止まって、そして、お姉ちゃんと杉本先生の目の前で、突然、私の唇に……キスをした。

「…………。」

「本気ってわかってくれた?」

「…………。」

声が出なかった。

「びっくりしちゃった?でも、これでお姉さんも安心するでしょ?」

…………は?お姉ちゃんも安心?

「お姉ちゃんを……安心させるため?」

「そ。僕と付き合ったらお姉さん安心でしょ?」

「…………うん。」


それは……違うよね?今のは確実に、お姉ちゃんに見せつける為だよね?妹は僕の手の中だって、示したかったんだよね?これじゃまるで…………人質だよ。

「じゃ、行こうか。」

晴君は動けずにいた私の手を取って、お姉ちゃんの前から移動した。


また…………。また、気持ちが頭に追い付かなかった。お姉ちゃんには変に思われたくない。でも……でも……晴君とのキスは…………嫌だ。……でも、嫌だなんて言えない。今すぐ口拭きたい……我慢だ……我慢しろ私!ここは耐えないと……。


私が晴喜に手を引かれ、飾りを見ていると、そこへ春壱が探しに来た。

「あ!いたいた!こんな所にいた!!」

私はとっさに晴君の手を離した。


「春壱~!」

よかった……助かった……。

「片付けサボってこんな所にいたのかよ!」

「ごめん、今行く。晴君、私片付け行くね。」

私は晴君に駆け寄って、晴君を背にした瞬間、私は汗を拭くふりをして、浴衣の袖で口を拭いた。何度も何度も。


春壱と照明のコードを巻いていると、春壱に言われた。

「提灯以外の照明と音響の機具は今日中にしまうんだから、どっか行くなよ。」

「…………。」

「どうした?顔色悪いぞ?」

コードを持ったまま、何をどう答えたらいいのか頭が全然まわらなかった。

「…………。」

「おい、具合悪いのか?」

「…………え?あ、ごめん、今なんて?」

どう答えようと考えていたら、話を聞く余裕もなくなった。

「疲れが出たのか?あ、また熱か……?」

春壱は1度作業をやめて、軍手を取って、私のおでこに手を当てて熱を計る。

「熱はないな……。」

また、軍手をはめて作業に戻ると、ふと、手を止めて私に訊いた。

「…………何かあったのか?」

「…………。」

ダメだ。もう泣かないって決めたのに……

「…………え?」

「ごめん、目にゴミが入ったみたい。トイレ行って見てくる。」

私は持っていたコードを足元に置いて、トイレへ向かった。私はそう言って春壱の元から逃げた。そうするしか、方法がみつからなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ