捕まった春壱
32
その頃、剣道部の部長に備品の買い出しを頼まれ、俺はあいつらと同じ駅にいた。
斎藤部長、急に行けなくなったって……何も今日俺に頼まなくても……。そう言っても仕方ない。誰にもみつからず武道具屋に行くしかない!と、思っていたら、
「あー!春壱君!」
やっぱりと言うべきか……演劇部の部長にみつかった。
「待った。逃げるな!」
「うげっ!」
俺は逃げようと走り出そうとするが、すかさず部長後ろからつかまえられ、思わず変な声が出てしまった。それにしても、部長1人だ。俺の考え過ぎか……?ここで会ったのは偶然で、今日は部長さんのプライベート?…………そんな訳あるか!
「春壱君、どうしてここに?はは~ん。やっぱりあの二人が気になるんじゃない!」
部長さんは俺に肩を寄せて来た。
「ち、違いますよ!部長に買い物頼まれて……」
「知ってる。斎藤が紐と油買って来るように頼んだんだよね?」
え…………は?何で知って……
「ごめんね。私達そうゆう仲だから。」
「えー!!マジですか!?」
部長さんは慌てて口に人差し指を立てた。
「あ、一応、みんなに内緒って事で。」
思わぬ所で思わぬ事を聞いてしまった……あの、ゴリラみたいな斎藤部長が演劇部の美人部長と……?わかんねぇ……
「じゃ、今から映画館行こうか。」
「はぁ?行かないですよ!」
今行けば確実にあいつらに鉢合わせするだろう。
「俺は武道具屋行きますから。」
「大丈夫大丈夫。備品なんて買って帰らなくても怒られないから。」
すると、部長の携帯が鳴る。部長は俺の服をつかんだまま電話に出る。
「はい。こちら第2ポイント、予定通り春壱と合流。そっちはどう?予定通り映画館で確認ね!了解!」
予定通り……?俺、待ち伏せされてた?
「そう。じゃあ、春壱君、予定通り備品買いに行っていいよ。」
「は?え、じゃあ、お疲れ様でした~。」
何故か急に解放された。
「はい、お疲れ様~!」
俺は部長に見送られながら、武道具屋へ向かう。
何だったんだ?それとも、武道具屋に何かあるのか?




