恐怖の初デート
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春壱との間には、越えられない壁みたいなものがある。それが何なのかわからないまま、この前はとうとう、ボロが出た。
いつの間にか、春壱の前で空気の読めないふりが出来なくなった。確かに、役の事なんか春壱には関係ない。関係ないけど……上手く言えないこのモヤモヤした気持ちのまま、晴君とのデートの日を迎えた。
「きょ、きょ?今日は、よろしくお願いします。」
緊張して声が裏返っちゃった!
「あははは。そんなに緊張しないでよ。こちらこそよろしく。行こう!」
晴君はさりげなく、迷いなく手を繋いでくる。私は辺りをキョロキョロして、つい先輩達の姿を探してしまう。
「誰を探してるの?壱?」
「うんん、春壱じゃないよ。劇部の先輩達。」
「演劇部の?先輩達?」
私は前後左右、しっかり確認しながら歩いた。
「先輩達に、日曜デートだって言ったら、みんなで大騒ぎして準備してたから。」
「準備?ひらりちゃんのデートだよね?」
晴君が笑う。私も可笑しくて笑った。確かに、私のデートなのに、先輩達が準備って何するんだろう。
「イベントに、他人事かどうかは関係ないみたい。おっかしいな~来てないのかな?」
「さすがに当日までは来ないんじゃない?」
そんな訳ないとは思うけど……先輩達の行動力を去年嫌というほど見せつけられた。でも、この話は流しておいた方がいいかな……。
「そっか。そうだよね。」
「ひらりちゃん。今日も、可愛いね。」
で、出た~!必殺、晴スマイル!ダメだ……私ちょっと引いてる……。引いてる私がいる……!!可愛いって言われて喜ばない女がいる?いや、いないよ!そりゃ嬉しいよ!嬉しいけど……恥ずかしい…………!
「あ、ありがとう。だ、ダメだ………。誉められる事に免疫がないから、社交辞令でも誉められるとむず痒い。」
「むず痒い?」
私は思わず、晴君の手を離す。
面と向かって可愛いとか普通に言えちゃう晴君って何なの?天然なの?悪魔なの?私の第六感が後者だと予感してる……。ああ、だから私恋愛できないんだ。溺れろ!溺れろ私!!
「うんん。ごめん何でもない。」
そんな事を考えていると、映画館入り口まであっという間に着いてしまう。晴君はラブコメの可愛らしいポスターを見て言った。
「今日は何見る?女子はラブコメとか好きでしょ?」
それなのに、私の目に入ったのは……
「あ!このホラー、続編公開してたんだ~…………は!ラブコメだっけ?えっと……」
思わずホラーに食いついた所で気がついた…
「じゃ、これにしよう。」
「いいの?」
晴君はホラーのポスターを指差して言った。私に合わせてくれたんだ……。晴君は優しい。優しいけど…………
「いいよ。じゃ、二人分のチケット買って来るね。」
「あ、一緒に行く。」
「え?僕が買って来るよ?」
一瞬キョトンとした顔をして、その後晴君は少し微笑んだ。
「お姉ちゃんがね、一緒に行って自分の分のチケット自分で買いなさいって。」
「お姉さん………。そうなんだ。じゃ、一緒に行こうか。」
チケットセンターへ行ってチケットを買う。その後飲み物を買って中へ入る。人生初のデートはホラー映画。ある意味、現実のホラーはもう始まっていたのかもしれない……。
映画が始まってしばらく経つと……どうしよう……クソつまらない。つまらないし、内容が全然頭に入って来ない。入って来ないどころか、余計な事まで考えてしまう。隣にいるのが春壱だったら、終わった後クソつまらなかった~!って言って笑えたのに……笑っちゃいけない所で笑ったりして……怒られたりして…………私一体何を考えてるんだろう…………。
「ひらりちゃん、大丈夫?」
「え?うん。平気だよ?」
平気な訳ないよね……。晴君と映画を見てる最中なのに、春壱の事ばかり考えてる……。別に、嫌われてるようには思えないんだけどなぁ……だけど、どうして私と関わりたくないんだろう。女子が嫌いなのかな?それとも同性愛者?春壱は晴君の事が……好き?…………怖っ!!自分が怖いよ!!どうしてそうゆう方向の思考になった!?恐怖だよ!




