羽多の転校
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僕は自分の部屋のベッドで少し眠った。強い日差しで起きたら、窓から真っ青な空が見えた。僕はそのまましばらく、流れる雲を見ていた。
好きな人がいる。それだけで良かった。それだけで、僕が僕でいられた。僕は、僕を見失う。だから先生を好きでいさせて欲しかった……。迷惑だってわかってて、自分のために告白した。爪痕さえ残せてないと思ってたけど……跡ぐらいは……あったのかな?
ひらりちゃん、僕はずっと、ただ……誰かに認めてもらいたかったのかもしれない。誰にも理解されない、この独りよがりの片想いを。
携帯に着信がある。羽多だ……。
「羽多?どうした?……暇だけど?春壱は部活。うん……じゃあ、行く。」
僕は何故か、僕を好きな人はわかる。でも、自分が誰を好きなのかはわからない。求められれば答えてしまう。それが、何の取り柄のない僕にとっての、存在価値に思えるから。
起きたらちょうど正午で、慌てて支度をして、部活にギリギリ間に合った。母さんがリビングのタオルケットを見たら何て言うだろうか……面倒な事になる。帰って来る前に片付けなければ……。
「二人一組になって筋トレ~」
部長がそう声を掛けた。ボーッとしたひらりが余り、二人で筋トレをする事になった。ひらりとじゃんけんして、負けた。
「晴君……どこまで聞いてたかな?」
「さぁ?」
先に腹筋を始めようと寝転ぶが、ひらりは全然脚を押さえるつもりがない。
「晴君、まだお姉ちゃんに未練があって、お姉ちゃんと不倫なんて事になったらどうしよう……」
「まさか!いいから早く脚押さえろって。」
やっと押さえるが、全然カウントするつもりがない。
「私のせいだ……絶対私のせいだ!!うわぁ~!!」
「おーいどこ行く?戻って来~い。」
ひらりは突然走り出した。俺は体育座りのまま取り残された。
「あ……羽多ちゃん?こんにちは」
「こんにちは。えと、ひらりちゃん?だっけ?」
…………羽多?ひらりの走って行った方には、羽多と晴が来ていた。
「お疲れ。ひらりちゃん。」
「晴君……こんにちは。」
「どうした?羽多、何でここに?」
立ち上がって、三人の所まで行った。
「新学期からここに転校してくるの。9月からよろしくね~!」
「そうなんだ!よろしく~!」
「よろしく~!」
羽多とひらりは握手した。そこへ部長が声をかけてきた。
「ひらり~!何してるの~?」
「あ、部長~!この子春壱と晴君の幼なじみの羽多ちゃん。今度転校してくるんだって~!」
「幼なじみ……?」
部長と夏川先輩は羽多をまじまじと見る。
「部長……?夏川先輩も……」
羽多に何を言うつもりだろう……。
「是非、演劇部に!!」
そう言って二人は去って行った。
「二人は練習に戻って。」
「ロックオンされた……」
ひらりはその後ろ姿を見てそう言った。確かに……。
「されたな……。」
「ロックオンって?」
羽多はその言葉に困惑していた。
「是非、演劇部に!」
ひらりはもう一度羽多と握手して言った。
「いやいや、お前まで止めろ。筋トレに戻るぞ。」
「やだよ~羽多ちゃん!まだ羽多ちゃんと話する~!」
「はいはい。」
ひらりの首根っ子を掴んで、練習に戻った。
「またね。羽多ちゃん!」
「またね!」
ひらりは大きく手を振った。そして羽多は学校へ入って行った。
「春壱、良かったね!」
「は?何が?」
「また羽多ちゃんと同じ学校に通えるね!」
羽多が転校してくるのか……また厄介なことになりそうだな……
「あれが幼なじみの……」
気がつくと、先輩達が小さな円になって話し合いをしていた。
「あれはレベル高いわ~」
「ひらり負けるな~」
何の相談ですか!
「ちょっとひらり、腕立てなんかやってる場合じゃないでしょ?」
「へ?」
羽多が来て気合いが入ったひらりは、真面目に腕立てをやっていた。




